優待の数を決めるのは「口座数」ではなく「株主数」 同じ本人が2口座で保有 証券会社A 100株 証券会社B 100株 → 名寄せされ「本人200株」 家族がそれぞれ株主 本人名義 200株 配偶者名義 200株 → 条件次第で各1セット 家族名義=名義貸しではない。それぞれが本当の株主になることが前提 kabutrack.com

まず結論

同じ会社の株主優待を複数もらう基本的な考え方は、

「同じ人の口座を増やす」のではなく、「別々の家族が、それぞれ株主になる」

ことです。

たとえば100株以上で1セットの株主優待がもらえる企業なら、

  • 本人が100株
  • 配偶者が100株

をそれぞれ自分名義で保有し、企業側の優待条件を満たせば、原則としてそれぞれが株主として判定されるため、合計2セット受け取れる余地があります。

一方、

  • 本人がSBI証券で50株
  • 本人が楽天証券で50株

のように証券会社を分けても、同じ本人なら保有株式は株主名簿上で合算されます。

SBI証券も、同じ人が複数の証券会社で同じ株式を保有している場合、各社の保有数量を合計した株数に対して株主の権利が付与され、「証券会社ごと」に優待を受け取ることはできないと案内しています。

つまり、

優待を決めるのは証券口座の数ではなく、株主名簿上の株主と保有株数

です。

仕組み

株主優待は、企業が定めた権利確定日に株主名簿へ記載・記録された株主を基準に判定するのが基本です。

現在の上場株式では、証券会社などから株主情報が証券保管振替機構(ほふり)を通じて発行会社側へ通知されます。

ここで重要になるのが「名寄せ」です。

JASDECは名寄せについて、同じ加入者が複数の証券会社などに口座を持つ場合、氏名・住所などの加入者情報や共通番号に基づいて同一人物と判定し、同一人の口座として取り扱う仕組みだと説明しています。

そのため、

同じ本人が口座だけを分散する

方法では、基本的に優待のセット数は増えません。

同じ人なら、複数口座の株数は合算される

たとえば「200株以上で優待1セット」という企業があるとします。

保有方法株主名簿上の考え方優待の考え方
A証券で本人200株本人200株1セット
A証券で本人100株+B証券で本人100株本人200株原則1セット
本人200株+配偶者200株別々の株主条件次第で2セット
本人200株+子200株別々の株主条件次第で2セット

同じ本人については、証券会社をまたいだ保有株数が合算されます。

反対に、家族であっても本人と配偶者は別人です。

証券口座も、

  • 本人の口座
  • 配偶者本人の口座

として別々に管理され、それぞれが株主となれば、それぞれの保有株数で優待条件を判定することになります。

具体例

100株以上の株主へ2,000円相当の優待を出す会社を例にします。

ケース1:本人が2つの証券会社で100株ずつ

本人が、

  • A証券:100株
  • B証券:100株

を保有していたとします。

この場合、

本人=合計200株

として株主名簿へ反映されるのが基本です。

A証券とB証券からそれぞれ1セット、合計2セット受け取れるわけではありません。

ケース2:本人100株+配偶者100株

次に、

  • 本人:100株
  • 配偶者:100株

とします。

それぞれが自分の証券口座で株式を所有していれば、

本人という株主100株 + 配偶者という株主100株

になります。

企業の優待条件が「100株以上の株主に1セット」であれば、2人とも条件を満たすため、2セットになる可能性があります。

ケース3:優待が株数に応じて増える会社

家族へ分散する方が必ず得とは限りません。

たとえば、

保有株数優待
100株1,000円
500株5,000円
1,000株15,000円

という企業なら、

本人500株+配偶者500株

より、

本人1,000株

の方が優待額が大きい場合があります。

反対に、

保有株数優待
100株3,000円
500株5,000円
1,000株7,000円

なら、

本人500株+配偶者500株

と分けた方が、

5,000円+5,000円=1万円

となり、1人で1,000株保有する7,000円より優待額が大きくなることがあります。

つまり家族分散では、

「最低単元を何人で持つと効率がいいか」

を優待表から計算するのがポイントです。

注意点

「家族名義を借りる」のとは違う

家族名義で優待を受け取る場合に最も重要なのは、

家族それぞれが実際の口座名義人・株主になる

ことです。

「自分の株なのに配偶者名義の口座を借りる」という発想ではありません。

家族名義の証券口座はその家族本人の口座であり、そこで保有する株式、配当、売却代金なども原則としてその名義人に帰属します。

証券口座のログイン情報を借りたり、名義だけを使ったりするのではなく、それぞれ本人の資産として管理する必要があります。

購入資金を家族へ渡すと「贈与」になることがある

家族名義で株を購入するために、

「配偶者や子に100万円渡して、その資金で株を買ってもらう」

という場合には、株主優待とは別に贈与税の問題があります。

国税庁によると、暦年課税では、その年の1月1日から12月31日までに受けた贈与財産の合計から基礎控除110万円を差し引いて贈与税を計算します。年間の贈与額が110万円を超える場合には、原則として申告が必要になります。

しかも110万円は、

「贈与する人1人につき110万円」ではなく、贈与を受ける人1人について年間110万円

が基本です。複数人から贈与を受けた場合も合算して考えます。

そのため、

「優待を3,000円増やすために、税務上の資金移動を複雑にする」

のは本末転倒になる場合があります。

家族それぞれの自己資金で投資するなら分かりやすいですが、家族間で大きな資金移動を行う場合には、優待だけでなく贈与税まで確認する必要があります。

長期保有条件は「家族全体」ではなく株主ごと

最近の株主優待では、

  • 1年以上継続保有
  • 3年以上継続保有
  • 同一株主番号で一定回数以上株主名簿に記載

といった条件を付ける企業があります。

この場合、

本人が3年間持っていたから、今年買った配偶者も3年扱い

にはなりません。

配偶者は配偶者の株主番号・保有履歴で判定されます。

したがって家族名義を追加した直後は、通常優待は受け取れても、長期保有特典だけ対象外になることがあります。

長期保有条件については、

「何年以上」だけでなく「同一株主番号」「基準日の記載回数」「最低株数」

まで企業のIR・株主優待規程で確認することが重要です。

一度全部売ると株主番号が変わる場合がある

長期保有優待では、株主番号が継続しているかが重要になる企業があります。

権利確定日の間に保有株を全部売却し、その後買い戻した場合などは、株主番号が変わり、長期保有期間が途切れたと判定される可能性があります。

優待制度は企業ごとに条件が異なるため、

「1株だけ残せば必ず株主番号を維持できる」

といった一般化も避けるべきです。

企業が実際にどの基準で長期保有を判定しているかを確認してください。

住所・氏名などの登録ミスにも注意

ほふりは、複数口座の氏名・住所などの情報を使って名寄せを行っています。三井住友信託銀行も、口座情報が正確でない場合には名寄せが解除され、議決権や株主優待の受け取りに影響する可能性があると注意喚起しています。

たとえば、

  • 引っ越したのに一部の証券会社だけ旧住所
  • 結婚後の姓変更が一部口座で未反映
  • 生年月日等の登録情報に不備
  • 特別口座の情報を更新していない

といったケースです。

「情報をわざとずらせば別株主扱いになって優待が増えるのでは」と考えるのは逆です。

名寄せされるべき同一人物が適切に名寄せされないと、

保有株数が正しく合算されず、必要株数を満たしているのに優待を受けられない

可能性があります。

2027年7月20日から名寄せ基準が全面変更予定

今後はここも重要です。

JASDECは、2027年7月20日に稼働予定の株主情報システムで、新しい名寄せ基準を全面適用する予定です。

新基準では、氏名・住所だけでなく、

  • 共通番号(マイナンバー等)
  • 生年月日
  • カナ氏名

などを利用して名寄せ精度を高めます。

JASDECは2026年3月の案内で、特別口座などにカナ氏名や生年月日が登録されていない場合、2027年7月20日以降に名寄せされなかったり、既存の名寄せが解除されたりして、株主優待や議決権に影響する可能性があると注意喚起しています。

家族名義で複数優待を狙う人以上に、

同じ本人が複数証券会社・特別口座で同じ株を保有している人

は、登録情報をそろえておくことが重要になります。

使い方

  1. まず企業の優待条件を確認する 「100株以上」だけでなく、500株・1,000株へ増やした場合の優待額も比較します。
  2. 「1人でまとめる」と「家族で分ける」を計算する 投資額に対して、どちらの方が優待額が大きくなるか比較します。
  3. 家族それぞれの証券口座で保有する 家族名義を借りるのではなく、それぞれ本人の資産として保有します。
  4. 資金を渡す場合は贈与税を確認する 年間110万円の基礎控除だけを見ず、その年に受けた他の贈与も含めて確認します。
  5. 長期保有条件を家族ごとに確認する 株主番号、保有年数、株主名簿への記載回数をチェックします。
  6. 権利確定日前に住所・氏名等を確認する 優待は原則として権利確定時点の株主情報を基に送付されます。SBI証券も、株主優待は原則として権利確定時点の住所へ送付されると案内しています。

家族分散は本当に得?計算してから決める

株主優待を増やせても、投資全体として得とは限りません。

たとえば株価2,000円で100株必要なら、1名義追加するには20万円必要です。

追加でもらえる優待が年間2,000円なら、

2,000円 ÷ 200,000円 = 1%

です。

もちろん配当もありますが、株価が10%下落すれば2万円の含み損です。

2,000円の優待を増やすために、20万円の株価リスクを追加している

という見方も必要です。

そのため家族名義の分散は、

  • 優待利回り
  • 配当利回り
  • 株価リスク
  • 売買手数料
  • 家族ごとのNISA利用状況
  • 管理する口座数
  • 長期保有条件

まで含めて判断します。

家族名義に分ける前のチェック ① 家族ごとに最低株数を持つと、優待総額はいくら増える? ② 追加投資額に対する優待+配当利回りは十分? ③ 長期保有・株主番号の条件を各名義で満たせる? ④ 資金移動に贈与税や管理上の問題はない? 「優待が増える」だけでなく、家族全体の投資効率で判断

まとめ

同じ会社の株主優待を複数受け取る方法を考えるとき、最も重要なのは、

口座数と株主数を混同しないこと

です。

同じ本人が複数の証券会社で同一銘柄を保有しても、ほふりで名寄せされ、保有株数は原則として合算されます。証券口座を増やすだけでは、優待の数は増えません。

一方、

本人・配偶者・子などがそれぞれ自分名義で株式を保有し、各自が企業の優待条件を満たす

のであれば、会社の制度によっては家族それぞれが優待対象になります。

ただし、

「家族名義を使う」=「家族の名前だけ借りる」

ではありません。

株式は各家族本人の資産として保有し、配当や売却代金もその人に帰属します。購入資金を渡せば贈与税の検討が必要になる場合があります。

また、長期保有優待では、

株主番号・保有期間・株主名簿への記載回数

を名義ごとに確認する必要があります。

さらに2027年7月20日からは、JASDECが共通番号・生年月日・カナ氏名などを利用した新しい名寄せ基準を全面適用する予定です。複数口座を持っている場合は、住所や氏名などの登録情報を今のうちにそろえておくことも重要です。

最終的には、

「何セットもらえるか」ではなく、「その優待を増やすために追加する投資額に見合うか」

で判断します。

優待2,000円を増やすために20万円追加投資するのか、それとも1名義にまとめて別の資産へ分散するのか。

家族名義は有効な方法ですが、優待効率・配当・株価リスク・税金・長期保有条件まで含めて使うことで、初めて合理的な優待戦略になります。

出典

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