まず結論
この特例は、通常なら耐用年数に分けて減価償却する事業用資産について、一定の事業者が取得して事業に使い始めた年に、取得価額をまとめて必要経費や損金に算入できる制度です。
2026年4月1日以後に取得等をする資産は、一定の要件を満たせば、1件あたりの取得価額が40万円未満のものが対象です。2026年3月31日までの取得等は、原則として30万円未満の基準で判定します。
対象になる人と資産
対象は、青色申告を行う一定の中小事業者や中小企業者等です。単に価格が安いだけで使えるわけではなく、事業のために使う減価償却資産であること、適用対象者に該当すること、申告上の手続きを行うことなどが必要です。
対象になり得る資産には、パソコン、カメラ、事務機器、機械、ソフトウェアなどがあります。貸付けのために使う資産は原則として対象外ですが、主要な事業として行う貸付けなどは扱いが異なります。
個人事業主と法人の違い
制度の基本的な考え方は共通していますが、対象者、費用の呼び方、私用分の扱い、申告手続きに違いがあります。
| 個人事業主 | 法人 | |
|---|---|---|
| 主な対象者 | 一定の青色申告者である中小事業者 | 青色申告を行う一定の中小企業者等 |
| 費用の呼び方 | 必要経費 | 損金 |
| 私用との共用 | 業務に必要な部分を区分し、その部分を必要経費にする | 会社の事業用資産としての利用実態や社内処理が必要 |
| 2026年4月1日以後の法人要件 | — | 常時使用する従業員400人超の法人は対象外となる見直しあり |
| 申告時の対応 | 青色申告決算書などに記載 | 法人税の申告書と明細書などで処理 |
個人事業主がiPhone Duoを仕事と私用の両方で使う場合は、業務時間や利用記録など、合理的に区分できる根拠が必要です。法人でも、役員や従業員の私的利用が混ざる場合は、会社の資産としての利用ルールや税務上の扱いが別途問題になります。
具体例
Apple公式の掲載価格では、iPhone Duoは税込36万4,800円からです(2026年9月20日確認)。2026年4月1日以後に、対象となる青色申告者がこの端末を事業専用で購入して使い始め、ほかの条件も満たしたとします。税込経理で取得価額を判定する場合でも40万円未満に収まるため、少額減価償却資産の特例の対象になり得ます。
ただし、個人事業主が仕事と私用の両方で使うなら、業務に直接必要な部分を明確に区分できる金額が必要経費の対象です。端末が40万円未満でも、私用分まで事業経費にできるわけではありません。
ただし、iPhone Duoを複数台購入する場合も含め、同じ年・事業年度にこの特例で処理する資産の取得価額合計には、原則300万円の上限があります。300万円を超える部分まで無制限にその年の費用にできる制度ではありません。法人の1年未満の事業年度では、上限の扱いが変わる場合があります。
似た制度との違い
| 取得価額の目安 | 主な処理のイメージ |
|---|---|
| 10万円未満 | 一定の要件の下で、その年の必要経費にできる一般的な扱い |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年で費用化する選択肢がある |
| 20万円以上40万円未満 | この特例の対象になり得るが、要件と上限がある |
| 40万円以上 | 原則として通常の減価償却や別の制度を検討 |
上の区分は理解のための整理です。実際には、取得日、青色申告の状況、資産の用途、経理方式、他制度の適用状況によって結論が変わります。
注意点
- この特例は税額を直接40万円減らす制度ではなく、課税所得を計算する際の費用を前倒しする制度です。
- 利益が少ない年は、費用を増やしても税負担の軽減効果を十分に使えないことがあります。
- 取得価額の判定では、税込経理か税抜経理かによって消費税の扱いが変わります。
- 一括償却資産や他の特別償却・税額控除との重複適用ができない場合があります。
- 法人は確定申告書等への明細書添付など、個人事業主も青色申告決算書への記載など、手続きが必要です。
まとめ
少額減価償却資産の特例は、一定の青色申告者や中小企業者等が、比較的少額の事業用資産を取得年・事業年度にまとめて費用化できる制度です。2026年4月1日以後の取得等では40万円未満が基準になりましたが、年間300万円の上限や申告要件があります。購入前に、取得日と対象者、用途、申告方法を一緒に確認することが欠かせません。
出典
- 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」(2026年4月1日現在法令等)
- 国税庁「No.2210 必要経費の知識」(家事関連費と業務分の区分)
- 国税庁「パンフレット・手引(法人税関係)」内「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」(2026年4月1日以後の改正内容)
- 国税庁「適用額明細書の記載の手引(令和8年4月1日以後終了事業年度分)」(法人の申告書類)
- Apple「iPhone Duoを購入」(価格・製品情報、2026年9月20日確認)