信用取引が株価下落を増幅する流れ

株価5.37%安の週、信用買い残は金額0.66%減・株数2.51%減

日経平均は10月6日の70,683.98円から23日の62,693.16円へ、約11.30%下落しました。信用残高と期間をそろえると、下げの途中で買い建玉がどれだけ減ったかを比べられます。

比較期間日経平均の変化信用買い残金額の変化信用買い残株数の変化
10月9〜16日−5.37%−0.66%約−2.51%
10月16〜23日−4.03%10月27日公表予定10月27日公表予定

日経平均は終値、信用残高は東京・名古屋二市場の週末申込現在。株数には投信等の口数を含み、変化率は公表値から計算しています。

買い残株数は約38.31億株から約37.34億株へ減りました。金額の減少率より大きく、金額だけで「整理が進んでいない」とは言えません。残高金額は時価ではなく約定代金ベースで、日経平均とは対象や加重方法も異なります。株数の増減も新規建てと返済などの差し引きであり、減少分がすべて返済売りの量を示すわけではありません。

東証の銘柄別残高は、9月28日から全銘柄を毎営業日公表する方式に変わりました。前営業日申込分を16時目安で追えるため、27日を待つのは二市場合計の週次集計です。個別銘柄の足元の増減は、すでに日次資料で追えます。

米国のマージン債務は6月の最高額から1.5%下

FINRA統計の証券マージン口座借方残高は、9月末に1兆4,800億5,400万ドル。8月から1.8%増えた一方、1997年以降の最高額となった6月末の1兆5,020億7,200万ドルをなお1.5%下回ります。

米国の信用取引借入残高

FINRAのマージン債務は、証券マージン口座の顧客借方残高を集計した月次統計です。本稿で用いるJPXの二市場信用買い残は、一般信用・制度信用の未決済買い建玉の週次集計で、対象も頻度も異なります。金額をそのまま並べて日米の危険度を比べることはできません。米国で信用縮小が急速に進めば、日本株を含む保有資産の換金につながる経路はありますが、FINRAの数字だけではその波及は測れません。

信用倍率約10倍の理由は、買い残より売り残の減少が大きい

JPXの10月16日申込現在の二市場合計では、信用買い残は6兆6,640億円で、前週から約441億円(0.66%)減少しました。信用売り残は6,671億円で、約950億円(12.5%)減っています。買い残を売り残で割った信用倍率は約9.99倍です。

信用倍率が約10倍に上がった主因は、買い残の増加ではなく売り残の急減です。買い残はむしろ小幅に減っており、倍率だけでは買い建玉の膨張を示しません。

信用買い残と合わせて見たいのが、信用評価損益率です。トレーダーズ・ウェブの二市場集計では、10月9日のマイナス6.58%から16日にはマイナス10.41%へ、3.83ポイント悪化しました。買い残が金額・株数とも減った週に、含み損の度合いは深まっています。株価がさらに下がれば、担保余力の乏しい口座で返済売りが出やすくなります。評価損益率はJPXの公表値ではなく民間集計で、追証の発生額を示すものではありません。

海外勢は売り越し、個人は信用で買い越し

JPXの投資部門別売買状況では、10月13〜16日の東証プライムで、海外投資家は株式を約3,522億円売り越し、個人投資家は信用取引で約1,840億円買い越しました。これはその週の売買動向を示す統計で、信用買い残の増減とは別です。両者が直接取引したか、個人の買い建玉が同額増えたかまでは分かりません。

株価下落で追証が増えると何が起きるのか

信用買いの評価損が膨らみ担保余力が不足すると、投資家は追加資金を入れるか建玉を縮小します。資金を補えない口座の返済売りが重なれば、流動性の薄い銘柄で下落が大きくなり、市場全体の下げを強めることがあります。

信用買い残の全額が売りに回るわけではありません。実際に出る売りの量は、投資家が追加資金を用意できるか、特定の銘柄に信用買いが集中しているかによって変わります。

10月27日の信用残高で確認したい3つの点

  • 買い残の金額・株数と前週比:16〜23日の指数4.03%安に対し、金額と株数がそれぞれどれだけ減ったか。前週は金額0.66%減、株数約2.51%減でした。
  • 信用倍率の分子・分母:倍率変化を買い残と売り残に分解します。売り残減だけで倍率が上がる場合、買いの積み上がりとは別です。
  • 株価との組み合わせ:買い残減少と指数の下げ止まりが揃えば需給調整の兆し。安値更新と買い残高止まりが重なれば、返済売りが出やすい状態が続きます。

同じ週にはFOMC(10月27〜28日)と日銀会合(29〜30日)もあります。金利見通しが株価をさらに揺らした場合、その週の信用買い残の変化が需給の耐久力を測る材料になります。

買い残が金額・株数とも高止まりし、指数も安値を更新するなら、信用ポジションの整理が遅れ、需給面の重さが残っているとみるべきです。

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