飲食店開業・経営シリーズ

このシリーズでは、個人飲食店の開業から資金繰り、融資、物件選び、店舗投資、利益の再投資までを順番に整理しています。

結論だけ先に

公庫面談で大事なのは、きれいな受け答えではありません。

創業計画書の数字を、本人が理解していることです。

面談で見られやすいこと担当者が確認したいこと
職歴・経験本当に店を回せる実務経験があるか
自己資金計画的に準備した資金か
立地・物件家賃や商圏を冷静に見ているか
売上予測席数、回転率、客単価で説明できるか
コスト管理原価、人件費、家賃を把握しているか
下振れ対応売上が弱い月でも資金繰りを守れるか
返済計画利益と現金で返済できるか

面談は、熱意を見せる場であると同時に、数字の解像度を確認される場です。

「頑張ります」だけでは弱い。

「20席、客単価1,000円、1.5回転、稼働率80%でランチ日商2.4万円です」と言える人の方が、計画の現実感を伝えやすいです。

面談は「創業計画書を本人が理解しているか」の確認

日本政策金融公庫の創業計画書には、経営者の略歴、取扱商品・サービス、取引先、従業員、必要資金と調達方法、事業の見通しなどを書く欄があります。

面談では、その内容をもとに質問されます。

担当者が知りたいのは、計画書がきれいに書かれているかだけではありません。

その数字が、本人の経験と現場感から出ているかです。

たとえば、売上予測が月商300万円と書いてある。

そのときに、

席数はいくつか
ランチとディナーの客単価はいくらか
何回転を見込むのか
平日と休日でどう違うのか
原価率は何%か
家賃比率は何%か
返済後に現金は残るのか

ここまで答えられるかを見られます。

面談の本質は、暗記テストではありません。

創業計画書の数字が、自分の頭で組み立てたものかを確認する時間です。

面談当日はどう進むのか

面談の進み方は、申込内容や支店によって変わります。

ただ、飲食店の創業融資では、だいたい次のような流れを想定しておくと準備しやすいです。

受付
↓
本人確認・提出書類の確認
↓
創業計画書の内容確認
↓
職歴・飲食経験の確認
↓
自己資金と借入状況の確認
↓
売上予測・資金計画・返済余力の確認
↓
追加質問・今後の流れの説明

面談時間は人によって違いますが、短い雑談で終わるものではありません。

創業計画書、通帳、見積書、物件資料、資金繰り表を見ながら、数字の根拠を確認される場だと考えておいた方がいいです。

日本政策金融公庫の面談で聞かれる質問10選

1. これまでの職歴と、担当してきた業務を教えてください

この質問で見られるのは、飲食店を実際に運営できる経験があるかです。

単に「飲食店で働いていました」だけでは弱いです。

答えるときは、担当業務を具体的に分けて話します。

経験説明したいこと
調理仕込み、メニュー開発、原価管理
ホール接客、予約管理、客単価、回転率
店長シフト管理、売上管理、仕入れ、教育
仕入れ取引先、支払条件、食材ロス管理

たとえば、

洋食店で8年勤務し、直近3年は店長として、シフト作成、仕入れ、原価管理、月次売上管理を担当していました。

このように話すと、売上予測やコスト計画にも説得力が出ます。

2. なぜこの立地と物件を選んだのですか

担当者が見たいのは、物件を感覚だけで選んでいないかです。

「人通りが多いから」「雰囲気が良いから」だけでは、家賃の重さを説明できません。

答えるときは、商圏と家賃比率をセットで話します。

半径500m内にオフィスが多く、平日ランチ需要が見込めます。家賃は月20万円で、月商250万円を通常ケースとすると家賃比率は8%です。

ここで大事なのは、良い立地かどうかより、その家賃で耐えられるかです。

飲食店では、物件選びの失敗が資金繰りを直撃します。

3. 自己資金はどのように準備しましたか

自己資金は、金額だけでなく準備プロセスも見られます。

面談では、通帳や資金の出どころを確認されることがあります。

答えるときは、いつから、どの収入で、どう貯めたかを説明します。

3年前から開業資金として毎月5万円を積み立て、賞与も一部残してきました。現在の自己資金は300万円です。

親族からの支援や退職金がある場合も、隠さず整理して話した方がいいです。

出どころを説明できない資金は、確認に時間がかかりやすくなります。

4. 他の借入や、支払いの遅れはありますか

ここでは、返済能力と信用面が確認されます。

住宅ローン、車のローン、カードローン、リボ払い、奨学金などがある場合は、毎月返済額まで整理しておきます。

答えるときは、借入の有無だけでなく、今回の事業返済と両立できるかを説明します。

車のローンが残っています。残高は80万円、毎月返済は2万円です。創業後の資金繰り表には、この返済も含めています。

大事なのは、隠さないことです。

借入があること自体より、それを含めて返済計画を作っているかが問われます。

5. 競合店と比べて、あなたの店は何が違いますか

この質問では、差別化が見られます。

ただし、「うちの方が美味しいです」は弱いです。

味は大切ですが、面談ではビジネスとして説明する必要があります。

たとえば、次のように話します。

周辺は夜営業中心の居酒屋が多い一方、当店は平日ランチとテイクアウトを主軸にします。客単価はランチ1,000円、テイクアウト900円で、厨房オペレーションを絞り、提供時間を短くする設計です。

差別化は、雰囲気やこだわりだけでなく、客層、価格帯、提供時間、回転率、原価率までつながると強くなります。

6. 売上予測の根拠を説明してください

これは面談の中心になりやすい質問です。

計画書の売上予測を、口頭で説明できる必要があります。

基本の式はこれです。

売上 = 席数 × 回転率 × 客単価 × 稼働率 × 営業日数

たとえば、

ランチは20席、1.5回転、客単価1,000円、稼働率80%で日商2.4万円です。ディナーは20席、1回転、客単価4,000円、稼働率60%で日商4.8万円です。月25日営業で、通常月の売上を約180万円と見ています。

このように分解して話せると、希望ではなく根拠のある計画に見えます。

満席前提ではなく、稼働率を置くのがポイントです。

7. 原価率、人件費率、家賃比率は何%で見ていますか

ここでは、飲食店経営の基本を理解しているかが見られます。

飲食店では、材料費、人件費、家賃のバランスが崩れると利益が残りません。

答えるときは、FLR比率で説明します。

原価率は30%、人件費率は28%、家賃比率は8%で見ています。FLR合計は66%前後です。

もちろん、業態によって適正値は変わります。

大事なのは、自分の業態に合った比率を理解していることです。

原価率や人件費率が低すぎる計画は、逆に不自然に見えることがあります。

8. 想定より売上が弱かった場合、どうしますか

この質問では、下振れ時の対応力が見られます。

「頑張って集客します」だけでは弱いです。

担当者が知りたいのは、現実的なプランBです。

たとえば、こう答えます。

開業資金の中に、家賃・人件費・生活費・返済を含めた固定的支出3か月分を運転資金として残します。売上が通常ケースの半分になった場合は、アルバイトシフトを減らし、メニュー数を絞り、仕入れロスを減らします。テイクアウト比率を上げて、営業時間外の売上も取りにいきます。

ポイントは、売上を増やす話だけでなく、支出を下げる話も入れることです。

資金繰りは、売上と支払いの両方で守ります。

9. 内装工事費や厨房機器の見積もり内訳を説明できますか

必要資金の根拠も見られます。

内装工事費、厨房機器、看板、家具、レジ、保証金などは、できるだけ見積書や契約条件に基づいて説明します。

内装工事は3社から見積もりを取りました。厨房の防水、給排水、電気容量の工事が中心で、最終見積もりは税込600万円です。厨房機器は中古も組み合わせ、初期投資を抑えています。

どんぶり勘定に見えると、必要資金の妥当性が弱くなります。

「なぜその金額が必要なのか」を説明できる状態にしておきます。

10. 万が一、事業がうまくいかなかった場合はどうしますか

少し答えにくい質問ですが、聞かれる可能性があります。

ここで見られるのは、リスクを考えているかです。

「絶対に失敗しません」と言い切るより、現実的な対応策を話した方がよいです。

まずは資金繰り表で早期に赤字兆候を見つけ、営業時間、メニュー、仕入れ、人件費を見直します。それでも継続が難しい場合は、撤退費用と返済計画を早めに金融機関へ相談します。自身の飲食経験を活かして再就職し、返済を続けることも想定しています。

金融機関が見たいのは、強がりではありません。

悪いケースでも逃げずに相談し、返済を続ける姿勢です。

面談で評価が下がりやすい人

面談では、完璧な回答よりも、計画への理解が見られます。

次のような状態だと、説明が弱くなりやすいです。

評価が下がりやすい状態なぜ弱いか
売上予測を分解できない月商の根拠が見えない
客単価を答えられないメニューと売上計画がつながっていない
家賃比率を把握していない固定費の重さを見ていない
自己資金の出どころを説明できない準備過程が見えにくい
通帳や見積書を準備していない数字の裏付けが弱い
税金や返済を資金繰りに入れていない黒字でも現金不足になりやすい
売上が弱い場合の対応がない下振れ耐性が見えない

面談で怖いのは、厳しい質問そのものではありません。

自分の計画なのに、数字を説明できないことです。

面談当日の持ち物チェックリスト

必要書類は状況によって変わります。

ただ、飲食店の創業融資面談なら、次のような資料は準備しておくと説明しやすくなります。

持ち物役割
創業計画書面談の中心資料
通帳自己資金の準備過程を説明する
本人確認書類本人確認
内装・厨房機器の見積書必要資金の根拠
物件資料・賃貸条件家賃、保証金、立地の確認
メニュー表案客単価、原価率の説明
資金繰り表入金、支払い、返済余力の説明
職務経歴を整理したメモ飲食経験、店長経験の説明
許認可・資格の準備状況営業許可、食品衛生責任者などの確認

当日は、書類をただ持っていくだけでは足りません。

どの数字がどの資料に対応しているかを、自分で説明できるようにしておきたいところです。

まとめ:公庫面談は「熱意」より数字の解像度を見られる

日本政策金融公庫の面談は、開業者を落とすためだけの場ではありません。

創業計画が現実的か、返済できる構造か、開業後に資金繰りが詰まりにくいかを確認する場です。

料理への思いは大切です。

ただし、面談ではその思いを数字に落とす必要があります。

席数。

客単価。

回転率。

原価率。

人件費率。

家賃比率。

運転資金。

返済額。

これらを自分の言葉で説明できる人は、面談で落ち着いて話しやすくなります。

公庫面談の本質は、熱意の温度チェックではありません。

数字の解像度チェックです。

自分で電卓を叩き、創業計画書の数字を理解しておく。

それが、面談対策として一番現実的な準備です。

本記事は、飲食店開業時の融資面談で聞かれやすい論点を整理する一般的な解説であり、融資承認、満額融資、税務・法務・会計処理を保証するものではありません。実際の面談・申込では、日本政策金融公庫、金融機関、税理士、商工会議所、自治体の創業相談窓口などに確認してください。

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参考

本記事は、公開情報に基づいた教育的・情報提供のみを目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容の正確性については万全を期しておりますが、その内容や将来の投資成果を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願い申し上げます。