決算の前と後では、起きる偏りが違う
決算前に「必ず増益する」と考え、強気の解説だけを読むのは確証バイアスの例です。決算が減益だった後に「在庫が増えていたので最初から分かっていた」と言い直すのは後知恵バイアスの例です。前者は証拠の選び方、後者は過去の見通しの記憶が問題になります。
確証バイアスは、自分の仮説に合う証拠へ重みを置く傾向です。後知恵バイアスでは、後から知った情報を使い、当時も予測できたはずだと感じます。一つの取引に両方が現れることもあります。
対策は資料の点検と当時の記録に分かれる
対策も違います。確証バイアスには、購入仮説に反する情報を探し、同じ期間の数字で比較する作業を用います。後知恵バイアスには、発表前の予測と使用資料を保存し、後から判明した情報をその欄へ混ぜない作業を用います。反対意見を一件読むだけでは、当時の記憶の書換えまで防げません。
発表前のメモには、予測、使った資料の公表日、確認できなかった点を残します。発表後の欄には実績と新たに分かったことを書き、古い予測欄へ書き戻しません。情報を見落としていたのか、当時は未公表だったのかを区別するためです。
買値への固執や目立つ情報とも区別する
アンカリングは、買値や過去の最高値など特定の数字が基準として残る傾向です。確証バイアスと組み合わさると、「買値2,000円へ戻るはず」という結論を先に置き、戻る理由だけを集める形になり得ます。基準の数字を外して現在の利益見通しを見る作業と、反対情報を点検する作業を分けます。
目立つ成功談ばかり覚えている場合も、情報の見え方に偏りがあります。どの偏りの名前かを当てること自体を目的にせず、実際の資料をどう選び、どの記録を残すかへ落とします。複数の偏りが同時に働く可能性があるため、一つの用語だけで人の判断全体を説明しないようにします。
用語を付けるだけで判断を終えない
買値への固執があっても、その価格で保有を続ける根拠が現在も残る場合はあります。「自分はバイアスに陥っている」と気づいただけで、反対方向へ機械的に注文する必要はありません。今後の事業見通し、現在の価格、保有比率を改めて並べます。
人の意見を特定の偏りだと決めつけて無視すると、反対証拠を軽く扱うという元の問題を繰り返しかねません。何という心理用語かより、比較期間が合うか、元資料をたどれるか、結果を知る前の記録があるかという確認へ戻します。