1. カスタマーハラスメント対策が義務化
10月から、カスタマーハラスメントへの対策が事業主の義務になります。
企業には、カスハラを許容しない方針の明確化、相談窓口の整備、発生時の迅速な対応、再発防止などが求められます。
店舗や窓口だけでなく、電話やSNSなどを通じた著しい迷惑行為も問題になり得ます。
小売、外食、交通、宿泊、金融、コールセンターなど、顧客と直接接する従業員が多い業種では、現場対応だけでなく会社としての仕組みづくりが必要になります。
2. 「106万円の壁」の賃金要件を撤廃
短時間労働者の厚生年金・健康保険加入要件の一つだった「月額賃金8.8万円以上」が10月1日に撤廃されました。
月額8.8万円は年収換算で約106万円に相当するため、「106万円の壁」と呼ばれてきました。
今後、対象事業所では年収106万円を超えるかではなく、週の所定労働時間が20時間以上かどうかが加入判断の中心になります。雇用期間や学生に関する要件なども残ります。
ただし、すべてのパート・アルバイトが10月1日から社会保険に加入するわけではありません。
企業規模要件などは残っており、今後段階的に対象が広がります。
企業規模要件は段階的に撤廃
短時間労働者への社会保険適用に関する企業規模要件は、今後段階的に縮小されます。
| 時期 | 対象となる企業規模 |
|---|---|
| 現在 | 51人以上 |
| 2027年10月 | 36人以上 |
| 2029年10月 | 21人以上 |
| 2032年10月 | 11人以上 |
| 2035年10月 | 企業規模要件を撤廃 |
表の人数は企業の厚生年金被保険者数を基準とします。「106万円の壁廃止」と「企業規模要件の撤廃」は別々に進むため、勤務先の適用状況も加入判断に関わります。
3. 求職者へのセクハラ対策も義務化
就職活動中の学生や求職者などに対するセクシュアルハラスメントについても、企業に防止措置が求められます。
採用活動中の面談、OB・OG訪問、インターンシップなど、雇用契約を結ぶ前の段階でも企業側の対応が必要になります。
採用担当者だけでなく、採用活動に関わる従業員への周知や相談体制の整備も企業の人事管理上の課題になります。
4. 同一労働同一賃金ガイドラインを改正
10月から同一労働同一賃金ガイドラインも改正されます。
賞与、退職手当、住宅手当、家族手当、病気休職、夏季・冬季休暇などについて、正社員と非正規雇用労働者の待遇差を考える際の内容が追加されます。
企業には、待遇差がある場合にその目的や性質を説明できるよう、賃金・福利厚生制度を整理する必要が生じます。
5. 最低賃金も全国で順次引き上げ
2026年度の地域別最低賃金も、10月1日以降、各都道府県で順次改定されます。
引き上げ額は地域によって異なり、全国加重平均は1,177円となります。
最低賃金上昇と社会保険適用の拡大が同時に進むため、パート・アルバイトを多く雇う企業では人件費への影響が重なります。
6. 在留資格の変更・更新、永住許可の手数料を大幅改定
10月1日から、在留資格の変更許可、在留期間の更新許可、永住許可にかかる手数料が改定されました。
9月30日までに受け付けた申請は、許可が10月1日以降になっても改定前の手数料が適用されます。このため値上げ直前には駆け込み申請が相次ぎ、9月29日の大阪出入国在留管理局では受付開始時点で約350人が並び、午後2時時点でも待ち時間が4時間半に達したと共同通信が報じています。
窓口申請では、在留資格変更・在留期間更新の手数料が従来の一律6,000円から、許可される在留期間に応じて1万円〜7万5,000円へ変更されます。5年以上では7万5,000円となり、従来の12.5倍です。
永住許可は1万円から20万円へ引き上げられ、従来の20倍になります。
オンライン申請は窓口より低い料金設定です。在留資格変更・更新では、3月以下1万円から5年以上6万5,000円までの7段階となり、別途決済手数料が必要です。
オンライン申請の支払方法も変わります。10月1日以降のオンライン申請は、従来の収入印紙ではなく、コンビニ決済または銀行決済で納付します。クレジットカードやQRコード決済には対応していません。
窓口申請は引き続き収入印紙で納付します。
なぜ手数料を引き上げる?
出入国在留管理庁は、審査の実費に加え、出入国・在留管理に必要な費用、諸外国の同種手数料、今後の物価上昇などを総合的に考慮したと説明しています。
増収分は、出入国在留管理行政のDX、難民などの保護・支援、不法滞在者対策、外国人向けの情報発信・相談体制の強化などに充てる方針です。
経済的困難など一定の要件を満たす場合には減額・免除措置も設けられています。減額対象者は、在留資格変更・更新では1万円、永住許可では2万円まで減額される場合があります。
「106万円の壁」と最低賃金はつながっている
今回、106万円の壁を構成していた賃金要件が撤廃された背景には、最低賃金の上昇があります。
全国の最低賃金が一定水準を超え、週20時間働けば月額8.8万円という基準を事実上上回る環境になったためです。
今後は「年収を106万円未満に抑える」という働き方より、週20時間という所定労働時間の基準が社会保険加入の主な判断軸になります。
子育て世代向けの国民年金保険料免除も開始
10月からは、1歳未満の子を育てる国民年金第1号被保険者を対象とした保険料免除制度も始まります。
対象期間は保険料を納付したものとして扱われ、将来の基礎年金額にも反映されます。
自営業者やフリーランスなど、第1号被保険者の子育て支援を広げる制度です。
企業への影響
企業側では、複数の制度変更が同時に始まります。
特に、
- 社会保険料負担
- 最低賃金上昇
- カスハラ対応体制
- 非正規社員の待遇制度
- 採用時のハラスメント対策
への対応が必要です。
短時間労働者を多く雇用する企業ほど、制度変更によるコストや人員配置への影響が大きくなりやすいと考えられます。
日本株では小売・外食・サービスに注目
投資家の視点では、小売、外食、介護、物流、宿泊、サービスなど、パート・アルバイト比率が高い企業への影響を確認したいところです。
最低賃金上昇と社会保険加入拡大は人件費を押し上げる可能性があります。
一方、これまで社会保険加入を避けるため勤務時間を抑えていた人が就業時間を増やせば、人手不足の緩和につながる可能性もあります。
企業を見る際は、
- 人件費率
- パート・アルバイト比率
- 客単価
- 価格改定
- セルフレジ・省人化設備
- DX投資
- 採用・離職率
などを合わせて見る必要があります。
対応の優先順位
企業は適用日と対象範囲を制度ごとに整理し、労務管理と人件費の見直しを進める場面です。働く側も、社会保険の加入条件と税・扶養の基準を混同せず、勤務先の案内や各制度の公式説明に照らす必要があります。