関連記事

第3号被保険者制度とは

国民年金には、大きく3つの加入区分があります。

区分主な対象
第1号被保険者自営業者、フリーランス、学生、無職の人など
第2号被保険者会社員、公務員など
第3号被保険者第2号被保険者に扶養される配偶者

第3号被保険者は、原則として20歳以上60歳未満で、第2号被保険者に扶養されている配偶者が対象です。

日本年金機構の説明では、第3号被保険者は、原則として年収130万円未満の配偶者です。ただし、年収130万円未満でも、勤務時間や勤務先の条件により厚生年金・健康保険の加入要件に該当する場合は、第3号被保険者ではなく第2号被保険者になります。

ここが少しつまずきやすいところです。

扶養されている配偶者
↓
必ず第3号、ではない
↓
勤務先で社会保険加入要件を満たせば第2号になる

つまり、第3号被保険者は「働いていない人だけ」の制度ではありません。短時間で働いていても、収入や勤務条件が一定の範囲に収まる場合は第3号になることがあります。

なぜ「主婦年金」と呼ばれるのか

第3号被保険者制度は、1986年4月の基礎年金制度導入に合わせて設けられました。

それ以前は、会社員世帯の専業主婦が自分名義の年金権を持ちにくい問題がありました。制度創設の狙いの一つは、会社員に扶養される配偶者にも自分名義の基礎年金を持たせることでした。

そのため、一般には「主婦年金」と呼ばれることがあります。

ただし、現在の制度を理解するときは、この呼び方だけで見ると少し危ないです。

  • 対象は女性に限られない
  • 配偶者が会社員・公務員などの第2号被保険者である必要がある
  • 自営業者やフリーランスの配偶者は第3号にならない
  • パート勤務でも社会保険加入要件を満たせば第2号になる

制度名として正確なのは「国民年金の第3号被保険者」です。

保険料を払わなくてよい、は半分正しくて半分危ない

第3号被保険者の大きな特徴は、自分で国民年金保険料を納付しなくても、保険料納付済期間として扱われることです。

2026年度の国民年金保険料は月17,920円です。12カ月では215,040円になります。

項目金額
2026年度の国民年金保険料月17,920円
1年分215,040円

第1号被保険者なら、原則としてこの保険料を自分で納めます。第3号被保険者は直接納めません。

ただし、「無料で年金がもらえる」と考えると誤解になります。

第3号被保険者の基礎年金は、厚生年金制度全体の中で負担されています。第2号被保険者が支払う厚生年金保険料、事業主負担、国庫負担によって支えられている、という整理です。

家計から見ると本人負担はゼロに見えます。制度全体で見ると、社会保険料と税財源を通じて支え合っている。ここを分けて理解した方がいいです。

第3号被保険者のメリット

第3号被保険者には、家計上のメリットがあります。

1. 国民年金保険料を直接負担しない

一番分かりやすいのは、毎月の保険料負担です。

2026年度なら、国民年金保険料は月17,920円。第3号被保険者はこの金額を直接納めません。年間では20万円を超える差になります。

扶養内で働く世帯が「社会保険料が発生するか」を気にするのは、この負担感が大きいからです。

2. 老齢基礎年金の期間に反映される

第3号被保険者期間は、老齢基礎年金の保険料納付済期間として扱われます。

2026年度の老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以後生まれの人で月70,608円です。実際の年金額は加入月数や免除期間などで変わりますが、第3号期間も基礎年金の計算に入ります。

3. 障害年金・遺族年金にも関係する

公的年金は老後だけの制度ではありません。

要件を満たせば、病気やけがで障害状態になったときの障害年金、家計を支える人が亡くなったときの遺族年金にも関係します。

もちろん、受給には初診日、保険料納付要件、家族構成、生計維持関係などの条件があります。第3号だから何でも自動的に受け取れるわけではありません。それでも、年金制度に加入している意味は老後だけではない、という点は押さえておきたいところです。

廃止論が続く理由

第3号被保険者制度は、たびたび見直しの議論に上がります。

理由は大きく3つあります。

1. 共働き世帯が主流になった

制度が作られた時代は、会社員の夫と専業主婦の妻という世帯モデルが今より一般的でした。

現在は共働き世帯が多くなり、女性の就業も広がっています。結婚後も働き続ける人、短時間勤務からフルタイムに移る人、夫婦とも厚生年金に加入する世帯も増えました。

その結果、制度の前提だった世帯モデルと、実際の働き方のズレが目立つようになっています。

2. 公平性への疑問がある

負担の違いも論点です。

世帯・働き方年金保険料の見え方
自営業者の配偶者第1号として国民年金保険料を負担しやすい
共働き会社員それぞれ厚生年金保険料を負担
第3号被保険者本人は国民年金保険料を直接負担しない

同じ老齢基礎年金につながるのに、働き方や配偶者の加入制度によって本人負担が違う。ここに不公平感が出やすいわけです。

特に、自営業者やフリーランスの配偶者は、第3号被保険者にはなれません。会社員世帯の扶養配偶者だけが直接の国民年金保険料負担を免れる形になるため、制度の公平性が問われます。

3. 年収の壁を意識した就業調整が起こる

第3号被保険者制度は、いわゆる年収の壁とも関係します。

代表的なのは、106万円の壁と130万円の壁です。

大まかな意味
106万円の壁短時間労働者が勤務先で厚生年金・健康保険に加入する目安として意識されてきた水準
130万円の壁配偶者の扶養から外れ、国民年金・国民健康保険などの負担が生じやすい水準

厚生労働省は、年収の壁について、社会保険料の負担発生による手取り減少を避けるために就業調整する人がいると説明しています。

人手不足が強まる中で、働ける人が「扶養を外れたくないから勤務時間を抑える」状態は、企業にとっても本人にとっても悩ましい問題です。

106万円の壁はどう変わるのか

2025年の年金制度改正では、短時間労働者の社会保険加入対象拡大が進められました。

厚生労働省の説明では、いわゆる106万円の壁として意識されてきた月額8.8万円以上の賃金要件は、法律公布から3年以内に撤廃する方向です。実施時期は、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断するとされています。

ただし、これで年収の壁がすべてなくなるわけではありません。

2026年6月時点で見ておきたいのは、次の整理です。

論点見方
106万円の壁賃金要件は法律公布から3年以内に撤廃する方向
企業規模要件10年かけて段階的に縮小・撤廃される予定
130万円の壁扶養認定や国民年金・国民健康保険との関係で引き続き重要
学生被用者保険の加入対象外として扱われる点に注意

つまり、これからは「いくら稼いだか」だけでなく、「週何時間働くか」「勤務先の規模要件がどう変わるか」「学生かどうか」「雇用見込みがどうか」を確認する必要があります。

制度改正で、短時間労働者が第2号被保険者として厚生年金に入るケースは増えやすくなります。これは第3号被保険者制度を一気に廃止する話ではありませんが、第3号にとどまる人を徐々に減らす方向の改革とは言えます。

廃止されたらどうなるのか

仮に将来、第3号被保険者制度が廃止または大幅に見直された場合、考えられる方向は主に3つです。

方向家計への影響
第1号として国民年金に加入国民年金保険料の本人負担が発生
勤務先で厚生年金・健康保険に加入社会保険料負担は発生するが、将来の厚生年金が増える
経過措置つきで段階移行年齢、収入、働き方により影響が分かれる可能性

国民年金保険料を自分で払う形なら、2026年度水準では年間215,040円の負担です。家計にはそれなりに重い金額です。

一方、厚生年金に加入する場合は、本人負担だけでなく事業主負担もあります。手取りは減りやすいものの、将来の老齢厚生年金が上乗せされ、健康保険では傷病手当金や出産手当金などの給付も関係します。

ここは、単純に「保険料が増えるから損」とは言い切れません。

短期: 手取りが減る可能性
長期: 年金額や保障が増える可能性

働く時間を増やせる人にとっては、社会保険加入後の手取り減を超える収入増を目指せるかがポイントになります。逆に、介護、育児、病気、勤務先事情などで働く時間を増やしにくい人には、負担増が重く出ることがあります。

家計ではどう考えればよいか

第3号被保険者制度を考えるとき、目先の手取りだけで判断すると見落としが出ます。

確認したいのは、次の5つです。

1. 今の加入区分を確認する

まず、自分が第1号、第2号、第3号のどれに該当しているかを確認します。

配偶者の扶養に入っているつもりでも、勤務条件によっては勤務先で社会保険に入る必要がある場合があります。逆に、配偶者が退職した、65歳になった、本人の収入が増えた、といった理由で第3号ではなくなることもあります。

2. ねんきんネットで見込み額を見る

第3号期間は老齢基礎年金には反映されますが、厚生年金の上乗せはありません。

扶養内で働く場合と、厚生年金に加入して働く場合で、将来の年金見込み額がどう変わるかを確認した方が現実的です。

3. 手取りだけでなく保障も見る

厚生年金・健康保険に加入すると、保険料負担が出ます。

ただし、将来の厚生年金が増えるだけでなく、健康保険の傷病手当金や出産手当金など、扶養の健康保険では本人に出ない給付も関係します。

目先の手取りと、保障の厚みを分けて見ます。

4. 働ける時間と家計の余力を考える

社会保険加入によって一時的に手取りが減るなら、働く時間を増やして収入を上げられるかが重要です。

ただし、誰でも簡単に労働時間を増やせるわけではありません。育児、介護、体調、通勤、勤務先のシフト、家事分担によって選択肢は変わります。

制度上の損得だけでなく、生活全体で続けられるかを見た方がいいです。

5. 老後資金は年金だけに寄せない

第3号期間が長い人は、老齢基礎年金が中心になりやすく、厚生年金の上乗せが少ない場合があります。

その場合、老後資金は次の組み合わせで考えます。

  • ねんきん定期便、ねんきんネット
  • 預貯金
  • 新NISA
  • iDeCo
  • 配偶者の年金、退職金
  • 60歳以降の働き方

投資は元本保証ではありません。だからこそ、まず公的年金の見込み額を確認し、不足しそうな部分を長期・分散で補う順番が自然です。

投資家が見るポイント

第3号被保険者制度の見直しは、家計だけでなく日本経済にも関係します。

制度改革が進むと、短時間労働者の働き方が変わる可能性があります。

影響見方
労働供給パート労働時間が増えれば、人手不足の緩和につながる
消費手取り、社会保険料、将来不安の変化が消費行動に影響する
企業負担社会保険加入者が増えれば、企業の事業主負担も増える
人材戦略小売、外食、介護、物流などでシフト設計が変わる
社会保険料収入被用者保険への加入拡大で保険料収入が増える

小売、外食、介護、人材サービスなどでは、年収の壁を気にした就業調整が減れば、労働時間の確保には追い風です。

ただし、企業側には社会保険料の事業主負担が発生します。人手不足の緩和だけを見てプラスと判断するのは早く、賃金、採用費、社会保険料、価格転嫁のバランスを見る必要があります。

よくある誤解

誤解1:第3号被保険者は保険料をまったく誰も負担していない

本人が国民年金保険料を直接納めない、という意味では正しいです。

ただし、制度全体では厚生年金制度や国庫負担を通じて支えられています。完全な無料制度ではありません。

誤解2:主婦だけが対象

対象は「第2号被保険者に扶養される配偶者」です。性別は条件ではありません。

誤解3:130万円未満なら必ず第3号

年収130万円未満でも、勤務先で厚生年金・健康保険の加入要件に該当する場合は第2号被保険者になります。

誤解4:社会保険に入ると必ず損

短期の手取りは減ることがあります。しかし、厚生年金の上乗せや健康保険の給付が増える面もあります。損得は収入、勤務期間、家族構成、将来の働き方で変わります。

誤解5:第3号制度の廃止はもう決まっている

2026年6月時点で、第3号被保険者制度そのものを直ちに廃止することが決まっているわけではありません。ただし、社会保険の加入対象拡大により、第3号から第2号へ移る人は増えやすくなります。

まとめ

第3号被保険者制度は、会社員や公務員などに扶養される配偶者が、自分で国民年金保険料を納めなくても国民年金に加入できる仕組みです。

家計にとっては、国民年金保険料の直接負担がない点が大きなメリットです。2026年度の国民年金保険料は月17,920円、年215,040円なので、扶養内にとどまるかどうかを気にする理由は分かります。

ただし、制度全体では厚生年金制度や国庫負担で支えられており、完全に無料というわけではありません。また、共働き世帯が増えた現在では、公平性や年収の壁、労働参加への影響が見直し論の中心になっています。

現時点で大事なのは、「扶養のままが得か」「社会保険に入ると損か」という二択にしないことです。

目先の手取り、将来の年金額、障害・遺族などの公的保障、働ける時間、家計の余力を並べて見る。制度改正が進むほど、この確認が大切になります。

出典

本記事は、2026年6月16日時点の日本年金機構および厚生労働省の公開情報を基に作成しています。年金制度、社会保険の加入要件、保険料、年金額は改正されることがあるため、実際の手続きや家計判断では勤務先、日本年金機構、年金事務所、社会保険労務士などに確認してください。

  • 日本年金機構「国民年金の『第1号被保険者』、『第3号被保険者』とは何ですか。」更新日:2024年8月19日
  • 日本年金機構「国民年金の第3号被保険者制度のご説明」
  • 厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年4月)について」
  • 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
  • 厚生労働省「年収の壁への対応」
  • 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
  • 厚生労働省「年金社会保険の加入対象の拡大について」
本記事は、公開情報に基づいた教育的・情報提供のみを目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容の正確性については万全を期しておりますが、その内容や将来の投資成果を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願い申し上げます。