利益が続くと、持つ量まで増やしたくなる
値上がりした資産で利益が出ると、自分には相場を読む力があると感じる場合があります。その確信から借入を増やすと、以前より大きな損失を引き受けることもあります。良かった取引の記憶と、次の取引で負う条件は同じではありません。
日本では1980年代後半に株式や土地の価格が上昇し、1990年以降の資産価格下落がその影響を表面化させました。1993年度の年次経済報告も、上昇が続くという期待と投機的な需要の関係を振り返っています。
借入を含む資産の独自の仮例
資産200万円を、自己資金100万円と借入100万円で持つ例を置きます。資産が240万円になれば、借入を引いた持分は140万円です。その後資産が180万円へ下がると、持分は80万円になります。利息や費用、税、追加担保などを除いた単純な設定です。
当初の資産価格からは10%の下落でも、当初の自己資金に対しては20%の減少です。実際のバブル期の取引ではなく、借入があると資産全体の変化以上に自分の持分が動くことを示します。以前の上昇で得た安心感は、この関係を変えません。
上昇の理由と、さらに上がる予想を分ける
会社の利益や賃料などが増えたために価格が上がる場合と、後でもっと高く売れるという期待で価格が上がる場合は異なります。実際には両方が混ざり、その場で比率を正確に知ることは困難です。
価格が上がったという結果だけで、最初の見積もりがすべて正しかったともいえません。市場全体の追い風と、自分が選んだ対象の変化を分けて読む必要があります。
後から簡単に見える転換点
今ならバブルと呼べる局面でも、当時その認識が一様だったわけではありません。後の下落を知っている状態と、当時公表されていた情報だけで判断する状態は違います。
過去を学ぶなら、上昇した価格だけでなく、どんな利益や資金の見積もりを置き、何が変われば見直す予定だったかを追います。自分の現在の取引でも、成功した理由と外れた部分を同じ条件で残すと、利益の記憶だけが確信へ変わることを減らせます。
出典
- 経済企画庁「平成5年度 年次経済報告」第2章、バブルの発生・崩壊と日本経済
- 経済企画庁「平成5年度 年次経済報告」むすび、資産価格と期待の変化
- MoneySense「Behavioural science and investing」
参考資料の確認日:2026年10月23日。