人が少ない時と、安く買える時を同じにしない
冬のうちに夏物の会社を買えばよい、と格言を暦の規則にすると、企業が今いくら稼ぎ、どんな期待で株価が付いているかが抜けます。麦わら帽子は冬に買えは、人が注目する前に準備する発想を表す相場格言で、冬という季節の購入を保証するものではありません。
誰も話題にしない理由が、単なる季節外れなのか、競争力の低下なのかで意味は違います。昔の高値より安いことも、現在の利益に対して割安なことと同じではありません。
また、夏に需要が増えることが広く知られていれば、その期待は冬の株価にも反映され得ます。自分が早く気付いたつもりでも、市場がまだ知らない材料とは限らない点が、この格言の落とし穴です。
夏に売上が増えても、利益が減る仮例
独自の仮想企業で、前年の夏の同じ期間に、売上1,000万円、売上原価600万円、固定的な費用300万円があり、営業利益100万円だったとします。売上から原価を引いた粗利益は400万円で、そこから固定費を差し引く設定です。
今年の同じ夏に売上が1,200万円へ増えても、材料費の上昇や販売条件の変化で原価が840万円となり、固定費が300万円のままなら、営業利益は60万円です。売上は20%増ですが、原価率が60%から70%へ上がり、利益は40%減少します。税金や営業外の損益を省いた例で、実在企業の予想ではありません。
売上が季節的に伸びることだけを理由に買うと、この費用の条件を落とします。実際の株価は事前の予想やほかの材料も受けるので、利益が減ったから株価も同じ率で下がる、と計算した例でもありません。
循環の谷と、事業の衰えを取り違えない
需要が毎年繰り返すように見えても、商品の人気、競合、生活習慣が変われば、以前と同じ売れ方は続かない場合があります。季節が戻ることと、その会社の顧客が戻ることを分けて確かめます。
会社資料では、前年の同じ期間との売上比較だけでなく、数量と単価、粗利益率、在庫、費用の説明を読みます。決算期が異なる会社や、夏の何か月を切り出したかが違う数字を、そのまま並べると比較が崩れます。
不人気だからと買い増す行動にも、別の根拠が要ります。需要の回復を示す情報がないまま、さらに安くなったことだけで数量を増やすと、間違った仮説へ使う資金も増えてしまいます。
早く買うほど、待つ条件を具体的にする
先回りには、材料が確認できるまで資金を置く時間も伴います。すぐ使うお金なら、想定より回復が遅れた時に保有を続けにくくなります。早く買ったこと自体を成果とせず、どの発表や実績を待つかを決めます。
検討時には、季節で変わる需要、利益へ残る条件、株価に含まれる期待、見込みが違った時の判断を分けて記録します。少し後から確認して買うことにも、買い逃す可能性と未確認のリスクを減らす面の両方があります。格言は先回りの義務ではなく、人気が出る前から調べるきっかけとして使います。