ダブルケアとは
ダブルケアは、子育て期に親や親族の介護が始まり、二つのケア責任を同時に担う状態を指す言葉です。介護保険の要介護認定を受けた後だけが対象という意味ではありません。買い物の代行、入退院の手続き、認知症への対応、離れて暮らす親への連絡なども、家族の負担になります。
子どもが未就学児とは限らず、受験期や不登校、障害児・医療的ケア児の子育てと介護が重なるケースもあります。家庭ごとにケアの内容が違うため、「自分は典型例ではない」と相談を遅らせないことが大切です。
何がこれほど苦しいのか
| 負担 | 起こりやすいこと |
|---|---|
| 時間 | 保育園の送迎と親の通院が重なる、急な呼び出しが続く |
| 仕事 | 遅刻・早退・欠勤が増え、働き方や収入に影響する |
| 家計 | 介護サービス、交通、日用品、子育て費用が同時にかかる |
| 調整 | きょうだい、配偶者、医療・介護職、学校との連絡が増える |
| 心身 | 睡眠不足、罪悪感、孤立感、判断疲れが蓄積する |
厄介なのは、子どもと親のどちらも待ってくれないことです。介護の予定を優先すれば子どもに申し訳なく感じ、子どもを優先すれば親を放置しているように感じる。こうした罪悪感が、必要な外部サービスの利用までためらわせることがあります。
最初に相談する2つの窓口
親の介護は地域包括支援センター
親が住む地域を担当する地域包括支援センターは、高齢者の介護・医療・生活に関する総合相談窓口です。要介護認定の申請、利用できる介護サービス、ケアマネジャーへの接続などを相談できます。遠距離介護では、自分の住所地ではなく親の住所地を担当するセンターを探します。
子育てはこども家庭センターや市区町村
こども家庭センターは、妊産婦、子育て家庭、子どもの相談を受け、必要な支援を調整する市区町村の窓口です。一時預かり、病児保育、子育て短期支援、ファミリー・サポート・センターなど、実施しているサービスを確認します。
名称、対象年齢、料金、利用前登録、空き状況は自治体によって異なります。困った当日に初めて探すと間に合わないこともあるため、平常時に登録だけ済ませておくと動きやすくなります。
仕事と介護を両立する制度
| 制度 | 主な内容 |
|---|---|
| 介護休業 | 対象家族1人につき3回、通算93日まで |
| 介護休暇 | 対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日。原則、時間単位でも取得可能 |
| 介護休業給付 | 雇用保険の要件を満たす介護休業について支給対象となる |
| 両立支援制度 | 短時間勤務、時差出勤、残業の制限・免除など |
介護休業は、93日間ずっと自分だけで介護するための制度ではありません。厚生労働省も、介護サービスを手配し、家族の役割分担を決め、仕事と両立できる体制を作る準備期間として活用する考え方を示しています。
就業規則に独自の上乗せ制度がある会社もあります。親の介護が深刻になってからではなく、「通院付き添いが増えた」段階で人事・労務担当へ相談すると、使える選択肢を残しやすくなります。
費用負担を抑える制度
- 介護保険サービス:要介護・要支援認定を受け、訪問介護、通所介護、短期入所などを利用する
- 高額介護サービス費:対象となる月々の自己負担が所得区分ごとの上限を超えた場合、申請により超過分が支給される
- 幼児教育・保育の無償化:年齢や保育の必要性などの要件を満たせば、一時預かりや病児保育などが対象になる場合がある
- 自治体独自の助成:家事援助、紙おむつ、移送、子どもの預かりなどが用意されている場合がある
介護保険の対象外となる食費、居住費、交通費、保険適用外サービスなどは別にかかります。高額介護サービス費も、すべての支出を上限内にする制度ではありません。領収書と利用明細を介護・子育てで分け、毎月の固定費と突発費を見えるようにします。
家族で決めておきたい分担
「手が空いた人がやる」では、近くに住む一人へ負担が集中しがちです。実際に集まれない家族も、費用負担、電話連絡、書類、予約、情報共有なら分担できます。
まず、介護と子育ての作業を書き出し、担当者と代替手段を決めます。緊急連絡先、薬、保険証、学校・保育施設、ケアマネジャーの連絡先を家族で共有しておくと、主担当者が倒れたときにも対応できます。
限界になる前のサイン
眠れない、涙が止まらない、子どもや親へ強く当たる、仕事でミスが続く、食事が取れないといった状態は、「もう少し頑張る」で済ませる段階ではありません。地域包括支援センター、こども家庭センター、かかりつけ医などへ状況をそのまま伝えます。
緊急性が高い場合や安全を保てない場合は、通常の予約を待たず、自治体の緊急相談や医療機関につないでください。ケアする人の休息も、家族全体の安全を守るために必要です。
まとめ
ダブルケアでは、介護・子育て・仕事の問題が同時に起こります。一つの制度だけで解決しようとせず、親の地域包括支援センター、子育て側のこども家庭センター、勤務先の人事・労務担当へ並行して相談します。
早い段階で外部サービスと家族の分担を組み立てるほど、離職や心身の限界を避けやすくなります。制度は自治体、勤務先、家族の状態によって異なるため、利用前に各窓口で対象条件と手続きを確認してください。
確認日: 2026-08-11
出典
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム―地域包括支援センターについて」
- 厚生労働省「介護休業」
- 厚生労働省「介護休暇」
- こども家庭庁「こども家庭センターの概要・状況」
- こども家庭庁「よくわかる『子ども・子育て支援新制度』」
- 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」