利益が出たので、次は金額を増やしたい
最初の投資で利益が出ると、「自分には銘柄を選ぶ力がある」と感じることがあります。けれども、同じ時期に市場全体が上昇していれば、個別の判断以外の影響も考えられます。運用会社オークツリーを共同創業したハワード・マークスは、判断の質を結果だけで評価する難しさを本人のメモで述べています。
これは、利益には必ず運しかないという主張ではありません。判断した時点の情報と、その後に起きた出来事を分けないと、何を改善できるのかが分からなくなるという問題です。
新規受注を期待した取引を振り返る例
独自の架空例として、投資家がA社の新規受注を期待して株を買ったとします。根拠は、A社の設備増設に関する公表資料でした。その後、受注の発表はないまま、業界全体への政策期待でA社を含む多くの株が上がり、本人は利益を得て売りました。
この結果だけでは、受注を予想する力があったとは言えません。受注の有無が未確認だからです。売買前の記録があれば、当初期待していた材料と、実際に確認できた材料が違うと読み取れます。業界の上昇が株価に与えた正確な寄与率まで、この短い例から計算できるわけでもありません。
反省が、後付けの物語にならないようにする
例の人が売却後に「本当は政策を読んで買った」と記憶を変えてしまえば、最初の推測が未検証だった点は消えてしまいます。買う前の開示の公表日、予想した出来事、その出来事を確かめる予定時期を残しておくと、後から整えた説明と照合できます。
損をした場合も同じです。調べた内容が妥当でも予想外の出来事で損失になる場合はあり、負けた取引をすべて「焦ったから」と片付けても改善につながりません。調査不足、仮定の誤り、注文の問題、後から生じた事象では、直す場所が異なります。
心理を点検しても、確実にはならない
自信が強くなった日は、直前の利益を根拠に投入額を増やしていないかを見ることができます。必要なのは、無理に買う理由と買わない理由を同じ数だけ並べることではありません。予想を変える事実を受け入れられるか、損失が生じたときも生活資金が残るかという具体的な問いです。
有名な投資家の名前への安心感も、個別の銘柄を分析する代わりにはなりません。自分と異なる見方があるなら、支持者の人数より根拠の内容を比べます。こうした記録は過信を点検する助けになりますが、感情を完全になくしたり、将来の失敗を防いだりする保証ではありません。