AIサーバー冷却・液冷関連5銘柄

AIサーバーの「熱」をどこで冷やすのか

高性能GPUを使う計算基盤では、ラックに集まる発熱を処理できるかが、機器の収容能力を左右する。IIJの技術解説は、直接液冷が1ラック当たり100kW級の高発熱構成への対応を可能にしたと説明している。

直接液冷と液浸冷却は、冷却液の使い方も必要な部材も異なる。

方式冷やし方関連する設備・部材
直接液冷(DLC)CPU・GPUなどに接する冷却板に液体を流すコールドプレート、配管、継手、マニフォールド、CDU
液浸冷却IT機器を電気を通しにくい専用液体に浸す液浸槽、専用冷却液、循環・熱交換設備
空冷との併用液冷に対応しない機器などを空気で冷やす空調、ファン、気流制御、監視設備

直接液冷は、チップから熱を取り出した後も、建物側へ熱を運び、外へ放出する設備を必要とする。CDUは冷却液分配装置で、温度や流量の制御、一次側と二次側の熱交換を担う。マニフォールドは液体を各サーバーへ分配する部材だ。

液冷設備・部材は、チップ側、ラック側、建物側、冷却液にまたがる。企業ごとに提供する製品や工事が違うため、どの段階で売上になるかも異なる。

また、直接液冷の普及で空調が一斉に不要になるわけではない。IIJ・NTTデータ・日比谷総合設備の2026年6月の発表も、空冷と液冷を組み合わせた共同検証である。

PUE改善と、消費電力の減少は同じ意味ではない

PUEは、データセンター全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った指標である。冷却などの付帯電力が減れば改善しやすい。

ただ、PUEが改善しても、GPUの設置台数や稼働が増えれば総消費電力は増える。液冷は電力不足そのものを解消する技術ではなく、冷却に使う電力や高密度機器の収容条件を改善する手段と捉えたい。

設備側では初期費用、配管工事、漏えい対策、保守体制が導入の負担になる。冷却効率の高さだけで、すべての既存施設がすぐ液冷へ切り替わると読むのは早い。

成長候補を選ぶ4つの条件

技術の説明が、顧客の採用理由になっているか

継手なら液だれ量や圧力損失、配管なら施工性や耐久性、冷却液なら機器との適合性など、採用理由を具体的に見る。特許や技術紹介だけでは、競合より高い利益率を維持できる根拠にはならない。

協業・採用・受注・売上を分ける

展示会への出展や共同検証は、商用の大口受注とは異なる。GPUを搭載した製品を販売している企業についても、それをGPUメーカーへの部品納入実績と読み替えない。納入先の公表、量産開始、継続発注が次の材料になる。

新事業が全社の利益を動かす規模になるか

小さい時価総額だけでは成長力を測れない。既存事業の売上・利益に対し、液冷事業がどの程度の規模まで育つのかが先だ。設備増強や増資が必要なら、売上の伸びに加え、資金負担と1株当たり利益への影響も見る。

受注が利益と営業キャッシュ・フローを増やすか

受注残が増えても、低採算の案件や在庫・売掛金の増加が重なれば資金は苦しくなる。売上、利益率、営業キャッシュ・フロー、設備投資を合わせて読む。

液冷関連5銘柄を比較する

掲載順は設備からサーバーまでの役割順で、株価上昇期待の順位ではない。株価・時価総額・PERは比較しておらず、割安株や「出遅れ株」の選定でもない。

液冷関連の売上・利益の開示範囲は会社ごとに異なるため、5社の事業規模を同じ基準では比較できない。個別開示がない場合、全社増益を液冷事業の成果とはみなさない。

企業・コード確認できた接点次に見る点
日比谷総合設備(1982)冷却設備の構築・評価を担う共同検証商用施工・保守への展開、案件採算
日東工器(6151)サーバー液冷用・液冷配管用継手の発売販売数量、継続採用、利益への寄与
三桜工業(6584)コンテナ型DC向け水冷モジュールの受注追加受注、納入拡大、全社への寄与
ダイキン工業(6367)液浸冷却向けフッ素系液体の製品掲載採用・販売量、素材の適合性、事業採算
HPCシステムズ(6597)水冷AIワークステーションの製品掲載導入実績、粗利益、保守・構築収益

日比谷総合設備(1982)|冷却設備を構築し、実環境で評価する

2026年6月、IIJ・NTTデータ・日比谷総合設備は、モジュール型エッジデータセンターで空冷と液冷を組み合わせる共同検証を始めた。日比谷総合設備は可視化システムと冷却設備の構築・評価を担う。

商用工事や保守契約へ進めば、機器導入後の運用にも収益機会が広がる。ただし、工事の採算は人件費や外注費、施工体制にも左右される。

日東工器(6151)|接続部の液だれを抑える継手

日東工器はサーバー液冷ユニット向けのブラインドメイト型継手を7月に発売し、8月には真ちゅう製の液冷配管用継手も発表した。前者はサーバーをラックに挿入すると配管がつながる設計。後者の年間販売目標は1万セットで、税別標準価格は一式1万2,075〜1万3,175円となる。

年間販売目標を標準価格で単純計算すると、売上相当額は約1.21〜1.32億円。日東工器の2026年3月期連結売上高272.89億円に対して約0.44〜0.48%となる。値引きや実販売数を反映しない試算で、会社予想や利益額ではない。この販売目標を達成しても、全社売上高に占める割合は0.5%未満にとどまる。全社業績への影響が大きくなるかは、この製品の販売拡大や、他の液冷用継手の採用状況による。

2027年3月期第1四半期は全社売上高が7.8%増、営業利益が4.2%増だった。会社全体は増収増益だった一方、新製品は年間販売目標の段階にある。販売台数が増えても利益率が伴わなければ、全社利益への寄与は限られる。

三桜工業(6584)|配管とマニフォールドを水冷モジュールに

三桜工業は2025年9月、ゲットワークス向けにコンテナ型データセンター用の水冷モジュールを受注した。マニフォールド、樹脂配管、ボールバルブ継手、ジョイントを組み合わせた製品だ。会社は当時、この受注による2026年3月期連結業績への影響を軽微と説明している。

2027年3月期第1四半期は全社売上高が6.3%増えた一方、営業利益は58.3%減。この全社決算から液冷事業の採算は判断できない。水冷モジュールについては、追加受注の金額や新たな納入先が公表されるかを確認したい。

ダイキン工業(6367)|液浸用フッ素系液体の接点

ダイキン化学品事業の公式製品情報では、フッ素系液体DAISAVE SS-49をデータセンターのサーバー液浸冷却向けとしており、二相液浸冷却にも対応する。SS-49の需要を考える際は、液浸冷却の採用状況と、採用設備が求める冷却液の仕様を確認したい。

HPCシステムズ(6597)|GB300搭載の水冷システム

HPCシステムズが掲載するHPC3000-NGB300TS-LCは、NVIDIA GB300 Grace Blackwell Ultra Superchipを搭載し、チップを直接冷やす閉ループ水冷を採用する。タワー設置と5Uラックマウントの両方に対応し、仕様の基準日は2026年10月1日だ。

同社は水冷対応の計算機販売に、環境構築や保守を組み合わせる。大型案件では仕入れ代金の支払いと顧客からの入金の間に資金負担が生じる場合がある。導入支援を含む粗利益と、代金回収までの期間が収益性を左右する。

液冷需要は、いつ業績に表れるのか

市場の成長率だけから各社の利益を見積もることはできない。共同検証が商用案件へ進む、初回受注が継続発注に変わる、採用先が増えるといった事業化の進展が、まず売上の変化に表れる。そのうえで、粗利益や営業利益、営業キャッシュ・フローが伸びているかを追う。

設備投資や運転資金の負担が先行する会社では、売上だけでなく、回収条件や営業キャッシュ・フローも業績の質を左右する。関連売上が個別に開示されれば全社業績との比較がしやすくなるが、現時点では5社の投資妙味や株価水準を横並びに評価していない。

投資で見落としやすいリスク

採用方式の変化。 直接液冷と液浸の普及ペースが変われば、恩恵を受ける部材も変わる。規格変更や顧客側の内製化で、既存製品の優位性が続かないこともある。

顧客投資の延期。 AI向け設備投資が強くても、受電設備、工事、用地などの制約で納入が遅れる。検証から売上計上までの期間を短く見積もると、期待と決算がずれる。

故障・保守コスト。 漏えい、腐食、冷却液の劣化などに備える品質管理が必要になる。高い信頼性は採用理由になる一方、保証や保守の負担が利益率を圧迫することもある。

株価と資金負担。 成長期待が先に株価へ織り込まれれば、増益でも下落する。売買が薄い銘柄では売却時の価格が大きく動きやすい。設備投資や増資、関連株への集中投資も損失を拡大させる要因になる。

まとめ

5社で確認できた情報は、共同検証、製品情報、販売目標、個別受注と異なる。市場の成長を個社の業績へ結びつけるには、販売や受注が利益と営業キャッシュ・フローに残るかも見ていく必要がある。

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出典

以下はいずれも企業公式の開示・製品情報。確認日は2026年10月7日。ウェブ製品ページで公表日が明示されていないものは、確認日時点の掲載内容を参照した。