まず結論
通常の減価償却では、設備の取得費を耐用年数などに応じて複数年に分けます。即時償却は、特別な税制の対象になる設備などについて、その取得価額を取得して事業に使い始めた年に全額費用化する考え方です。
たとえば600万円の設備を6年で償却するなら、単純化した通常処理では年間100万円ずつ費用になります。即時償却なら、要件を満たす場合に限り、初年度に600万円を費用として扱います。
通常の減価償却との違い
| 通常の減価償却 | 即時償却 | |
|---|---|---|
| 費用計上の時期 | 複数年に分ける | 取得・供用した年にまとめる |
| 初年度の利益 | 費用分だけ下がる | 下がり幅が大きくなりやすい |
| 翌年以降 | 減価償却費が続く | 対象資産の費用が残りにくい |
| 適用 | 原則的な処理 | 特別な制度の要件が必要 |
即時償却は、税務上の費用計上の時期を前倒しする制度です。設備代が割り引かれるわけでも、購入代金が戻るわけでもありません。
どんな場合に使われるか
代表例の一つが、一定の中小企業者等を対象にした中小企業経営強化税制です。認定を受けた計画に記載された新品の設備など、制度上の対象資産を事業に使い、その他の条件を満たした場合に、特別償却または税額控除を選べる仕組みがあります。
制度ごとに対象者、対象設備、取得価額、取得期限、事前の認定や証明、申告書類が異なります。名前に「即時償却」と書かれていても、どの設備にも使える共通制度ではありません。
税金がどのくらい減るか
即時償却で600万円を費用化しても、税金が600万円減るわけではありません。課税所得が600万円分小さくなる効果を、税率やその年の利益、欠損金の状況などに応じて計算します。
その年に十分な利益がなければ、費用を前倒ししても税負担の軽減効果をすぐに使い切れないことがあります。税額控除を選べる制度では、即時償却との違いを比べる必要もあります。
投資家が見るポイント
即時償却を使った会社は、設備投資の年に利益が大きく下がり、翌年以降は減価償却費が小さくなることがあります。利益の落ち込みだけで業績悪化と判断せず、設備投資の金額、営業キャッシュフロー、投資後の売上や利益を追います。
反対に、即時償却で初年度の税負担を抑えていても、設備が利益を生まなければ投資の採算は改善しません。会計上の利益と現金の動きを分けて読むことが大切です。
まとめ
即時償却は、一定の要件を満たす設備投資の取得価額を、取得・供用した年にまとめて費用化する仕組みです。節税効果だけでなく、適用要件、翌年以降の費用減少、投資回収の見込みまで確認します。
出典
- 国税庁「パンフレット・手引(法人税関係)」内「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」(2026年4月1日以後の改正内容)
- 財務省「特集 令和8年度 税制改正(国税)等について」(2026年度改正の概要)