今日の見方
以下の日本円換算は、日本銀行の2026年8月の基準外国為替相場をもとに、1元=約24円として丸めた概算です。実際の為替レートや手数料によって変わるため、企業価値や調達額の正式な円評価ではありません。
長江存儲のIPO受理は、単なる新規上場ニュースではありません。2023年の赤字から2024年に黒字へ転じ、2025年に利益を伸ばした企業が、NAND市況の強い局面で量産ラインと研究開発に330億元(約7,920億円)を投じようとしている点が大きい材料です。
ただ、NANDの利益は市況が反転すると急に細ります。今回の第1四半期利益だけを通期利益に置き換えるより、販売単価、出荷量、在庫、設備投資、そして増産後の価格維持力を追う段階です。IPO受理から上場までは審査と登録が残り、公開価格や上場日はまだ決まっていません。
注目ニュース
1. 長存控股の科創板IPO申請を上交所が受理
上海証券取引所は8月21日、長江存儲控股股份有限公司の科創板IPO申請を受理しました。申請資料では、超過配当選択権行使前の発行株式数を1億9,800万株以上2億4,300万株以下、発行後株式数の10〜12%としています。調達予定額は330億元(約7,920億円)です。
投資家が見る点: 「受理」は審査の入口であり、登録承認や上場完了ではありません。今後は上交所の質問・回答、申請書類の更新、発行価格、発行時期を確認します。IPOで調達する資金が量産能力と研究開発にどう配分されるかも、企業価値を見る材料です。
2. 2026年第1四半期の売上470.42億元(約1兆1,290億円)、純利益333.79億元(約8,011億円)
招股説明書(申請稿)によると、2026年1〜3月の売上高は470.42億元(約1兆1,290億円)、親会社株主に帰属する純利益は333.79億元(約8,011億円)、控除後の同利益は331.72億元(約7,961億円)でした。2025年通期の売上高は631.85億元(約1兆5,164億円)、親会社株主に帰属する純利益は142.11億元(約3,411億円)で、1四半期の利益が前年通期を大きく上回っています。
投資家が見る点: 数字は強烈ですが、NAND価格上昇の寄与を切り分けないと持続利益は読めません。2026年1〜3月を単純に4倍して年間利益を推計するのは危険です。次の資料では、NANDの販売単価、出荷量、製品構成、在庫評価の変化を見ます。
3. NANDが売上の中心、世界3位・中国1位の位置づけ
長存控股の申請資料が引用するTrendForceデータでは、2026年1〜3月のNAND Flashメーカー順位は、販売金額と出荷量のいずれでも同社が世界3位、中国1位でした。長江存儲はチップ設計から製造、封装・テスト、ストレージ製品まで手がけるIDM企業です。
投資家が見る点: 市場シェアの上昇は競争力の材料ですが、同時に供給増のリスクでもあります。330億元(約7,920億円)の調達で量産ラインが拡張されれば、長期的には中国の自給率向上につながる一方、NAND市況が弱い時期には価格下落を速める可能性もあります。ここは成長と供給圧力をセットで見ます。
4. 日本株ではキオクシアHDなどへの連想、競合供給がリスクに
長江存儲は未上場のため、日本の投資家が直接売買できる銘柄ではありません。ただし、NAND市況や中国メモリーの供給力は、キオクシアホールディングス(285A)や半導体製造装置・材料株の業績見通しに影響します。
投資家が見る点: 長江存儲の業績拡大を日本株の追い風とだけ読むのは早計です。NAND価格が上がる局面では業界全体の利益期待を押し上げますが、長存控股の増産や競合投資が先行すれば、価格と利益率のピークアウト材料になります。キオクシアでは販売単価、eSSD需要、在庫、設備投資を併せて確認します。
業績推移とIPO後の確認点
| 期間 | 売上高 | 親会社株主に帰属する純利益 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 187.4億元(約4,498億円) | ▲191.81億元(約4,604億円) | NAND市況悪化で赤字 |
| 2024年 | 約452億元(約1兆845億円) | 67.71億元(約1,625億円) | 市況回復で黒字転換 |
| 2025年 | 631.85億元(約1兆5,164億円) | 142.11億元(約3,411億円) | 増収増益を継続 |
| 2026年1〜3月 | 470.42億元(約1兆1,290億円) | 333.79億元(約8,011億円) | 四半期利益が急拡大 |
上場後に市場が見るのは、IPOで集めた資金の大きさより、増産投資が利益とキャッシュフローに結びつくかです。NANDはメモリーサイクルの影響が大きく、好況期の利益率をそのまま企業の恒常的な収益力とみなすことはできません。競争力の確認には、数量ではなく単価と粗利益率の持続性が必要です。
確認しておきたい日程
| 時期 | 確認ポイント |
|---|---|
| 2026年8月21日 | 上海証券取引所が長存控股の科創板IPO申請を受理 |
| 今後 | 上交所の審査質問、申請稿の更新、証監会の登録、発行価格・上場日 |
| 次回開示以降 | NAND販売単価、出荷量、在庫、粗利益率、量産ライン投資の進捗 |
関連ページ
出典
- 上海証券交易所「发行上市」(長存控股の科創板IPO申請、2026年8月21日受理)
- 長江存儲「企業概要」(事業内容・IDM体制)
- 長存控股「科創板IPO招股説明書(申請稿)」、2026年1〜3月および2023〜2025年の財務数値
- 長存控股「科創板IPO招股説明書(申請稿)」が引用するTrendForceのNAND市場順位データ
- 日本銀行「基準外国為替相場及び裁定外国為替相場(8月分)」(1中国元=24円、円換算の基準)