2008年9月だけで、危機全体を説明しない
リーマン・ブラザーズは、米国の投資銀行で、2008年9月15日に破産手続を申請しました。日本でリーマンショックと呼ぶ時は、この破綻を節目とする金融市場の急激な混乱を指すことが多く、一日の株価の下げだけを意味しません。
米連邦準備制度の歴史解説では、住宅ローン関連の金融資産の損失による市場の緊張は2007年から始まっています。リーマンの破綻だけが、何もなかった市場へ突然すべての問題を生んだわけではありません。
借入で大きく保有すると、損失の余力が薄くなる
独自の単純な貸借の例で、資産100万円を、借入などの負債90万円と自己資本10万円で保有しているとします。資産の価値が5万円下がり、負債の額が変わらなければ、残る自己資本は95万円-90万円=5万円です。他の取引、利益、税金等は除いています。
資産全体では5%の下落ですが、自己資本は半分になります。借入などを使って自己資本に対して大きな資産を持つレバレッジは、利益だけでなく、損失が自己資本へ及ぼす割合も大きくし得ます。これは仕組みを示す架空の数値で、リーマンの実際の財務状態ではありません。
資産が帳簿上残っていることと、今日の支払いに使える現金があることも別です。資金の貸し手が借換えに応じなければ、保有資産を短い時間で売らなければならない場合があります。
一社への不安が、取引相手や市場へ広がる
金融機関は、お互いの資金の貸借や証券の取引を通じてつながっています。相手が返せるか分からなくなると、貸す期間を短くしたり、取引を控えたりする動きが起こり得ます。売却を急ぐ主体が増えれば、ほかの保有者の評価や資金調達にも影響します。
当時のFRB議長の2010年の証言では、リーマンは資本と流動性の両面で問題を抱え、資金確保の取り組みも不十分だったと説明されています。資本は損失を受け止める余力、流動性は期日の支払いへ対応できる資金などの確保に関わる、異なる観点です。
危機後の対応まで含めて、投資先を読む
破綻の後には金融市場への資金供給や、個別金融機関への支援などが行われました。ただし、すべての金融機関が同じように救済されたわけではありません。過去の支援を、次も同じ企業が同じ条件で守られる保証にすることはできません。
投資先では、保有資産の性質、借入の期限、利用できる現金、資金の出し手への依存を合わせて読みます。危機の呼び名を覚えることより、損失と資金不足がどこでつながるかを把握すると、財務を見る問いが具体的になります。