ゼロサムとの違い
ゼロサムゲームでは、どの結果でも参加者の利得を足すと0です。非ゼロサムゲームでは、結果によって合計がプラスやマイナスになったり、0以外の一定値になったりします。誰かの利益が必ず他の人の同額の損失になるとは限りません。
| 分類 | 利得の合計 | 例 |
|---|---|---|
| ゼロサム | どの結果も0 | Aが+1万円、Bが−1万円 |
| 非ゼロサムのプラスの結果 | 正 | AとBが各+3万円 |
| 非ゼロサムのマイナスの結果 | 負 | AとBが各−1万円 |
結果によらず利得合計が一定で、0以外なら定和ゲームです。その一定値を調整すれば、ゼロサムゲームと同様に分析できます。
協力が有利でも、協力するとは限らない
次の表は、A社とB社が新サービスを共同開発するか、相手より先に動こうとするかを選ぶ架空例です。数字は説明用で、実在企業の予測ではありません。
| A社の選択 | B社の選択 | A社の利得 | B社の利得 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 協力 | 協力 | +3万円 | +3万円 | +6万円 |
| 出し抜く | 協力 | +5万円 | 0円 | +5万円 |
| 協力 | 出し抜く | 0円 | +5万円 | +5万円 |
| 出し抜く | 出し抜く | −1万円 | −1万円 | −2万円 |
双方が協力すれば合計利得は最大です。それでも、相手が協力するとき自分だけ出し抜けば、個人の利得は3万円から5万円に増える設定です。相手が出し抜くときは、協力すれば0円にとどまり、双方が出し抜いた場合の損失を避けられます。全体には協力が望ましくても、個人の選択がそれを崩すことがあります。
契約や繰り返しの取引は、相手の行動を予測し、協力を続ける条件になり得ます。非ゼロサムだから自然に協力できる、というわけではありません。この表は標準的な囚人のジレンマの利得設定とは異なります。
株式投資では何を数えるか
企業は顧客に商品やサービスを提供し、利益を生みます。そのため株式投資全体には、投資家同士の売買だけでは説明できない価値の変化があります。一方で、企業価値が上がる保証はなく、割高な価格での購入や業績悪化で損失も出ます。
また、市場全体の収益と、市場平均を上回った分は別です。同じ市場・期間の投資家全体を保有額で重み付けすると、コスト控除前の超過収益は相殺されます。企業が価値を生み得ることと、平均を上回る競争の構造は両立します。
考えるときの3つの問い
- 誰を参加者に含めるか。企業2社だけか、顧客や取引先も含むか。
- 何を利得として数えるか。金銭損益か、時間の節約やリスク低減も含むか。
- 何と比べるか。協力しない場合か、市場平均か、投資しない場合か。
企業同士の値下げ競争で両社の利益が減っても、消費者が安く買える場合があります。企業だけを数えるか、顧客も含めるかで合計は変わります。非ゼロサムを使うときは、集計範囲を先に決めます。
出典
- Thomas S. Ferguson「Game Theory」UCLA数学科講義案内(二人ゼロサム・一般和ゲームの講義構成)
- 千葉大学サイエンスプロムナード「じゃんけんマシーン」(協力と囚人のジレンマの説明)
- 日本取引所グループ「株主とは?」(株主の権利、株式売買、価格変動リスク)
- 米国証券取引委員会 Investor.gov「Stocks - FAQs」(株式の持分、配当、リスク)
- William F. Sharpe「The Arithmetic of Active Management」(アクティブ運用の平均収益と費用の算術)
- 利得表は仕組みを示す架空の仮定です。