年の成績が良くても、自分の取引は損になり得る
「戌笑い」の話題で相場が上がり始めると、乗り遅れたくない気持ちが強くなります。ここで前年末からの上昇と、自分が今から買って得られる損益を同じものとして考えるのが、最初の落とし穴です。
「戌笑い」は、戌年の相場が好調になるという期待を表す格言です。戌年に入れば価格が上がる仕組みや、どの銘柄をいつ買うかを教える予測モデルではありません。用例を確認できるニッセイアセットマネジメントの資料も、相場格言を将来の予見とは扱っていません。
年初に好調でも、先々の利益成長をすでに買い込んだ結果かもしれません。上昇の勢いと、今の価格で投資する合理性は分けて考える必要があります。
年末まで待っても損になった架空の取引
架空の株価が前年末1,000円、年途中1,300円、年末1,100円になったとします。株式分割などはなく、費用、税金、配当も除きます。この株の前年末から年末までの騰落率は+10%です。
ところが、年途中に「戌笑いが続きそう」と1,300円で100株を購入した人は、年末に売ると13万円が11万円になり、損失は2万円。購入額に対する損失率は約15.38%です。年間上昇を当てることと、その途中で利益を出せることは一致しません。
年単位の格言を聞いても、実際の投資では買った価格から損益が始まります。「年末には上がっていた」という説明だけでは、その間の高値買いや下落への耐え方は解決しません。
連想で選ぶ銘柄と、都合のよい過去を増やさない
干支に関係する名前や商品がある会社に注目する場合も、売上や利益にどれほど影響するかは別問題です。犬に関連する商品を扱うからといって、戌年に会社全体の利益が増える根拠にはなりません。商品の規模や採算を確認できなければ、話題だけの連想にとどまります。
過去の戌年で上がった銘柄だけを並べるのも危険です。下がった会社や上場廃止になった会社が抜け、後から選んだ成功例になっているかもしれません。指数の年末値上がりと、特定の購入日・銘柄の成績も混ぜられません。
「勝率が高い」とする説明では、対象期間、観察数、損益の大きさ、配当や費用の扱いまで確認します。回数だけを根拠に購入量を増やすと、一度の大きな下落を受けた際の負担が見えなくなります。
下げ始めた後も、格言で保有を正当化しない
買った後に業績見通しが崩れたのに、「戌年だから最後は笑える」と保有理由を変えてしまうのも誤用です。購入時の見込みが利益や受注なら、その条件が崩れたかどうかを確認する必要があります。損失を取り返すために同じ話題の株を買い増しても、根拠の弱さは変わりません。
売買前に記録したいのは、利益の見通し、今の価格を受け入れる理由、使う資金の時期、見方を改める条件です。年末年始の格言は会話のきっかけになりますが、口座の損益や家計の予定を代わりに管理してはくれません。