遠くの戦争は買いとは?地理的な距離より企業への波及を読む

何が遠く、何が近いのか

「遠くの戦争は買い、近くの戦争は売り」は、戦地との関係によって市場への影響が変わるという趣旨の相場格言です。三井住友DSアセットマネジメントは2021年の資料でこの言葉を紹介し、戦時の市場と、その後の物価など投資環境を分けて論じています。

ただし、ここから一定の距離より遠ければ株価が上がる、という境界は作れません。企業には販売先、原材料の調達先、物流、借入など異なる接点があり、所在地だけで影響の全体を測れないためです。

エネルギー費を通じる仮の波及

架空の会社の損益を万円単位で考えます。売上100万円から、エネルギー費20万円とその他費用70万円を差し引くと、利益は10万円です。数量や販売価格などは変えない条件にします。

エネルギー費だけが30%増えて26万円になると、利益は100−26−70=4万円です。費用の増加率は30%ですが、利益は10万円から4万円へ60%減ります。現実の会社の見通しではなく、利益が費用の変化を強く受ける場合を示す独自例です。

実際には、販売価格への転嫁、契約やヘッジ、使用量の削減などで影響が変わります。どの条件を固定した計算かを明らかにしないまま、この減益率を企業へ当てはめることもできません。

株価の下落と利益の悪化を分ける

株価が先に下がった場合、投資家が今後の減益を見込んでいる可能性があります。しかし、何割の影響が織り込まれたかは、価格だけを見ても確定しません。会社の開示と自分の利益見通しを照らし、どこに違いがあるかを検討する問いになります。

また、損益への影響が小さくても、投資家の資金需要や市場全体の動きで価格が変わる場合があります。事業の耐性と、短期に売れる価格も同じものではありません。

距離の言葉を調査の入口へ戻す

まず企業が開示した影響の範囲、見通しの前提、精査中の項目を分けると、確定した事実と未確定の条件を整理できます。過去の戦争後に上昇した市場があっても、今回の企業や購入価格の利益を保証するものではありません。

この格言は、急な出来事に全社一律の反応をしないための問いにはなります。買うという一語で、企業への波及や購入後の損失の検討を終えることはできません。

出典

参考資料の確認日:2026年10月23日。