発行条件の概要
楽天証券の商品ページで確認できる条件は次の通りである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 株式会社みずほフィナンシャルグループ第35回期限前償還条項付無担保社債(実質破綻時免除特約および劣後特約付) |
| 発行体 | 株式会社みずほフィナンシャルグループ |
| 格付け | AA-(R&I)、AA-(JCR) |
| 当初5年の仮条件利率 | 年2.300%-2.900%(税引前) |
| 2031年7月17日以降の利率 | 5年国債金利 + 0.350%-0.950%(仮条件、税引前) |
| 販売期間 | 2026年7月3日9:00-2026年7月16日14:30 |
| 発行日(受渡日) | 2026年7月17日 |
| 償還日 | 2036年7月17日 |
| 利払日 | 毎年1月17日、7月17日 |
| 買付単位 | 100万円以上、100万円単位 |
| 初回期限前償還日 | 2031年7月17日 |
第34回の10年固定型と並べると、こちらはクーポンの見え方が少し地味に見える。その代わり、5年で資金が戻る可能性と、後半5年の利率見直しというオプションが付いている。
まず押さえたいのは「変動金利」と言っても一度しか見直されないこと
この第35回債は、紹介のされ方次第で少し誤解されやすい。
「前半5年は固定、後半5年は変動」と聞くと、半年ごとや年ごとに金利が動く商品を想像しやすい。しかし楽天証券の商品説明では、2031年7月17日の2銀行営業日前を基準に利率が一度だけ決まり、2032年1月以降満期まで受け取るすべての利金に同じ利率が適用されるとある。
つまり実態は、
2026年7月-2031年7月 当初固定金利
2031年7月 みずほFGがコールするか判断
コールしない場合 後半5年の利率を一度だけ再設定
2031年7月-2036年7月 その再設定後の利率で継続
いわゆる純粋なフローターというより、5年後に一度だけ利率を見直すステップ型に近い。ここはかなり重要だ。
期限前償還条項はどう効くか
本社債は、2031年7月17日に、みずほFGがあらかじめ金融庁長官の確認を受けたうえで、残存する本債券の全部を100円で期限前償還できる。
投資家から見ると、ここが最大の分岐点になる。
シナリオA 5年で終わる
みずほFGが初回コールを行えば、投資家は当初5年間の固定クーポンを受け取り、2031年7月に100万円単位で元本が戻る。
この場合、投資家に残る論点は再投資リスクだ。戻ってきた資金を、その時点で同じような利回りで再投資できるとは限らない。
シナリオB 10年まで続く
みずほFGがコールしなければ、2031年時点の5年国債金利にスプレッドを乗せた利率へ一度だけ見直され、その後2036年まで継続する。
この場合、2031年の金利水準次第で後半5年の魅力度は大きく変わる。金利が高ければ見た目の利率は上がるが、低ければ期待ほど伸びない。
なぜ「5年で終わる可能性」が意識されるのか
楽天証券の商品説明では、本債券はバーゼルIII対応のTier2債券とされている。Tier2資本として自己資本比率に算入できるタイプの劣後債だ。
この種の商品では、初回コール日以降に資本性の見え方や資金調達コストとのバランスが変わるため、発行体がコールを選ぶかどうかが大きな論点になる。しかも、みずほFGは2026年5月11日付の電子公告で、2021年発行の第2回期限前償還条項付無担保社債を2026年7月7日に全額期限前償還すると公表している。
もちろん、第35回が必ず初回コールされるとは断定できない。市場金利、代替調達コスト、規制、資本政策によって判断は変わる。ただ、少なくとも「5年で終わる可能性は十分現実的」と見ておいた方が自然だ。
実質破綻時免除特約と劣後特約は第34回と共通
この社債は、第34回と同じく実質破綻時免除特約および劣後特約が付く。
楽天証券の商品説明では、実質破綻時免除特約とは、発行体が実質的に破綻状態になった際に元利金の支払義務がすべて免除される特約とされている。また、劣後特約とは、破産手続きや会社更生手続きの開始など一定の劣後事由が生じた場合に普通社債より弁済順位が低くなる特約と説明されている。
ここは変わらない。見た目のクーポンが第34回より低めでも、条項の重さは軽くない。むしろ第35回は、これに期限前償還と利率見直しのシナリオが重なる分、考えることが増える。
第34回とどう違うか
比較すると違いはかなりはっきりしている。
| 項目 | 第34回 | 第35回 |
|---|---|---|
| 基本形 | 10年固定 | 当初5年固定 + 後半5年の利率見直し |
| 仮条件 | 年3.050%-3.650% | 当初5年 年2.300%-2.900% |
| コール | なし | 2031年7月17日に可能 |
| 読みやすさ | 比較的シンプル | シナリオ前提で見る必要がある |
| 主要論点 | 10年固定の信用リスクと価格変動 | 5年で終わるか、続くか、その後の利率がどうなるか |
第34回は「10年固定クレジット」を買う感覚に近い。一方、第35回は「5年で終わるかもしれない10年劣後債」を買う感覚に近い。名前は似ているが、投資家が気にすべき論点は少し違う。
この社債の魅力はどこか
魅力は3つある。
1つ目は、当初5年間の円建てクーポンとしては見劣りしない水準が提示されていること。 2つ目は、初回コールで終われば、10年固定より資金拘束が短くなる可能性があること。 3つ目は、仮にコールされなければ、2031年時点の5年国債金利に連動した形で後半利率が見直されること。
特に「10年固定は長いが、5年なら取りやすい」と感じる投資家には、形としては入りやすい商品に見える。
ただし、弱点もかなりはっきりしている
弱点も3つある。
1つ目は、コールの判断権が投資家ではなく、みずほFG側にあること。 2つ目は、後半5年の利率上昇を期待しても、初回コールでそのシナリオ自体が消える可能性があること。 3つ目は、第34回と同じく、危機時には実質破綻時免除特約と劣後性が前面に出ること。
つまり、第35回は「金利上昇にそのまま乗れる便利な債券」と単純化すると危ない。発行体は、自社に有利ならコールするし、不利なら残す。投資家が一番都合のよいシナリオだけが残るわけではない。
みずほFGの信用力をどう見るか
発行体の信用そのものは高い。みずほFGは2026年3月期に親会社株主純利益1兆2,486億円、東証基準ROE11.4%を計上し、株式市場では「低PBR銀行」の見られ方からかなり変わってきた。
債券投資家として見るなら、ここに加えて、金利上昇局面での資金利益、債券ポートフォリオの評価、与信費用、海外クレジットを見たい。メガバンクとしての信用力は強いが、それでも劣後債である以上、信用と条項は切り分けて考えるべきだ。
どんな人に向いているか
向いている可能性があるのは、次のような人だ。
- 第34回の10年固定より、まず5年シナリオを取りたい
- 100万円単位で、当面使わない余裕資金を置ける
- コールされた場合の再投資リスクを受け入れられる
- 劣後性と実質破綻時免除特約を理解したうえで、みずほFGの信用を評価できる
向いていないのは、次のような人である。
- 「10年満期」と見て後半5年の高金利だけを期待している
- 発行体の都合で5年後に終わる可能性を受け入れにくい
- 元本毀損リスクをほぼ許容できない
- 預金や個人向け国債の代わりを探している
判断軸はここに絞った方がいい
1. 当初5年の利率で納得できるか
2. 2031年にコールされても困らないか
3. コールされず10年まで続く場合の利率見直しも理解しているか
4. 実質破綻時免除特約と劣後特約を受け入れられるか
この4つに迷いが残るなら、無理に取りにいく必要はない。
まとめ
みずほFG第35回期限前償還条項付無担保社債は、当初5年固定、後半5年の利率見直し、初回コールという3層構造の劣後債である。
押さえたいポイントは次の通り。
- 当初5年の仮条件は年2.300%-2.900%
- 2031年7月17日に、みずほFGの判断で100円償還される可能性がある
- コールされなければ、後半5年の利率は2031年時点で一度だけ見直される
- 実質破綻時免除特約と劣後特約により、危機時の損失は重い
- 利率の数字だけでなく、5年終了シナリオと10年継続シナリオの両方を読む必要がある
第34回より利率は低めに見えるが、第35回には「5年で終わるかもしれない」という別の性格がある。利回りだけで比べるとずれやすい。ここは、将来の金利観と再投資リスク、そして発行体のコール行動まで含めて考える商品だ。
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出典
- 楽天証券「株式会社みずほフィナンシャルグループ第35回期限前償還条項付無担保社債(新発劣後債)」
- みずほフィナンシャルグループ「格付・債券情報」
- みずほフィナンシャルグループ「シニア債・劣後債の契約内容の詳細」
- みずほフィナンシャルグループ「電子公告」(2026年5月11日付「実質破綻時免除特約および劣後特約付無担保社債の期限前償還に関するお知らせ」を参照)
- みずほフィナンシャルグループ「決算関連情報」
- 確認日: 2026-06-25