要約
「厚生年金の年収の壁」とは、パート・アルバイトなどが社会保険(健康保険・厚生年金)の加入対象になり、手取り額が変化しやすい境目を指します。
近年は「106万円の壁」と呼ばれることが多いですが、実際には年収だけで決まるわけではありません。勤務時間、勤務先の企業規模、雇用見込み、学生かどうかなども関係します。
主な壁は次の3つです。
| 壁 | 概要 |
|---|---|
| 103万円 | 所得税に関する壁 |
| 130万円 | 配偶者の社会保険扶養から外れる目安 |
| 106万円前後 | 厚生年金・健康保険加入の目安(条件あり) |
この記事では、2026年6月11日時点の公的情報をもとに、厚生年金の「106万円の壁」を整理します。
厚生年金の「106万円の壁」とは?
106万円の壁とは、一定条件を満たすパート・アルバイトなどが、勤務先で厚生年金・健康保険に加入することになり、本人負担の社会保険料が発生する境目を指します。
代表的な条件は次の通りです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 2か月を超えて働く見込みがある
- 学生ではない(例外あり)
- 勤務先が社会保険の適用対象となる事業所である
月額8.8万円を12か月に換算すると約105.6万円になるため、「106万円の壁」と呼ばれてきました。
ただし、これは単純に年収が106万円を超えたら必ず加入、という意味ではありません。週の所定労働時間や勤務先の条件もあわせて確認する必要があります。
手取りはなぜ減るのか
年収が一定ラインを超えて社会保険に加入すると、給与から次の保険料が天引きされます。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
たとえば年収110万円前後で社会保険に加入すると、加入前より手取りが一時的に減ることがあります。
ここでつまずきやすいのは、「手取りが減る=損」と決めつけてしまうことです。短期的には負担に見えても、厚生年金に加入すると将来の年金や保障が上乗せされます。
130万円の壁との違い
106万円の壁と130万円の壁は、似ているようで制度の見方が違います。
| 壁 | 主な意味 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 106万円前後 | 勤務先で自分が社会保険に加入する目安 | 勤務時間、賃金、勤務先、雇用見込み |
| 130万円 | 配偶者などの社会保険扶養から外れる目安 | 年収見込み、扶養認定、加入先 |
106万円の壁は、自分自身が勤務先で厚生年金・健康保険に入るかどうかの話です。
130万円の壁は、配偶者などの社会保険上の扶養から外れるかどうかの目安として使われます。
そのため、「130万円未満なら必ず扶養内で安心」とは言い切れません。勤務先の社会保険適用状況によっては、130万円未満でも厚生年金加入になる場合があります。
投資目線で考えると
短期的には、社会保険料の天引きによって手取りが減ったように感じる人が少なくありません。
しかし長期的には、厚生年金加入には次のメリットがあります。
- 老齢厚生年金が増える
- 障害厚生年金の保障が厚くなる
- 遺族厚生年金の対象になる
- 健康保険の傷病手当金や出産手当金などにつながる場合がある
資産形成では、NISAやiDeCoだけで老後資金を考えるより、公的年金を土台として見るほうが現実的です。
厚生年金は「守りの資産」に近い存在です。投資で増やす部分と、公的年金で支える部分を分けて考えると、働き方の判断もしやすくなります。
扶養内勤務と厚生年金加入の比較
| 項目 | 扶養内勤務 | 厚生年金加入 |
|---|---|---|
| 手取り | 多く見える場合がある | 一時的に減る場合がある |
| 将来年金 | 国民年金中心 | 厚生年金が上乗せ |
| 障害保障 | 基本は国民年金の範囲 | 障害厚生年金の対象 |
| 遺族保障 | 基本は国民年金の範囲 | 遺族厚生年金の対象 |
| 判断軸 | 今の手取りを重視 | 将来保障も含めて判断 |
実際にどちらがよいかは、世帯収入、配偶者の扶養状況、勤務先の制度、今後の働き方によって変わります。
初心者によくある誤解
「106万円を超えると損」
必ずしも損ではありません。
短期的な手取りだけを見ると減る場合がありますが、将来の年金額や障害・遺族保障まで含めると、有利になるケースもあります。
「130万円までなら安心」
勤務先の社会保険適用状況によっては、130万円未満でも厚生年金加入になる場合があります。
年収だけで判断せず、週の所定労働時間、月額賃金、勤務先の規模、雇用見込みを確認しましょう。
「年収だけ見れば判断できる」
106万円の壁は、年収だけの話ではありません。
特に大切なのは、週20時間以上働く契約になっているか、勤務先が社会保険の適用対象か、学生に該当するかどうかです。
投資家が知っておきたい考え方
資産形成では、次の5つを別々ではなくセットで考えることが大切です。
- 公的年金
- 企業年金
- NISA
- iDeCo
- 預金
厚生年金は、老後資金の土台になる制度です。
投資だけで老後資金を作ろうとすると、相場下落や取り崩し時期のリスクをすべて自分で受けることになります。厚生年金という土台を活用しながら、NISAなどで資産を育てるほうが、家計全体のリスクを抑えやすくなります。
まとめ
厚生年金の年収の壁としてよく知られているのが「106万円の壁」です。
ただし、押さえておきたいのは次の3点です。
- 年収だけでは決まらない
- 勤務時間や勤務先の条件も重要
- 将来の年金額や保障が増える
「手取りが減るか」だけでなく、「将来受け取れる年金や保障がどう変わるか」まで含めて考えると、働き方や資産形成をより合理的に判断しやすくなります。
出典・参考資料
- 厚生労働省「社会保険加入の要件」
- 厚生労働省「年金社会保険の加入対象の拡大について」
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
- 確認日: 2026-06-11