暗号資産課税「現在 → 新制度」 税率だけでなく、対象資産・損失繰越・開始日も変わる 現在(2026年8月) 原則:雑所得 課税:給与などと合算 税率:所得次第で約55%まで上昇 損失の3年繰越:原則なし 新制度 対象:一定の「特定暗号資産」 課税:申告分離課税 税率:20%(国15%+地方5%) 一定の損失:翌年以後3年間繰越 いつから? 金融商品取引法等の暗号資産関連規定の施行年 → その翌年1月1日から 2026年8月15日時点:本格施行日はまだ未確定 kabutrack.com

まず結論

先に結論を整理すると、2026年8月15日時点では、暗号資産の利益はまだ原則として雑所得・総合課税です。

ビットコインなどを売却・交換・決済に利用して利益が確定した場合、現行制度では原則として給与所得など他の所得と合算して所得税を計算します。

一方、令和8年度税制改正では、一定の「特定暗号資産」の譲渡等について、

20%(所得税15%+個人住民税5%)の申告分離課税

とする制度が創設されました。

ここで重要なのは、これは単なる「検討案」の段階ではなく、税制側については2026年3月31日に成立した所得税法等の改正に盛り込まれていることです。

さらに、その前提となる金融商品取引法・資金決済法の改正も、

2026年7月15日成立 2026年7月23日公布

まで進んでいます。

ただし、ここからが重要です。

暗号資産の20%課税そのものは、まだ始まっていません。

税法では、20%分離課税の適用開始日を、

「金融商品取引法の改正法の施行日の属する年の翌年1月1日」

と定めています。

したがって、

  • 暗号資産関連規定が2026年中に施行 → 2027年1月1日から
  • 暗号資産関連規定が2027年中に施行 → 2028年1月1日から

という関係になります。

2026年8月15日時点では、その本格施行日がまだ確定していないため、

「暗号資産の税金は2027年から20%になる」と断定するのは正確ではありません。

現行制度(なぜ「最大55%」が出てくるのか)

現在、個人が暗号資産の取引によって得た利益は、原則として「雑所得」です。

国税庁も、ビットコインなどの暗号資産を売却・使用することによって生じる利益は、原則として雑所得として確定申告が必要だと案内しています。

現行制度のポイントは、

暗号資産だけで税率を決めない

ことです。

観点現行制度
所得区分雑所得(原則)
課税方式総合課税
税率所得税5〜45%+住民税など
他の所得との関係給与などと合算
損失繰越原則不可

所得税は累進課税なので、課税所得が高くなるほど税率も高くなります。

所得税の最高税率は45%。

これに住民税がおおむね10%加わるため、

一般的には「最大約55%」

と説明されます。

さらに所得税には2037年まで復興特別所得税が課されるため、厳密な実効負担は条件によって55%をわずかに上回る場合があります。

ただし、

暗号資産利益の全額に55%がかかるわけではありません。

所得税は超過累進税率なので、所得の各階層に対応した税率を順番に適用します。

たとえば暗号資産で100万円利益が出ても、

「100万円 × 55%」

と単純計算するわけではありません。

給与などを含めた課税所得全体から税額を計算するため、

同じ100万円の暗号資産利益でも、その人の給与・事業所得などによって追加税負担が変わる

のが現行制度です。

変更後は何が変わる?「55%→20%」の意味

新制度では、一定の条件を満たす「特定暗号資産」の譲渡等による所得を、他の所得から切り離して課税します。

財務省の令和8年度税制改正大綱では、

所得税15%+個人住民税5%=20%

と明記されています。

イメージは次の通りです。

特定暗号資産の税額 = 対象となる利益 × 20%

現行制度では、

給与などの所得 + 暗号資産利益 → 累進税率で計算

ですが、新制度では一定の取引について、

給与などの所得 → 通常どおり課税

特定暗号資産の利益 → 別枠で20%

という構造になります。

高所得者ほど、この違いは大きくなります。

ただし、「暗号資産なら何でも20%」ではありません。

すべての暗号資産が20%になるわけではない

今回の改正で最も重要なのが、

「特定暗号資産」

という条件です。

税法上の特定暗号資産とは、金融商品取引法上の金融商品取引業者登録簿に名称が登録されている暗号資産等を指します。

さらに20%分離課税は、居住者等が暗号資産取引業者に対して特定暗号資産を譲渡等した場合を対象とする仕組みです。

つまり、

「ビットコインだから自動的に20%」

という判定ではありません。

新制度開始後は、

  • どの暗号資産か
  • 登録簿上の対象になっているか
  • どの事業者を通じた取引か
  • どの種類の取引か

まで確認する必要があります。

海外取引所、個人間取引、DeFiなどがどこまで同じ課税区分になるかについても、取引形態ごとの確認が必要になります。

損失を3年間繰り越せるようになる

税率と同じくらい大きい変更が、損失の繰越控除です。

現在の個人の暗号資産取引では、雑所得で生じた損失を、翌年以降の暗号資産利益から控除する仕組みは原則ありません。

たとえば、

2026年:300万円損失 2027年:300万円利益

となっても、現行制度では原則として2026年の300万円の損失を2027年へ持ち越して相殺することはできません。

新制度では、特定暗号資産の譲渡等で生じた損失について、一定の条件を満たせば、

翌年以後3年間

の特定暗号資産に係る譲渡所得等から繰越控除できる仕組みが導入されます。

損失の扱いも大きく変わる 現行 今年 −300万円 翌年 +300万円 原則、前年損失を繰り越せない 新制度 今年 −300万円 翌年 +300万円 一定条件で3年間繰越可能 ※対象は特定暗号資産など制度上の条件を満たす取引

ただし、単に損失が出れば自動で3年間使えるわけではありません。

税制改正では、

「一定の要件の下で」

繰越控除を認めるとされています。

実際に利用するときは、毎年の確定申告や必要書類など、最終的な申告要件を確認する必要があります。

「いつからか」を現実的に読む

ここが今回の記事で最も重要なポイントです。

令和8年度税制改正では、20%分離課税について、

金融商品取引法の改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後

の譲渡等から適用すると定められています。

そして、税制の前提となる金融商品取引法等の改正法は、

  • 2026年4月10日:国会提出
  • 2026年7月15日:成立
  • 2026年7月23日:公布

まで進みました。

同法は原則として、

公布日から1年以内の政令で定める日

に施行されます。

つまり、本格的な施行期限は原則として2027年7月23日までです。

しかし、2026年8月15日時点では、暗号資産取引業など主要な制度についての施行日はまだ確定していません。

一部規定については2026年8月12日にすでに施行されていますが、これは主に無登録業への罰則強化や証券取引等監視委員会の犯則調査権限に関する部分です。

暗号資産の20%分離課税開始を意味するものではありません。

したがって、現在の整理は次の通りです。

金融商品取引法等の本格施行分離課税の開始
2026年中2027年1月1日
2027年中2028年1月1日

2026年6月1日を起点に2027年1月1日開始、とする説明には注意が必要です。

2026年6月1日に施行されたのは、令和7年に成立した別の資金決済法改正で、電子決済手段・暗号資産サービス仲介業などに関する制度です。

今回の暗号資産20%分離課税の適用開始日を決める「金融商品取引法等の改正法」は、2026年7月23日公布の令和8年法律第64号です。

ここは別の法律として分けて考える必要があります。

家計の確認ポイント(実務に効く)

  1. 2026年中の取引は現行制度を前提にする 2026年8月時点では分離課税は始まっていません。現在確定した利益については、原則として雑所得・総合課税として記録しておくのが基本です。
  2. 「20%になるから売却を待つ」と決めつけない 新制度の開始日、対象暗号資産、対象取引が確定する前に、税率だけを理由に売買時期を決めるのは危険です。価格変動による損失の方が税率差より大きくなることもあります。
  3. 取引履歴と取得価額を今から整理する 売却だけでなく、暗号資産同士の交換や商品・サービスの決済でも課税関係が発生する場合があります。税制変更後も取得価額の記録は重要です。
  4. 海外取引所・DeFiなどを国内取引所と同じ扱いだと思わない 新制度は「特定暗号資産」と「暗号資産取引業者」という条件を持っています。すべての取引形態が一律20%になるとは限りません。
  5. 損失繰越を使うなら確定申告要件を確認する 3年間の繰越控除が導入されても、申告をしなければ利用できないなどの要件が設定される可能性があります。

「20%」は20.315%になる?

財務省の令和8年度税制改正では、

所得税15%+個人住民税5%=20%

と表記されています。

一方、株式などの申告分離課税では、2037年まで復興特別所得税が加わるため、一般に20.315%と表記されます。

暗号資産についても所得税部分との関係で復興特別所得税の確認が必要になりますが、制度説明ではまず法令上示されている「20%」を基本として理解するのが分かりやすいです。

実際の申告時には、適用開始時点の国税庁資料や確定申告書の計算方法を確認してください。

まとめ

暗号資産の税制は、大きく変わることが決まっています。

現行は、

原則:雑所得 → 給与などと合算 → 累進課税 → 高所得では約55%まで上昇

という仕組みです。

新制度では一定の特定暗号資産について、

申告分離課税 → 20%(所得税15%+住民税5%) → 一定の損失を3年間繰越可能

という仕組みに変わります。

ただし、最も重要なのは開始日です。

金融商品取引法等の改正法は2026年7月15日に成立し、7月23日に公布されましたが、2026年8月15日時点では暗号資産関連制度の本格施行日はまだ決まっていません。

税制の適用開始は、

「金融商品取引法等の施行日の属する年の翌年1月1日」

です。

そのため、

2026年中に施行されれば2027年1月1日、 2027年中なら2028年1月1日

となります。

現時点では、

「2027年から暗号資産は20%になる」

と固定して覚えるのではなく、

「法律は成立済み。ただし開始年は金融商品取引法等の施行日待ち」

と理解するのが最も正確です。

そして、分離課税が始まるまでは現行制度での申告義務が続きます。

税率変更を期待して取引履歴の整理を後回しにせず、取得価額、売却、交換、決済の記録を残しておくことが、制度変更後にもそのまま役立ちます。

出典

  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱」
  • 財務省「所得税法等の一部を改正する法律案要綱」
  • 財務省「第221回国会における財務省関連法律」
  • 金融庁「第221回国会における金融庁関連法律案」
  • 衆議院「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」
  • 金融庁「令和8年金融商品取引法等改正(20日後施行)に係る政令の公布について」
  • 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について」
  • 国税庁「暗号資産の取引に係る収入がある方」

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