累進課税とは
累進課税とは、所得が大きくなるほど高い税率が適用される仕組みです。
ただし、所得全体に一気に高い税率がかかるわけではありません。
イメージとしては、所得を階段に分けて、それぞれの段に別の税率をかける仕組みです。
低い部分 → 低い税率
中間部分 → 中間の税率
高い部分 → 高い税率
このため、課税所得が900万円を少し超えたからといって、所得全体が急に33%課税になるわけではありません。33%になるのは、900万円を超えた部分です。
ここを間違えると、税金のイメージがかなりズレます。
所得税の税率
国税庁の所得税の速算表では、所得税率は5%から45%までの7段階に分かれています。
| 課税所得 | 所得税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超から330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超から695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超から900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超から1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超から4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
ここでいう「課税所得」は、年収そのものではありません。
給与収入から給与所得控除が引かれ、さらに基礎控除、社会保険料控除、扶養控除、医療費控除などを反映した後の金額です。
年収1,000万円と課税所得1,000万円は別物です。税金の記事では、ここがかなり混ざりやすいところです。
課税所得1,000万円の場合
課税所得が1,000万円の場合、税率のかかり方は次のようになります。
195万円まで → 5%
195万円超〜330万円 → 10%
330万円超〜695万円 → 20%
695万円超〜900万円 → 23%
900万円超〜1,000万円 → 33%
全部に33%がかかるわけではありません。
実際に分解すると、次の計算になります。
| 所得の部分 | 税率 | 所得税 |
|---|---|---|
| 195万円 | 5% | 97,500円 |
| 135万円 | 10% | 135,000円 |
| 365万円 | 20% | 730,000円 |
| 205万円 | 23% | 471,500円 |
| 100万円 | 33% | 330,000円 |
| 合計 | 1,764,000円 |
所得税は約176.4万円です。
国税庁の速算表を使うと、同じ計算はもっと短くできます。
1,000万円 × 33% - 153.6万円
= 176.4万円
この176.4万円に、復興特別所得税が加わります。さらに住民税もあります。住民税は所得税とは控除の考え方が少し違いますが、概算では10%前後を意識する人が多いです。
つまり、課税所得1,000万円の人が見るべきなのは「所得税176.4万円だけ」ではありません。復興特別所得税と住民税も含めた資金繰りです。
図解:全部に高い税率がかかるわけではない
ビットコイン利益との関係
ビットコインなど暗号資産の利益は、原則として雑所得です。
雑所得は、給与所得、事業所得、副業所得などと合算され、総合課税で税額を計算します。
たとえば会社員で、次のような状況を考えます。
給与所得など:500万円
BTC利益:1,000万円
----------------
合計所得イメージ:1,500万円
この場合、暗号資産の利益1,000万円が単独で20%課税されるわけではありません。給与などと合算されるため、所得税の税率帯が上がり、一部が33%や40%のゾーンに入ることがあります。
だから、
BTC利益1,000万円 = 手取り1,000万円
にはなりません。
実際の税額は、給与収入、給与所得控除、基礎控除、社会保険料控除、扶養、配偶者控除、医療費控除などで変わります。ここは人によって差が出ます。
株式投資との違い
ビットコインの税金が重く感じられやすいのは、株式投資と課税方式が違うからです。
上場株式等の譲渡益は、通常、他の所得と分けて計算する申告分離課税です。所得税15%、住民税5%に、復興特別所得税を加えた20.315%がよく使われる目安です。
暗号資産は、原則として総合課税の雑所得です。
| 項目 | 上場株式等 | 暗号資産 |
|---|---|---|
| 主な課税方式 | 申告分離課税 | 総合課税 |
| 税率の見え方 | 約20.315%が目安 | 所得に応じて変動 |
| 他の所得との関係 | 原則分けて計算 | 給与などと合算 |
| 高所得時 | 税率は大きく変わりにくい | 税率帯が上がりやすい |
もちろん、株式にも配当課税、損益通算、NISA、特定口座など細かい論点があります。
ただ初心者がまず押さえるべき違いは、暗号資産は株の約20%課税とは別の世界にいる、という点です。
「BTCで1,000万円儲かったら税金はいくら?」に一つの答えがない理由
この質問に、ひとつの固定回答はありません。
理由は、暗号資産の利益が他の所得と合算されるからです。
同じBTC利益1,000万円でも、次の条件で税額は変わります。
- 給与収入はいくらか
- 給与所得控除後の所得はいくらか
- 事業所得や副業所得があるか
- 社会保険料控除はいくらか
- 扶養や配偶者控除があるか
- 医療費控除や寄附金控除があるか
- 住民税の控除や自治体差をどう見るか
実務的には、利益額だけでなく「課税所得がどの税率帯に入るか」を見る必要があります。
税額をざっくり知りたいなら、最低でも次の情報が必要です。
| 必要な情報 | なぜ必要か |
|---|---|
| 年収または給与所得 | 総合課税で合算するため |
| 暗号資産の利益 | 雑所得として加えるため |
| 取得価額・手数料 | 利益を計算するため |
| 社会保険料控除 | 課税所得を下げるため |
| 扶養・配偶者の有無 | 控除に影響するため |
| 他の副業所得 | 合算後の税率帯が変わるため |
「利益額」だけ見ても、納税額は出ません。
投資家が覚えておきたいこと
累進課税を理解すると、暗号資産で利益確定するときの行動も変わります。
大事なのは、売った瞬間に利益は見えても、手取りはまだ確定していないということです。
ビットコインで大きく利益が出たときは、次の順番で考えた方が安全です。
- 取得価額と売却額から利益を出す
- 他の所得と合算した課税所得をざっくり見る
- 所得税、復興特別所得税、住民税を概算する
- 納税資金を現金で残す
- 取引履歴を保存し、確定申告に備える
相場が強いときほど、全部再投資したくなります。
でも、税金は相場が下がっても消えません。利益確定後に価格が急落すると、「資産は減ったのに税金だけ残る」状態になりやすい。暗号資産ではここが本当に怖いところです。
まとめ
所得税の累進課税は、所得全体に同じ税率がかかる仕組みではありません。
所得の階段ごとに税率が上がり、高い税率は高い部分にだけかかります。課税所得1,000万円なら、全部に33%ではなく、900万円を超えた100万円部分に33%がかかります。
ビットコインなど暗号資産の利益は、原則として雑所得として給与などと合算されます。
そのため、BTCで1,000万円利益が出ても、手取りは1,000万円ではありません。給与所得、控除、扶養、住民税まで含めて考える必要があります。
税金の細かい計算は人によって変わります。ただ、ひとつだけ覚えるならこれです。
暗号資産の利益は、税金分を現金で残してから次の投資を考える
この順番を守るだけで、翌年の確定申告でかなり落ち着いて動けます。
出典・参考資料
- 国税庁, No.2260 所得税の税率
- 国税庁, No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係
- 国税庁, 暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について
- 国税庁, No.1463 株式等を譲渡したときの課税
- 確認日: 2026-05-29