国内半導体関連6社の営業利益増減率。中間期5社と第1四半期1社を分けて表示

半導体6社の決算比較|対象期間と利益率も併記

米SOX指数は10月30日に前日比7.20%下落した。東京市場への波及は11月2日となるが、国内6社の決算には大幅増益と減益が混在する。市場全体の下落と、各社の利益の変化は区別したい。Nasdaqの指数履歴

金額は億円、端数四捨五入。増減率は各社開示の前年同期比、営業利益率は丸め前の利益と売上高から算出した。

企業対象期間(2026年)売上高(前年同期比)営業利益(前年同期比)営業利益率
アドバンテスト(6857)4〜9月・中間期8,452(+60.5%)4,568(+96.5%)54.0%
東京エレクトロン(8035)4〜9月・中間期16,675(+41.3%)5,068(+67.2%)30.4%
ディスコ(6146)4〜9月・中間期2,571(+32.1%)1,166(+47.9%)45.4%
SCREEN(7735)4〜9月・中間期3,085(+12.5%)545(+17.4%)17.7%
イビデン(4062)4〜9月・中間期2,625(+34.3%)601(+84.6%)22.9%
レーザーテック(6920)7〜9月・第1四半期404(−25.5%)158(−41.0%)39.1%

中間期5社は2027年3月期、レーザーテックは2027年6月期で、絶対額の比較には期間の違いがある。アドバンテストはIFRS、ほかの5社は日本基準。

下期の利益はどこまで増えるか|前年実績と会社予想を比較

金額は億円、端数四捨五入。増減率は丸め前の金額から算出した。

企業最新の営業利益計画直近決算での変更計画までの残り営業利益上期比増減率
アドバンテスト通期9,670上方修正:8,460から+14.3%下期5,102+11.7%
東京エレクトロン通期11,690通期予想を新規開示下期6,622+30.7%
ディスコ第3四半期累計1,7474〜12月予想を新規開示10〜12月581対象外・通期未開示
SCREEN通期1,565据え置き下期1,020+87.0%
イビデン通期1,330上方修正:1,270から+4.7%下期729+21.2%
レーザーテック通期1,250据え置き残り9カ月1,092対象外・上期未終了

下期は2026年10月〜2027年3月で、営業利益は「通期予想−上期実績」、上期比は「下期÷上期−1」で算出。ディスコは残り3カ月、レーザーテックは残り9カ月となるため、下期同士の比較から外した。

アドバンテストの前年下期営業利益は2,667億円、当時の上期比14.7%増だった。今期の上期比11.7%増はそれより小さいが、前年下期比では91.3%増とほぼ倍増を見込む。AI向け半導体の生産増と検査の複雑化がテスタ販売を伸ばし、上期のテストシステム事業売上高は前年同期比61.2%増となった。下期は研究開発費などの増加も織り込み、採算は上期から低下する想定だ。上期比の伸び率の小ささより、需要拡大で費用増を吸収できるかを追う。前期決算短信、決算レビュー、業績予想

東エレクの前年下期営業利益は3,218億円、当時の上期比6.1%増だった。今期の前年下期比105.8%増は、売上高60.8%増と利益率改善を組み合わせた数字だ。前期下期より利益率を高く置いている分、利益の伸びが売上を大きく上回る。会社はAIサーバー向け需要に伴う顧客の設備投資を根拠に増収増益を見込む。成長率は前年の採算水準にも左右されるため、105.8%だけで達成難易度は決められない。納入量と検収日程、販売する装置の構成が予想通りかが問われる。会社の業績予想

ディスコは通期予想を開示しておらず、分析できるのは10〜12月までだ。上期の出荷額は前年同期比37.2%増。AI・HBM向け加工装置と、顧客工場の稼働に連動する加工ツールが伸び、高付加価値製品の増加などが採算を押し上げた。10〜12月の売上予想は1,324億円で、利益率は上期を下回る想定となる。累計出荷予想から差し引いた同期間の出荷額は1,496億円。装置の検収が遅れると、出荷が伸びても売上・利益の計上は後ろへずれる。ディスコの中間決算

SCREENの前年下期営業利益は761億円で、当時の上期比63.7%増だった。今期の上期比87.0%増は大きく見えるが、前年下期比では34.1%増となる。もともと下期に利益が偏る企業で、上期比だけでは成長の大きさを読み違える。上期の営業利益は増えたものの、在庫増加や税金支払いなどで営業キャッシュフローは流出した。下期は装置販売を増やすだけでなく、在庫の販売と代金回収を進め、利益を現金に変えることも課題になる。SCREENの中間決算

イビデンは電子事業の営業利益が前年同期比96.7%増となった。AI・汎用サーバー向け基板の需要に加え、大野工場の稼働安定と円安が増益を支えた。通期利益の上方修正60億円に対し、下期の増額は説明資料の表示で約4億円にとどまる。修正の中心は上期実績の取り込みだ。下期は電子事業を伸ばす一方、セラミック事業は上期から減益を見込む。全社の増益を続けるには、基板の増産・採算改善で他事業の落ち込みや費用増を補う構図となる。イビデンの説明資料(6ページ)

レーザーテックは半導体関連装置の売上高が42.9%減り、サービスの31.2%増収で補えなかった。会社は四半期売上がおおむね当初想定通りと説明し、通期営業利益予想を据え置いた。受注の想定は従来を上回るが、受注から売上までには時間がかかる。残り9カ月の収益はサービスの拡大に加え、装置売上をどこまで積み上げられるかで変わる。第1四半期の減益率だけから、受注の失速や通期の未達を結論づける内容ではない。レーザーテックの決算資料

東エレクの会社予想比10.6%増は、市場予想との差ではない

東エレクの上期営業利益は前年同期比67.2%増、事前の会社予想比では10.6%増だった。どちらも市場予想との差を表す数字ではない。アドバンテストの通期上方修正率14.3%も、7月時点の会社予想に対する修正幅だ。

レーザーテックの決算発表は10月30日15時45分で、東京市場の現物取引終了後だった。発表を受けた最初の取引日は11月2日で、米SOX安も同時に材料となる。発表前の市場予想と発表後の株価をそろえた比較は含めていないため、「好決算でも売られた企業」といった分類は控える。

2nm投資と基板増産|設備投資が利益を生むまでの時間差

TSMCの7〜9月期は2nmがウエハー売上の8%を占め、1〜9月累計の設備投資は406.4億ドルだった。先端プロセスの拡大は装置需要を支える。ただし、TSMCの粗利益率は前四半期比1.3ポイント低い66.4%で、会社は2nm立ち上げの負担を主因に挙げた。TSMCの四半期資料

東エレクのEUV向け塗布現像、成膜、エッチング装置には、2nmの量産拡大が導入機会となる。ただ、顧客が投資額を増やしても、装置の納入・検収まで終わらなければ売上は計上されない。需要拡大と、決算に利益が載る時期には間がある。製品・工程の説明

イビデンはAI GPU向け基板を生産する大野事業場Cell8を2027年度から、AI ASIC向けの河間事業場Cell6を2029年度から順次稼働させる予定だ。Cell6への追加投資1,500億円が売上を生むのは先だ。2027年度の売上・費用には、先に立ち上がるCell8の稼働と歩留まりが影響する。イビデンの説明資料(13ページ)

半導体6社の成長リスク|増益計画を崩す要因は?

企業開示・計算に基づく前提や実績下振れにつながる要因
アドバンテスト下期利益率50.1%、為替150円/ドルを想定販売の鈍化、研究開発費などの増加、円高
東京エレクトロン下期利益率は前年25.5%→今期予想32.6%(計算値)検収延期、採算の低い装置への販売構成の偏り
ディスコ10〜12月の利益率43.8%(計算値)、為替151円/ドルを想定装置の検収遅れ、顧客の稼働低下によるツール需要の減少
SCREEN上期の営業キャッシュフローは19億円の流出在庫の販売遅れと代金回収の長期化
イビデン下期利益率24.1%(計算値)、電子事業が増益を担う基板の歩留まり悪化、円高、他事業の減益拡大
レーザーテック装置減収に対しサービスは増収、通期予想は据え置き装置の売上計上が翌期へずれ、通期利益が減ること

日銀は10月30日に政策金利1.25%を維持し、ETF売却ペースの拡大を2027年1月から実施すると決めた。円高が進むと、海外需要が保たれても円換算利益は減る。企業の増収とは別に、為替が増益幅を縮めるリスクがある。日銀の決定文

11〜12月の半導体株を動かす主要イベント

2026年11月1日時点の公表予定。日付は日本時間を基本とし、米国の決算は現地日付も併記した。

日本時間の日付イベント・公表資料国内半導体株への注目点
11月4日(米国3日引け後)AMDの7〜9月期決算AI向けGPU・サーバーCPUの需要と次期売上見通し
11月5日(米国4日引け後)Qualcommの四半期・通期決算スマホ向け半導体需要とAI以外の回復度合い
11月10日TSMCの10月売上高先端半導体の需要が10〜12月期も伸びるか
11月18日(米国17日)NVIDIAの2027年1月期第3四半期決算・説明会次期売上・GPU出荷見通し。国内の検査・加工需要への波及
12月1日WSTS秋季予測2027年の成長がメモリー以外へ広がるか
12月9〜10日(米国8〜9日)米FOMC政策金利見通しと、成長株の評価・ドル円への影響
12月10日TSMCの11月売上高10月の増減が一時的か、四半期を通じた動きか
12月17〜18日日銀金融政策決定会合利上げ判断と円相場、海外売上の円換算利益

各社の事業構成から考えると、NVIDIAがGPUの増産と次期売上の拡大を示す場合は、アドバンテストの検査需要とディスコの加工需要を支える。顧客のAI投資縮小で見通しを引き下げる場合は、装置導入や工場稼働にも減速リスクが及ぶ。供給制約で出荷が遅れる場合とは分けて読む。

東エレクとSCREENには、TSMCなど製造側の設備投資が装置の発注・検収に進むかが関わる。12月10日のTSMC月次は、顧客工場の売上が伸び続けているかを示す。ディスコの次の個別売上高・出荷額速報は2027年1月7日の予定だ。ディスコのIRカレンダー

増益率の差は、AI需要の強弱だけでなく、売れる製品の構成と売上計上の時期から生まれている。アドバンテストはテスタ販売、ディスコは高付加価値製品、イビデンは基板工場の稼働安定が利益を伸ばした。一方、レーザーテックはサービスの伸びより装置売上の減少が大きく、受注の強さと四半期決算の増益は分けて考える内容だった。

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出典