需要と供給のデメリットと注意点|使いすぎで失敗しない見方

需給という一言で、値動きの説明を終えない

株が上がった理由を買いたい人が多かったから、と説明しても、その人たちがどの価格で何株買いたかったかがなければ、次の判断につながりません。需要と供給を使う時の弱点は、値動きを言い換えただけなのに理由が分かったように感じることです。

経済学の需要と供給は、一定の期間について、価格ごとに買いたい・買える量と、売りたい・売れる量を考える枠組みです。価格だけが変わる場合と、所得や好み、生産条件などが変わる場合を区別します。

株式でも人数だけでは注文の強さは決まりません。一人が多くの株を買う場合も、多くの人が小さな注文を出す場合もあります。価格の条件と数量を抜いた比較では、需給の中身が失われます。

買う人の人数が多くても、株数は一致する例

独自の仮例で、1,000円で300株売りたい人が一人、同じ価格で100株ずつ買いたい人が三人いるとします。他の条件はなく、この注文同士で300株の売買が成立したとします。

買う人は三人、売る人は一人ですが、成立した株数は買いも売りも300株です。買う人が多いから、次の価格は必ず上がる、とこの人数差だけから決めることはできません。

次の価格を考えるには、その後にどの価格の注文が残るか、新しくどんな注文が来るかが関わります。取引所では、注文の価格や時間の優先順位などに従って売買が成立します。出来高は成立した数量であり、将来の注文量の予告ではありません。

見える残高から、将来の売買を一意に決められない

板に出ている注文は、その時点で提示されている条件です。今見える数量が、その後も同じまま残ると限りません。大きな買い注文があるので下値は安全、と決めると、状況が変わった時の価格を想定できなくなります。

投資主体別の売買や信用残高にも、対象期間や集計する取引の範囲があります。買い越しの記録があっても、それだけで今後の追加購入の予定や価格への影響まで分かるわけではありません。集計の数値と、それを説明する仮説を分けます。

企業の在庫も同じです。在庫が増えた理由が販売不振なのか、出荷準備なのか、価格や品目の変化なのかを読みます。数量と金額、月末残高と期間中の販売量を混ぜると、単純な増減を誤読します。

事業の変化が、売買の条件を変えることもある

業績と需給は互いに無関係な二つの理由ではありません。利益見通しが変われば、投資家が買ってよいと考える価格や数量も変わり得ます。需給だから企業分析は不要、企業が良いから注文の条件は不要、という扱いでは片方が欠けます。

いつの、何の数量を観測したかを明確にし、株価との関係は仮説として記録します。需要と供給の枠組みが役立つのは、値動きが分かった気になる時より、まだ確認できていない注文や事業条件を探す時です。

出典