まず結論
3つの違いは、次の一言で整理できます。
| 用語 | 正体 | 役割 |
|---|---|---|
| SOR | 注文執行の仕組み | 東証やPTSなどを比較して注文先を選ぶ |
| 東証 | 金融商品取引所の市場 | 多くの上場株式が売買される中心的な取引所市場 |
| PTS | 私設取引システム | 取引所とは別のシステムで注文を付け合わせる |
つまり、SORとPTSを比べるときは「案内役」と「売買する場所」を比べています。東証とPTSを比べるときは、どちらの市場で注文を付け合わせるかを比べています。
注文はどこへ流れるのか
東証を指定する通常注文なら、証券会社を通じて東証の板に注文が出ます。PTSの価格が有利に見えても、自動的にPTSへ移るわけではありません。
PTSを注文先に指定する注文では、対応するPTSの板で約定を目指します。夜間取引に対応するPTSもありますが、取引時間、対象銘柄、注文方法、未約定注文の扱いはサービスごとに違います。
SOR注文では、証券会社のシステムが接続先の気配価格や数量などを比較し、定められたルールに沿って東証やPTSなどへ回送します。SOR自体に株を売買する板があるわけではありません。
具体例:SORで一部がPTS、一部が東証になる場合
買い注文237株に対し、東証の売り気配が1,001円、PTSの売り気配が1,000.5円だったとします。PTSに80株しかなければ、SORの処理によって80株がPTS、残り157株が東証などに分かれることがあります。
この例で残り157株も1,001円で約定した場合、平均約定価格は次のとおりです。
(1,000.5円×80株+1,001円×157株)÷237株=約1,000.83円
表示されたPTSの価格だけでなく、全約定の平均価格を見ると、注文全体がどの条件で成立したか分かります。実際には気配が消えたり価格が動いたりするため、同じ結果になるとは限りません。
東証とPTS、取引の違い
東証の内国株は、2026年8月27日時点で前場9:00~11:30、後場12:30~15:30が立会時間です。東証では個別競争売買が行われ、寄り付きや引けでは板寄せ、それ以外では価格優先・時間優先を基本に約定します。
PTSは取引所ではなく、証券会社などが運営する私設取引システムです。東証の立会時間外に取引できる場合がある反面、PTSごとに取引時間やルールが異なります。銘柄や時間帯によって板の数量が少なく、希望数量の一部しか約定しないこともあります。
ここで混同しやすい点
- SORは市場名ではない。約定履歴にPTSと表示された場合は、SORがPTSを執行先に選んだという意味
- SORを有効にしても、すべての注文がPTSへ回るわけではない
- PTSの夜間価格が、翌営業日の東証始値になるわけではない
- 「最良執行」は結果として常に一番よい価格になる保証ではなく、証券会社が定めた方針・方法に従って執行する義務を指す
特に最後の点は、SORを「必ず得する機能」と誤解しやすい理由です。判定後に気配が消えることもあり、価格だけでなく約定可能性や注文処理の速さも結果に影響します。
注文画面で見る項目
発注前は、次の順で見ると経路の勘違いを減らせます。
- 注文先が東証指定、PTS指定、SORのどれか
- SORの比較対象にどのPTSが含まれるか
- 現在の取引時間と、未約定注文の有効期限
- 指値・成行、分割約定、残数量の処理
- 約定後の市場名、約定数量、平均約定価格
SORを使うか東証を指定するかは、売買判断そのものではなく注文の執行経路の選択です。どの経路でも株価変動による元本割れの可能性は残ります。自分の証券会社の最良執行方針とSOR説明書が、最終的な確認先になります。
まとめ
東証は取引所市場、PTSは取引所外の私設取引システム、SORは複数の注文先から執行先を選ぶ仕組みです。3つを同じ「市場」と考えないことが、最初のつまずきを避けるポイントになります。
価格差だけでなく、板の数量、取引時間、注文の有効期限、約定履歴まで見ると、注文画面の表示と実際の取引結果を結び付けやすくなります。
出典
- 日本取引所グループ「内国株の売買制度」
- 日本取引所グループ「売買立会時(立会時間)」
- 日本取引所グループ「売買成立の方法」
- 日本証券業協会「PTS」
- 金融庁「事務局説明資料(最良執行方針等とSORとの関係等)」
- 日本証券業協会「最良執行義務」