IPOから見える3つの違い

同じ「自動運転IPO」でも、Momentaとティアフォーは上場時点での事業フェーズが異なります。

Momentaは、目論見書で2025年12月末時点の搭載台数68万台超、Urban NOA搭載65万台超を示しました。量産車向けの開発サービスと台数連動のライセンス収入が伸びており、香港市場では大型テックIPOとして見られます。

一方のティアフォーは、Autowareを核に、自治体・交通事業者・自動車OEM・研究機関をつなぐ日本型の社会実装モデルです。2026年9月期も大幅な営業赤字を見込むため、上場直後はテーマ性だけでなく、研究開発費、導入案件、継続収益への移行が見られます。

IPO比較データ

項目ティアフォー(日本・東証グロース)Momenta Global(中国・香港メインボード)
表記593A6880(日本の情報端末では06880.HK、MOMENTA-W表記もあり)
上場予定日2026年7月22日2026年7月8日
想定時価総額約644.8億円(想定発行価格1,015円ベース)約696億香港ドル(Offer Price 295.60香港ドルベース)
需給規模吸収金額 約250.0億円(OA含む)グローバルオファリング 19,938,300株、約58.9億香港ドル(OA除く)
主な産業接点SOMPO、ヤマハ発動機、いすゞ、KDDI、トヨタ系ファンド、ソニーグループなどMercedes-Benz、BYD系、GIC、Fidelity、BlackRockなどが基石投資家に参加
事業の見え方Autowareを軸に社会実装・導入支援・開発支援を広げる段階量産車向け運転支援ソフトウェアの搭載実績とライセンス収入を拡大する段階

香港株の5桁表記では 06880.HK のように先頭ゼロを付ける場合があります。MOMENTA-W-W は、香港市場で加重議決権構造の会社に付く表記として使われます。

1. 量産フェーズと社会実装フェーズ

Momentaは、目論見書で2025年12月期売上高2,412.5百万元を開示しています。売上は2024年比82.1%増で、量産車向けのSOP到達モデル数増加とライセンス収入の拡大が主因です。2025年12月末時点では、累計170車種のノミネーション、SOP到達68車種、搭載台数68万台超を示しています。

ただし、同社も黒字化済みの安定企業ではありません。2025年12月期の当期損失は3,457.9百万元です。大型評価の背景には、すでに量産車向けソフトウェアが広く搭載されている点がありますが、投資家は売上成長だけでなく、損失縮小とライセンス粗利の持続性を見ます。

ティアフォーは、2026年9月期予想で売上高8,484百万円、営業損失11,239百万円を見込んでいます。想定時価総額は約644.8億円で、日本のグロースIPOとしては大きい案件です。こちらは量産車への大規模搭載よりも、実証・導入支援、開発支援、政府委託やライセンスを含むソリューション収入が中心の段階です。

2. 産業連携の性格

ティアフォーの特徴は、単独の自動車メーカー向けサプライヤーというより、Autowareを核にしたエコシステム型の立ち位置です。株主・提携先には、SOMPO、ヤマハ発動機、いすゞ、KDDI、トヨタ系ファンド、ソニーグループなどが並びます。自動運転を車両だけでなく、保険、公共交通、物流、通信、研究開発まで含めて社会実装する構図です。

Momentaは、量産車に組み込まれるAI運転支援ソフトウェアの色が濃い会社です。目論見書では、Mercedes-Benz、BMW Group China、Audi、Toyota、Honda、Dongfeng Nissanなど24の主要OEMとの関係を説明しています。基石投資家にはMercedes-Benz AGとBYD子会社のGolden Link Worldwide Limitedも含まれ、量産車メーカーとの結びつきが市場の評価材料になります。

3. 収益モデルの違い

ティアフォーの2025年9月期売上構成は、Mobility Serviceが35.4%、Development Serviceが20.8%、Solution Serviceが43.9%です。Autoware関連の技術支援、車両導入、実証・導入支援、政府委託、ライセンスなどを組み合わせながら、商用化の厚みを作る段階と見られます。

Momentaは、量産車向けソリューションで、量産前の技術開発サービスと、量産後の台数連動ライセンス収入を得るモデルです。目論見書では、SOP到達車種の増加が2025年の売上成長を押し上げたと説明されています。市場が見るのは、搭載台数の伸びが一時的な開発収入ではなく、継続的なソフトウェア収益に変わるかです。

投資家が見る点

今回の同時期IPOは、日中の自動運転企業を単純に横並び比較するより、資本市場がどのタイプの自動運転ビジネスを評価するかを見る材料です。

Momentaは、量産車への搭載実績、OEMとの関係、Urban NOAの商用化スピードが強みです。一方で、損失は大きく、WVR構造や香港市場のテックIPO需給も確認点になります。

ティアフォーは、Autowareを軸にした社会実装と日本の産業連携が強みです。一方で、2026年9月期予想では営業損失が売上高を上回るため、研究開発費の重さ、上場資金の使い方、導入案件が継続収益へ移る速度が問われます。

同じ自動運転企業でも、Momentaは「量産車向けAIソフトウェア企業」、ティアフォーは「自動運転インフラを支えるプラットフォーム企業」という違いがあります。2026年7月の両社IPOは、どちらが優れているかを競うイベントではなく、資本市場が「量産AI」と「オープンエコシステム」のどちらに高い成長期待を寄せるのかを映す試金石となります。上場後は、Momentaでは搭載台数やライセンス収益、ティアフォーではAutowareの採用拡大や継続収益化の進展が重要な評価指標になりそうです。

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