魔法という呼び名より、残高に掛かる率を読む
平均の収益率はゼロだから、二年間では元の金額に戻るはずだと思うと、期間ごとに計算の土台が変わることを見落とします。複利を投資判断へ使う時は、良い方向への増加だけでなく、この掛け算の性質も押さえる必要があります。
複利は、得た利息や運用収益を残し、それも含む額を次の運用の土台にする仕組みです。一定の正の利率が続く場合には利益が積み重なりますが、価格が変動する投資では、マイナスの収益も残った資産へ作用します。
「複利の魔法」は増え方を印象付ける呼び方で、正式な市場予測の理論名や、特別な商品の名称ではありません。理解しただけで買い時が分かる言葉でもありません。
プラスとマイナスが同じ率でも、損失になる例
独自の仮例で、最初に50万円の資産を持ち、1年目は30%上昇し、2年目は30%下落したとします。配当、税金、費用、追加の入出金はありません。実在の商品の運用実績ではありません。
1年目の残高は50万円×1.3=65万円です。2年目は65万円に対して30%下がるので、65万円×0.7=45万5,000円になります。最初の50万円より4万5,000円少なく、二年間の損益は9%のマイナスです。
二つの年率を足して二で割れば0%ですが、この算術平均をそのまま二年間の運用率として使うことはできません。実際の残高は各年の倍率を掛けた結果です。損益の合計を見る時は、何を分母にした率なのかまで読む必要があります。
利率が一定の試算と、投資成績の読み方を分ける
同じ利率が続く試算では、最初の元本に「1+利率」を年数分掛けます。利率は小数で表すので、たとえば3%なら0.03です。これは一定条件の計算方法で、その率が毎年達成されることを示す根拠ではありません。
投資成績の平均という表示を見る場合は、単純な算術平均なのか、実際の残高の増減を年率へ換算したものなのかを確かめます。分配金を含むか、費用を引く前か後かでも数字は変わります。
途中の積立や引出しがあれば、その時期も関わります。口座の残高が増えた割合だけでは、自分が追加した資金と運用による利益を区別できないため、入出金の履歴も合わせて読みます。
複利を生かす判断にも、損失への備えがある
収益を運用に残すことには、将来の収益の土台を保つ意味があります。一方、損失を大きく受ければ、その後に運用できる額も小さくなります。高い将来額だけを見て、価格変動の負担を忘れないようにします。
保有する資産の内容、費用、使う時期、生活に必要な現金をそろえた上で、複利の計算を検討に使います。運用を続けるかどうかも、投資先と資金の用途によって判断が変わります。どの商品でも何年でも持てば利益になるとは言えません。