今日の見方
以下の日本円換算は、日本銀行の2026年8月の基準外国為替相場をもとに、1元=約24円として丸めた概算です。実際の為替レートや手数料によって変わるため、株価・企業価値の正式な円評価ではありません。
宇樹科技の株価は、上場初日に「人形ロボットの将来」を一気に値付けし、翌日にその値付けを一部戻しました。8月20日の18.70%安だけを見ると急落ですが、IPO価格からはなお大幅高です。上場初日の開値から翌日終値までなら下落率は37.55%。熱狂が消えたというより、熱狂の中で買った資金と、利益を基準に売買する資金が入れ替わっています。
ここで大事なのは、PER800倍超という見出しを怖がることでも、ロボット市場の成長を否定することでもありません。
- どの利益を基準にしたPERなのか
- 控除後利益が伸びているのか
- 流通株が増えた後も同じ価格を維持できるのか
この3点を分けると、数字の異常さと事業の可能性を混同しにくくなります。
注目ニュース
1. 上場初日の1,100元から翌日687元へ、2日間で37.55%下落
宇樹科技は8月19日に科創板へ上場し、IPO価格150.80元(約3,620円)に対して1,100元(約2万6,400円)で取引を開始しました。初値の上昇率は629.44%、終値は845元(約2万300円、460.34%高)でした。翌20日は687元(約1万6,500円)で引け、前日比18.70%安となりました。
投資家が見る点: 上場初日の値動きは、企業価値の確定値というより、少ない流通株に対する需給で形成された価格です。上場時の総株式数4億446万株に対し、当初の上場流通株は3,008万株で、計算上の流通比率は約7.44%にとどまります。高い換金性を持つ株が少ないため、買いが細った時の下落も大きくなります。
2. 開値1,100元ではPER約812倍、終値687元でも約507倍
PERは会社が公式に発表した固定値ではなく、ここでは株価と利益から試算します。2026年上期の親会社株主帰属利益2.74億元(約65.8億円)を半年分として2倍し、発行後株式数4億446万株で割ると、年換算EPSは約1.35元(約32円)です。1,100元(約2万6,400円)をこのEPSで割ると約812倍、8月19日終値845元(約2万300円)では約624倍、8月20日終値687元(約1万6,500円)でも約507倍になります。
投資家が見る点: この計算は上期利益が下期も続くと仮定した単純な年換算で、将来予想PERではありません。それでも、株価が数年先の利益成長を強く織り込んでいることは確認できます。発行価格150.80元でも会社資料ベースの発行PERは219.23倍で、上場前からすでに通常の成長株より高い期待が乗っていました。
3. 上期は増収でも、控除後利益は19.34%減少
宇樹科技の2026年1〜6月売上高は11.52億元(約276億円)で、前年同期比48.54%増でした。親会社株主帰属利益は2.74億元(約65.8億円)で前年同期の赤字から黒字に転じた一方、控除後利益は2.44億元(約58.6億円)と前年同期比19.34%減少しています。会社は研究開発費や販売費などの期間費用の増加を理由に挙げています。
投資家が見る点: 「売上高48%増」だけを見れば成長株ですが、株価がPER500〜800倍の領域にあるなら、次に必要なのは利益率の改善です。研究開発費が将来の製品化につながるか、販売費が一過性か、四足ロボットから人形ロボット・部品・モデルへの製品構成が利益を押し上げるかを見ます。
4. 具身智能のテーマは強いが、実用化までの時間は別問題
宇樹科技は人形ロボット、四足ロボット、ロボット部品、具身智能モデルを展開しています。会社の申請資料では、2026年第1四半期に売上高が前年同期比68.49%増の4.23億元(約102億円)となる一方、控除後利益は52.55%減少したと説明しており、業界の熱度緩和や競争激化、研究開発・販売費の増加もリスクとして挙げています。
投資家が見る点: ロボットの展示や研究用途での採用と、工場・物流・家庭で継続的に利益を生むことは同じではありません。市場が確認する順番は、出荷台数、平均販売価格、継続受注、稼働率、保守収入、そして粗利益率です。テーマが長期でも、現在の株価が長期の成功を先取りしすぎれば、短期の評価修正は避けにくくなります。
PER800倍超の計算と株価の距離
| 基準 | 株価・利益 | 概算PER | 読み方 |
|---|---|---|---|
| IPO価格 | 150.80元(約3,620円) | 219.23倍 | 上場前から高い期待を織り込み |
| 8月19日開値 | 1,100元(約2万6,400円) | 約812倍 | 2026年上期利益を単純年換算 |
| 8月19日終値 | 845元(約2万300円) | 約624倍 | 初日の熱狂を一部消化 |
| 8月20日終値 | 687元(約1万6,500円) | 約507倍 | 急落後もなお高い期待値 |
このPER試算には、株式数を発行後の4億446万株、利益を2026年上期の2.74億元(約65.8億円)×2として使っています。四半期・半期利益を年換算した数字なので、企業の正式な業績予想ではありません。比較のための物差しです。人民元表示の円換算は、1元=約24円で計算した概算です。
宇樹科技の問題は、利益がないことではありません。2025年の売上高は16.99億元(約408億円)、控除後の親会社株主帰属利益は5.91億元(約142億円)まで増えています。問題は、その利益成長が今後も数年続き、研究開発費と販売費を吸収しながら、PER500倍超を正当化する速度で拡大できるかどうかです。ここからは夢ではなく、受注と利益率の決算になります。
確認しておきたい日程
| 時期 | 確認ポイント |
|---|---|
| 2026年8月19日 | 科創板上場、IPO価格150.80元(約3,620円)、初値1,100元(約2万6,400円)、終値845元(約2万300円) |
| 2026年8月20日 | 上場2日目の終値687元(約1万6,500円)、前日比18.70%安 |
| 次回決算・開示 | 売上成長率、控除後利益、研究開発費、販売費、製品別出荷と粗利益率 |
| 今後の流通株増加時 | ロックアップ解除、流通株比率、需給と株価の連動 |
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出典
- 上海証券取引所「宇樹科技股份有限公司人民普通株股票科創板上市交易公告」(2026年8月18日)
- 宇樹科技「首次公開发行股票并在科创板上市公告书」(2026年8月17日更新、2026年上期業績・発行後株式数)
- 宇樹科技「首次公開发行股票并在科创板上市招股说明书(申报稿)」(2026年1〜3月業績・発行PER・事業リスク)
- 宇樹科技「关于宇树」
- 日本銀行「基準外国為替相場及び裁定外国為替相場(8月分)」(1中国元=24円、円換算の基準)