そもそも消費者物価指数(CPI)とは?
消費者物価指数(CPI)は、全国の世帯が買う財やサービスの価格変化を時系列で示す統計です。総務省統計局は家計の消費構造を一定とし、同じ買い物に必要な費用が物価によってどう変わるかを指数にしています。食品、家賃、衣料、電気代、通信料、医療、交通などが対象です。
なぜ「コア指標」が必要?
総合CPIには、天候で大きく動く生鮮食品や、原油価格・為替の影響を受けやすいエネルギーが含まれます。
さらに、消費税率の変更、教育無償化、ガソリンや電気・ガス代の負担緩和策など、政策によって一時的に物価指数が動くこともあります。
一時要因で総合CPIが振れても、幅広い品目の値上がりが続いているとは限りません。そこで値動きの大きい品目や制度要因を調整し、上昇の持続性や広がりを確かめるためにコア指標を使います。
日本で一般にいう「コアCPI」
日本で「コアCPI」と呼ばれることが多いのは、生鮮食品を除く総合指数です。
生鮮食品は天候や収穫量で価格が大きく変動するため、これを除くことで物価の基調を見やすくします。
総務省は、物価の基調を見る指標として次の系列を公表しています。
| 指標 | 主に除くもの |
|---|---|
| 総合CPI | なし |
| 生鮮食品を除く総合 | 生鮮食品 |
| 生鮮食品及びエネルギーを除く総合 | 生鮮食品、電気代、ガス代、灯油、ガソリンなど |
| 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合 | 酒類を除く食料、エネルギー |
「コアコアCPI」という呼び方は、資料や報道によって指している系列が異なることがあります。利用時は、何を除いた指数なのかを確認した方が正確です。
日本銀行の「コア指標」はもっと広い
日銀の「消費者物価のコア指標」は、生鮮食品を除いたCPIだけを指す言葉ではありません。特殊要因を除く指数のほか、品目ごとの価格変化の分布や上昇品目の割合も確認します。需給ギャップ、労働需給、賃金、予想物価上昇率などと照らし、基調的な物価上昇を判断するためです。
主な指標は次の通りです。
- 特殊要因を除いた消費者物価
- 刈込平均値
- 加重中央値
- 最頻値
- 上昇・下落品目比率
いずれも日本銀行調査統計局が試算・公表している指標です。
特殊要因を除いた消費者物価とは?
日本銀行は、総務省のCPIから制度変更などによる一時的な影響を除いた試算値を公表しています。
2026年9月時点で除外対象として示されているのは、主に次の要因です。
- 消費税率の変更
- 教育無償化政策
- 2026年4月の学校給食無償化政策
- 2021年の携帯電話通信料引き下げ
- 旅行支援策
- ガソリンや電気・ガス代などの負担緩和策
例えば政府の補助によって電気代が一時的に下がった場合、その影響を除くことで、民間の価格設定による物価の動きを見やすくします。
刈込平均値とは?
刈込平均値は、品目別の価格変化率を並べ、極端に上がった品目と極端に下がった品目を機械的に除いて計算する指標です。
日本銀行の現在の計算では、価格変動分布の上側10%、下側10%を除外します。
例えば、一部の野菜だけが急騰したり、一部の家電だけが急落したりしても、その極端な値に全体が引っ張られにくくなります。
「多くの商品でどのくらい値上げが進んでいるか」を見るのに使いやすい指標です。
加重中央値とは?
加重中央値は、価格上昇率の高い順に品目を並べ、その品目のウエイトを累積したとき、50%近辺に位置する価格変化率です。
単純な「真ん中の品目」ではなく、家計支出に占める重要度を反映した中央値です。
一部の大型品目が大きく上昇しても、他の多くの品目が動いていなければ、加重中央値はそれほど上がらない場合があります。
最頻値とは?
最頻値は、品目別の価格変化率の分布で、最も多くの品目が集まっている価格変化率です。
平均値とは考え方が違います。
例えば、少数の商品が10%以上値上がりして全体平均を押し上げていても、大半の商品が2%前後の値上がりなら、最頻値はその2%付近を示します。
物価上昇の「典型的な値動き」を見るための指標です。
上昇・下落品目比率とは?
これは、前年と比べて価格が上昇した品目と下落した品目の割合を見る指標です。
一部の商品だけが値上がりしているのか、それとも幅広い商品・サービスに値上げが広がっているのかを確認できます。
インフレ率そのものが高くなくても、上昇品目の割合が増えていれば、値上げの裾野が広がっている可能性があります。
2026年8月のCPIはどうだった?
総務省が2026年9月18日に公表した2026年8月の全国CPIは次の通りです。
| 指標 | 前年同月比 |
|---|---|
| 総合 | +1.9% |
| 生鮮食品を除く総合 | +1.7% |
| 生鮮食品及びエネルギーを除く総合 | +1.9% |
総合と生鮮食品・エネルギーを除く総合はともに1.9%、一般にコアCPIと呼ばれる生鮮食品を除く総合は1.7%でした。3系列の差は、食品やエネルギーの動きが総合指数にどう表れたかを考える手掛かりになります。基調を判断する際は、日銀の特殊要因除外系列や刈込平均、中央値、最頻値も併せて確認します。
コア指標は金融政策でどう使われる?
日本銀行は、コア指標だけで政策金利を機械的に決めているわけではありません。
物価の基調を見る際には、需給ギャップ、労働需給、賃金上昇率、予想物価上昇率なども合わせて分析しています。
例えば総合CPIが一時的に上昇していても、刈込平均や中央値が低ければ「一部品目の値上がりが全体を押し上げている」と考えられます。
逆に、上昇品目の割合が広がり、中央値や最頻値も上昇していれば、インフレが一部品目だけでなく経済全体へ広がっている可能性があります。
投資家はどこを見る?
物価データは、金融政策や長期金利を通じて株式にも波及します。銀行、REIT、不動産、グロース株では金利変化の影響が異なるため、総合CPIの数字だけで方向を決めず、次の点を確認したいところです。
- コアCPIが加速しているか
- 生鮮食品・エネルギーを除いても物価が上がっているか
- 刈込平均・中央値・最頻値が同じ方向へ動いているか
- 値上がりしている品目の割合が広がっているか
- 賃金上昇率と物価上昇率が連動しているか
物価上昇が一部の商品だけなのか、サービスや賃金を含む広いインフレへ移っているのかで、日銀の政策判断に対する市場の見方も変わります。
まとめ
「消費者物価のコア指標」は、CPIから一時的な値動きや制度要因を調整し、基調的なインフレの強さと広がりを探るための指標群です。一般にコアCPIと呼ばれるのは「生鮮食品を除く総合」ですが、日銀は刈込平均、加重中央値、最頻値、上昇・下落品目比率なども公表しています。
一部の品目だけが急騰しているのか、値上がりが幅広い品目へ広がっているのか。CPIを見るときは、見出しの数字に加えて「何を除いた指数か」「分布や品目数はどう動いたか」を確認すると、金融政策や金利とのつながりを読み違えにくくなります。