会社が大きいだけでは、費用の優位性は分からない
売上が増えたので規模の経済が働いた、と説明されても、費用がどれだけ増えたかがなければ確かめられません。規模の経済は、生産する規模が大きくなる時に、一単位当たりの平均費用が低下することです。
平均費用は、総費用を生産量などの対応する数量で割ったものです。社員数や時価総額が大きいことそのものではなく、同じ品質の製品やサービスを提供する費用と数量の関係を見ます。
世界銀行の通信規制ハンドブックも、規模の経済を長期の平均費用の増減で考えています。設備などの投入も調整できる条件で比較します。ここで長期とは、何年という固定の日数ではなく、設備などを選び直せる条件を指します。短い期間に同じ設備を多く動かした話と、区別する必要があります。
総費用が増えても、一個当たりは下がる例
独自の仮例で、ある生産方式では同じ品質の製品を年1万個作る総費用が120万円、同じ時点で選べる別の設備や体制の方式では年2万個で180万円とします。比較する期間と費用の範囲をそろえ、それぞれの規模に合う方式を選べる設定です。
前者の平均費用は120万円÷1万個=120円、後者は180万円÷2万個=90円です。生産量は2倍、総費用は1.5倍ですが、一個当たりの費用は25%下がっています。総費用が減っていなくても、単位費用の低下は成立します。
実際にこれだけの費用で作れるという見積りではありません。規模の経済を語る時に、会社全体の支出が減ったのか、同じ一個を作る支出が減ったのかを分けるための例です。
費用が下がる仕組みを、数量の裏から探す
作業の分業、設備の方式、仕入れや物流の条件などが変わると、数量を増やす時の費用も変わります。企業の説明では、何を共通化し、何の手間が減り、どんな追加支出が必要かをたどります。
一方、既存の工場で空いていた能力を使い、同じ固定費を多くの製品で割るだけなら、短期の稼働率による平均費用の変化としても説明できます。それが確認できても、次の工場を建てた後まで同じ費用低下が続くとは限りません。
別の商品をまとめて作ることで共通の設備や営業を使う話は、範囲を広げることによる効率化として区別します。数量の増加、新しい品目の追加、設備の利用の改善を、同じ一言へまとめない方が原因を追えます。
低い費用が、株主の利益になるまでには条件がある
単位費用が下がっても、販売価格をそれ以上に下げる競争になれば、利益率が上がらない場合があります。新しい設備の代金や在庫に現金が必要なら、会計上の利益と資金の残り方も別に読みます。
投資判断では、生産量、単位費用、販売単価、追加投資を同じ期間で比べます。費用の優位性が持続するかを考えた後にも、購入価格にどれだけ成長が含まれているかという問いが残ります。規模の経済は、企業の仕組みを説明する材料であり、株価の上昇率を決める式ではありません。