「まだ」と「もう」を入れ替えて考える言葉
値下がりが続く株を見て「もう十分下がった」と思って買う。その後も下がり続けると、「十分」の基準が自分の感覚だけだったことに気付きます。「まだはもうなり」は、こうした予想と実際の値動きのずれを考える相場格言です。
一般には「もうはまだなり、まだはもうなり」と対で使います。もう底と思っても下げが続くかもしれず、まだ下がると思った時には反転が近いかもしれない。上昇についても、もう天井、まだ伸びるという見方を逆から点検できます。
ただし、両方向の可能性を述べる言葉だけで、どちらが起こるかは判別できません。誰かが強気だから必ず下がる、といった逆張りの売買サインにすると、格言から言える範囲を超えます。
下落率を見ただけで底を決めた仮例
架空の株が2,000円から1,600円まで下がったとします。過去の高値から大きく下げたので底と判断し、1,600円で100株を買ったところ、その後1,200円になったケースです。税金、費用、配当は除きます。
購入額は16万円、評価額は12万円で、含み損は4万円です。購入時点からは25%の下落になります。過去の高値からすでに下がっていたことは、その先の損失を制限しません。
ここで確かめたかったのは、利益見通しが悪化していないか、過去の高値が期待先行だったのかという点です。株価が下がったという事実と、事業価値に対して安くなったという評価は同じではありません。買った理由が「下げた分だけ戻るはず」だけなら、さらに下がった時の判断基準も残りません。
使うなら、逆の仮説が成り立つ条件を書く
「まだ上がる」と考えたら、どの情報が出た時にその見方を改めるかを決めます。受注が増える想定なら受注残や採算、業績回復なら利益と資金繰りなど、最初の理由に対応する材料を選びます。出来高や信用残は短期の需給の参考ですが、会社の利益を直接示す数字ではありません。
また、株価が何円上がったかだけでなく、どの期間を見ているかもそろえます。数日で急騰した銘柄の行き過ぎを考える話と、数年の成長を見込んで保有する話では、確かめる条件が違います。
条件が判断できない日は、注文を見送る選択もあります。「まだか、もうか」を今すぐ当てる義務はありません。根拠が曖昧なまま購入量を増やすと、後で修正したくなった時の損失も大きくなります。
早い逆張りも、外れた予想の言い換えも避ける
上昇が続く中で天井と決めて空売りすると、さらに上がって買い戻しを迫られる場合があります。この動きを踏み上げと呼びます。現物株を買う例とは損失構造が違うので、「格言を知ったから売りから入る」という飛躍には注意が要ります。
結果が出てから上昇にも下落にも格言を当てはめると、予想が外れたかどうかさえ曖昧になります。役立つのは、売買前に自分の判断の弱い部分を探す使い方です。格言が価格を予測してくれるわけではありません。