ゼロサムゲームの意味
ゼロサムゲームでは、参加者の行動がどの組み合わせになっても、利得の合計が0です。2人なら、Aが1万円得る結果ではBが1万円失います。参加者が3人以上なら、1人の利益を残りの損失の合計が打ち消す形もあります。
| 結果 | Aの損益 | Bの損益 | 合計 |
|---|---|---|---|
| Aが勝つ | +10,000円 | −10,000円 | 0円 |
| Bが勝つ | −10,000円 | +10,000円 | 0円 |
これは「誰も利益を得ない」という意味ではありません。勝者と敗者が入れ替わっても、参加者全体の損益は変わらないということです。
手数料を加えるとどうなるか
AとBの取引がゼロサムでも、2人が外部の運営者へ各500円を払えば、2人の手取り合計はマイナス1,000円になります。運営者まで参加者に含めるかで集計範囲は変わります。手数料を受け取る側も数えるなら、金銭の移転自体はなお相殺されます。
株式投資全体はゼロサムなのか
株式は企業の持分です。企業は顧客へ商品やサービスを提供し、利益を配当や事業への再投資に回します。企業価値が高まれば株主全体に帰属する価値も増え得るため、株式投資全体を参加者間の固定されたお金の奪い合いだけでは説明できません。
もちろん、企業が利益を出す保証はなく、株価の下落や倒産で損失が出ます。配当も会社資産から支払われるため、配当と企業価値を二重に数えないことが大切です。ある投資家が株を売って利益を確定しても、買い手が同額の損をしたとは限りません。売り手と買い手では保有期間も、その後の値動きも異なります。
市場平均を上回る競争は別
特定の市場で、同じ期間の市場平均を上回った分を「超過収益」とします。その市場の投資家全体を対象に、保有額に応じて重み付けして集計すると、コスト控除前の超過収益は相殺されます。平均を上回る人がいれば、下回る人もいる関係です。
Sharpeの議論では、対象市場を定め、アクティブ運用とパッシブ運用の双方を市場全体の資金で捉えると、費用控除前の平均リターンは一致します。アクティブ運用の費用が高ければ、平均では費用控除後の成績が下がります。比較する市場や運用者の範囲がずれると、単純には当てはまりません。個々の運用者が必ず市場平均に負けるという主張でもありません。
投資で使うときの確認点
「投資はゼロサムだ」という説明を見たら、何を数えているかを確かめます。企業価値も含む市場全体の収益なのか、市場平均に対する超過収益なのか、手数料を引いた特定の契約損益なのかで答えは変わります。
ゼロサムは構造を説明する言葉で、将来の利益を予測するものではありません。投資では、利益の源泉、費用、損失の可能性をそれぞれ見ます。
出典
- 千葉大学サイエンスプロムナード「じゃんけんマシーン」(2人ゼロ和ゲームの説明)
- UCLA数学科 Thomas S. Ferguson「Game Theory」講義案内(ゼロサム・一般和ゲームの講義構成)
- 日本取引所グループ「株主とは?」(株主の権利、株式売買、価格変動リスク)
- 米国証券取引委員会 Investor.gov「Stocks - FAQs」(株式の持分、配当、リスク)
- William F. Sharpe「The Arithmetic of Active Management」(アクティブ運用の平均収益と費用の算術)
- 数値例は説明用の仮定です。