増産した量より、費用が大きく増えることもある
規模を大きくすれば一個の費用が下がるはずだと考え、拠点拡大や買収をそのまま好材料にすると、運営の複雑さを見落とします。数量を増やす途中で、連絡、品質管理、物流、組織の調整などの負担が増える場合があります。
規模の経済は、生産規模の拡大に伴って平均費用が下がる関係です。反対に、規模を大きくした時に平均費用が上がる場合は、規模の不経済として考えます。どの企業も同じ規模で限界に達する、という基準があるわけではありません。
何かを統合すれば効率化する、と言うだけでは、実際にどの作業を省けるかも、新しく必要になる費用も分かりません。大きさより、変わる業務を確かめる必要があります。
拠点を増やしても、平均費用が上がる仮例
独自の仮想事業で、年1万個の製品を作る総費用が800万円なら、一個当たり800円です。拠点を拡大して年1万5,000個になっても、管理や調整を含む総費用が1,350万円になると仮定すれば、一個当たりは900円です。
生産量は50%増ですが、費用の増加は約68.8%で、平均費用は上がっています。品質と集計期間を同じにして、設備や運営体制を変えられる二つの規模を比べた例です。実在企業の将来予想や、買収が必ず失敗するという統計ではありません。
拡大後の費用が増えた理由を、単なる一時的な立上げ費用なのか、継続する調整や運営の負担なのかに分ければ、長く残る問題かどうかを検討できます。売上や拠点数の増加だけでは判断が足りません。
設備が余った問題と、組織が複雑になった問題を分ける
新設備を作った後、顧客の購入が予想より少なければ、固定費を少ない数量で負担することになります。これは需要や稼働の問題であり、規模が大きいほど必ず管理が非効率になることと同じ説明ではありません。
また、買収後に本社やシステムをまとめるには、移行の支出や人の配置変更が必要な場合があります。将来の削減額だけを読み、実現までの支払いや期間を除くと、得られる成果を早く大きく見積もります。
生産費用が下がっても、販売価格の低下や在庫の増加で利益が伸びない場合もあります。平均費用、採算、現金の使い方を一つの数字で代表させず、原因ごとに資料を読みます。
効率化の計画を、実績と同じ扱いにしない
会社が示す拡大後の目標は、必要な販売数量、人員、設備の稼働などの前提を持っています。期日が来た時に、数量と単位費用、実行した支出がどう変わったかを比べると、予定した効果が出たかを追いやすくなります。
投資家側も、効率化が遅れた場合に使う資金の時期や、ほかの保有と同じ需要へ偏っていないかを点検します。規模の経済を知る価値は、拡大を無条件に評価することより、費用が下がるはずだという説明の前提を確かめられることにあります。