長い目で考えることと、長く持つことは別
買った株が下がった時だけ「長期投資だから」と言い直すと、最初に置いた根拠が失われていても気付きにくくなります。保有期間を延ばせば、会社の競争力や資金繰りの問題まで解消するわけではありません。
この記事の長期主義は、目先の値動きだけでなく、事業が将来に生む価値や資金の使い道を長い時間軸で考える姿勢です。哲学分野の同名の立場を定義する記事ではありません。長く考えることと、決算や生活設計を見直さないことは区別します。
短期売買、長期保有と、比べている対象をそろえる
短期売買では、近い期間の需給や価格変化が判断の中心になることがあります。長期の事業判断では、新しい製品や設備が継続的な利益と現金収入につながるかを追います。どちらも、入口の価格や取引費用によって結果は変わります。
一方、長期保有は持っている期間を表す言葉です。長期主義を理由に保有したとしても、保有が長いという事実だけで、現在の価格が割安だとは分かりません。成長を重視するか、価格に対する価値を重視するかという切り口も、期間とは別の比較軸です。
新工場の計画を、家計の使用時期と重ねる仮例
独自の仮例で、新工場の立上げに3年かける企業を考えます。初年度は準備費用が先に出るため、短い期間の利益だけでは計画の進み具合を判断しにくいかもしれません。ただし、受注、稼働、現金の残りが想定どおりかは途中でも追えます。
同じ会社を調べる人でも、翌年に学費を払う資金と、10年程度使う予定がなく時期を調整できる資金では、価格の回復や事業の進展を待てる条件が違います。後者なら必ずこの株を買えるという結論ではなく、事業の時間と家計の時間を照合するための設定です。
工場への需要が消えたり、運転資金が足りなくなったりすれば、単に待つ問題ではなくなります。会社の計画を、そのまま将来の確定した利益として扱うこともできません。
複利を期待する場合も、見直す条件を残す
得た収益を再び運用すれば、その後の収益を生む元本になります。ただし、利益が続くことや、同じ率で再投資できることは保証されません。長期という言葉だけで、損失や保有先の集中が消えるわけでもありません。
見直すのは日々の値段だけではなく、事業を支える前提、支出の予定、保有先の偏りです。時間を味方にするという説明が自分に当てはまるかは、続ける根拠と待てる資金の両方から考えることになります。