記事の図解

売上は増えたが、5,646億円の最終赤字

2026年3月期の売上高は2兆7,087億500万円で、前期比3.9%増えました。

一方、営業損益は5,189億7,800万円の赤字。税引前損益は4,962億1,400万円の赤字、親会社の所有者に帰属する当期損益は5,646億2,400万円の赤字です。

項目2026年3月期前期
売上高2兆7,087億円2兆6,063億円
営業損益▲5,190億円+1,282億円
税引前損益▲4,962億円+1,246億円
最終損益▲5,646億円+847億円

売上高は増収でした。今回の赤字は、売上減少ではなく資産価値の大幅な見直しが主因です。

減損損失は6,321億円

ニデックは2026年3月期に、非金融資産の減損損失6,321億3,500万円を計上しました。

従来は追加減損の対象資産として約2,500億円規模を示していましたが、最終的な減損額はそれを大きく上回りました。

製品グループ別では、

  • 車載:約2,311億円
  • 家電・商業・産業用:約3,351億円

です。

両事業だけで約5,662億円となり、減損全体の約9割を占めます。

車載は営業赤字2,505億円

車載事業では2,310億8,500万円の減損を計上し、営業損益は2,505億3,600万円の赤字となりました。

ニデックは車載事業で、不採算機種の受注見直しや固定費削減、組織再編を進めています。

EV関連事業では需要や競争環境が当初想定から変化しており、今回の減損は過去の投資や資産価値を大きく見直した結果です。

家電・商業・産業用でも3,351億円の減損

家電・商業・産業用では3,351億3,900万円の減損損失を計上しました。

営業損益は2,511億2,400万円の赤字です。

一方、この事業ではデータセンター向け非常用発電機やBESSなど成長分野もあります。

減損後の資産から生む利益と、事業の営業キャッシュ・フローが回復しているかを見ます。

会計不正への対応費用も305億円

ニデックは、不適切会計を巡る第三者委員会や外部専門家の調査、決算対応、追加監査報酬などとして305億2,200万円の特別調査費用等を販管費に計上しました。

第三者委員会は、グループ内の複数拠点で、売上の早期計上、引当金の過少計上、棚卸資産の過大計上、固定資産の減損回避、コストの資産計上などが行われていたとしています。

決算短信では、会計監査人に不正確・誤解を招く情報を提供したり、関連文書を隠したり、改ざんされた記録を提供した事例も記載されています。

監査法人は「意見不表明」

今回の決算で赤字額と並んで重要なのが監査意見です。

PwC Japanは、2026年3月期の連結財務諸表・財務諸表について「意見不表明」としました。

意見不表明は、監査法人が財務諸表について適正かどうかの監査意見を表明するための十分な証拠を得られなかった場合などに出されます。

ニデック自身も決算短信で、未発見の虚偽表示が財務諸表に重要かつ広範な影響を及ぼす可能性が残ると説明しています。

そのため、投資家にとっては「5,646億円赤字で悪材料が出尽くした」と単純に判断しにくい状態です。

親会社所有者帰属持分比率は42.5%→25.6%

巨額赤字によって財務にも大きな変化が出ています。

親会社所有者帰属持分比率は、前期末の42.5%から25.6%へ低下しました。

親会社所有者帰属持分は1兆2,398億円から7,942億円へ減少しています。

一方、期末の現金及び現金同等物は8,522億円で、前期末の2,463億円から増えています。

赤字額だけでなく、資本構成と資金調達の変化も今後確認したいところです。

2026年3月期は無配

2026年3月期は中間・期末とも無配で、年間配当は0円です。

2027年3月期の配当予想についても現時点では未定としています。

業績回復だけでなく、財務体質とガバナンスの正常化が確認できるまで、株主還元の見通しにも不透明さが残ります。

2027年3月期は1,000億円黒字を予想

ニデックは2027年3月期について、

  • 売上高:2兆8,000億円
  • 営業利益:2,000億円
  • 税引前利益:1,800億円
  • 最終利益:1,000億円

を予想しています。

前期の巨額減損が一巡する前提で、最終損益は5,646億円の赤字から1,000億円の黒字へ転換する計画です。

ただし、黒字転換の有無だけでは足りません。減損後の車載・家電事業が本業でどれだけ利益を出せるかが問われます。

株価で見るべきは「赤字額」だけではない

今回の5,646億円という最終赤字は非常に大きな数字ですが、その大部分は減損によるものです。

株価を見るうえでは、

  • 6,321億円の減損で資産価値の見直しが十分進んだか
  • 追加減損が残っていないか
  • 監査法人の意見不表明がいつ解消されるか
  • 内部統制改善が進むか
  • 車載事業が黒字化できるか
  • 2027年3月期の営業利益2,000億円を達成できるか
  • 配当を再開できるか

が焦点です。

特に監査意見の正常化は、通常の業績回復とは別の論点です。

信頼回復と収益回復は別の課題

次期の黒字予想を評価するには、減損後の事業利益とキャッシュフローが計画に沿うかが焦点です。同時に、監査意見と内部統制の改善を追う必要があります。利益が戻っても、それだけで財務情報への懸念が解消されるわけではありません。

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出典