まず結論
518兆円。数字だけ見ても目を引きます。年限別に集計すると、10年債が約227.5兆円、20年債が約126.6兆円でした。ただ、市場が次に気にするのは、日銀の買入れが細るなかで新しい国債を誰が引き受けるかです。
日銀は2027年1〜3月の月間買入予定額を2兆円程度とする減額計画を維持しています。ただ、この数字だけで民間に回る国債の量は決まりません。新規発行や借換え、満期償還も重なります。入札でどの利回りに買い手が集まるのか、銀行・生保・年金・海外勢のうち誰が動くのか。そこまで見て需給を考えます。
日銀保有国債を年限別に集計すると約518.2兆円
銘柄別残高を年限ごとに集計した結果は次の通りです。金額は額面ベースで、日銀公表値の億円を兆円に換算しています。
| 種類 | 日銀保有額 | 全体比 |
|---|---|---|
| 2年債 | 約11.85兆円 | 2.3% |
| 5年債 | 約81.45兆円 | 15.7% |
| 10年債 | 約227.53兆円 | 43.9% |
| 20年債 | 約126.58兆円 | 24.4% |
| 30年債 | 約52.91兆円 | 10.2% |
| 40年債 | 約11.61兆円 | 2.2% |
| 5年クライメート・トランジション国債 | 約0.76兆円 | 0.1% |
| 10年クライメート・トランジション国債 | 約0.81兆円 | 0.2% |
| 物価連動債 | 約4.70兆円 | 0.9% |
| 合計 | 約518.20兆円 | 100% |
※各比率は小数第1位に丸めています。
10年債は年限別で最も多く、20年債と合わせて全体の68.3%です。10年・20年だけで7割近い。表に並べると、この2年限の厚みが目に付きます。ただし、この構成比だけで日銀が両年限を特に重視してきたとは言えません。発行額や過去の買入れ規模も違うため、市場での存在感を比べるなら各年限の発行残高に対する保有割合も並べたいところです。
足元の価格形成では、残高と次の買い手を合わせて見る
日銀は長期国債の買入れ予定額を段階的に減らし、2027年1〜3月には月間2兆円程度とする計画です。これは日銀が買うフローの予定であって、市場全体の純供給額ではありません。国債の新規発行、借換え、満期償還、日銀の買入れが重なり、民間に回る量が決まります。
買い手を「民間」とひとまとめにするのも少し粗い。生保は負債の年限に合わせて資産を運用するALMの観点から超長期債を検討しますが、需要が常に強いわけではありません。海外勢の円債需要は、為替ヘッジコストや円資金の調達条件にも左右されます。日銀の2025年度市場調節報告では、生保が超長期債の積み増しに慎重な一方、海外勢や信託銀行の買いが需給を支えた局面も記録されています。誰の買いが動いたのかで、同じ「入札が強い」でも意味合いは変わります。
国債入札では、応札倍率だけでなくテールが広がっていないかも見たいところです。テールは平均落札価格と最低落札価格の差で、広がれば参加者の価格観が割れた可能性があります。日銀の買入れが細る局面では、どの利回りなら需要が入ったかを読む手掛かりです。
日銀の保有残高が減っても、民間需要が厚ければ金利上昇が抑えられることはあります。発行減額がすでに知られているのに入札が弱ければ、需給不安がなお残っている可能性があります。残高と金利を直結させず、誰がどの利回りで応札したかを見たいところです。
超長期債は需要だけでなく供給も変わる
20年・30年・40年債の保有額を合計すると約191.1兆円です。超長期債では、日銀が買わなくなる分を誰が買うのかに加えて、国がどれだけ発行するのかも需給を左右します。
財務省の2026年度当初発行計画は、生保需要の弱まりなどを踏まえ、20年・30年・40年債をそれぞれ月1,000億円減らす内容でした。需要が弱いなら、発行側も量を落とす。超長期ではこの供給調整も効きます。減額後に入札が落ち着くのか、なお高い利回りが必要なのか。生保などのALM需要が戻る水準も含め、超長期金利は日銀の会合だけでは読み切れません。
財務省の6月の投資家懇談会では、発行減額を受けて超長期債の需給は改善傾向との声が出る一方、10年債は財政運営などの不確実性から買いが止まっているとの指摘もありました。発行計画がすでに織り込まれているなら、その後の入札の強弱が次の手掛かりになります。
株式では、どの年限の金利が動いたかを見る
10年・20年金利の上昇でまず見たいのは、銀行・保険の運用収益と保有債券の評価です。新たに運用する資金には追い風でも、上昇が急なら既存債券の評価損やヘッジコストが重くなります。水準だけでなく、上がる速さとイールドカーブの形も見どころです。
不動産会社やREITでは、長期金利が借入コストや物件の要求利回りに響きます。結局は借入年限や固定・変動の比率まで見ないと、銘柄ごとの差は拾えません。
ここから先に追いたい数字
- 日銀の買入れ予定額と保有残高: 買入れフローの減額が、償還を含む残高にどう表れるか
- 財務省の発行額と入札結果: 年限別の発行予定、応募倍率、テールを合わせて、どの利回りで消化されたか
- 年限別の国債利回り: 10年、20年、30年などの動きを比べ、需給がどのゾーンに表れたか
この残高表から読み取れる範囲
今回の表は、2026年9月18日時点の日銀保有残高を示すスナップショットです。前回からの増減、各年限の発行残高に占める日銀保有比率、民間投資家の保有変化は載っていません。この表だけで金利上昇の原因を決めるのは無理があります。買入れ、償還、発行、入札、投資家別の資金循環を突き合わせて初めて、需給のどこが変わったのかが見えてきます。
まとめ
日銀の利付国債保有額は約518.2兆円で、10年・20年債が約354.1兆円、全体の68.3%を占めます。この構成は市場の出発点ですが、金利の方向を決める答えではありません。
日銀の保有残高と年限別の偏りは需給の背景を示す数字です。金利を追うときは、買入れ・償還・発行のフローと入札を合わせて見ます。市場が問うのは、その供給を誰がどの利回りで引き受けるかです。
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出典
- 日本銀行「日本銀行が保有する国債の銘柄別残高」
- 日本銀行「日本銀行が保有する国債の銘柄別残高(2026年9月18日現在)」XLSX
- 日本銀行「長期国債の買入れ計画(2026年6月金融政策決定会合)」
- 日本銀行「2025年度の金融市場調節」
- 財務省「令和8年度国債発行計画」
- 財務省「国債投資家懇談会(第100回)議事要旨」
- 財務省「入札カレンダー」
- 財務省「市場参加者による入札結果の解釈」
※日銀公表値は利付国債の受渡し完了ベースで、額面金額(億円)を億円未満四捨五入したものです。国債買入オペのほか、対政府取引による増減も勘案されています。