住宅ローン・家計財務攻略シリーズ

このシリーズでは、住宅ローンを「借りられる金額」ではなく、家計のキャッシュフローとリスク管理の視点から整理していきます。

なぜフラット35が3.21%まで上がったのか

フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する全期間固定金利型の住宅ローンである。

特徴は、借入時に決まった金利と返済額が、返済終了まで原則として変わらないことだ。変動金利のように、将来の金利上昇によって毎月返済額が増えるリスクを避けやすい。

一方で、全期間固定金利は長期金利の影響を受けやすい。日本の長期金利が上昇すれば、フラット35のような固定金利型ローンの適用金利にも上昇圧力がかかる。

2026年6月の3.21%は、住宅購入者にとって心理的にも大きい水準だ。固定金利の安心感はある。しかし、毎月返済額はかなり重くなる。

ここで必要なのは、「固定か変動か」を感情で決めることではない。

自分の家計が、どの金利リスクまで耐えられるかを見ることだ。

フラット35と変動金利の違い

固定金利と変動金利は、単に金利水準が違うだけではない。誰が金利変動リスクを負うのかが違う。

比較項目フラット35(全期間固定)変動金利
金利水準2026年6月は3.21%が報じられた0.3%台から0.5%台の商品も多い
返済額借入時に原則確定将来の金利上昇で増える可能性
家計管理長期の支出計画を立てやすい当初返済額を抑えやすい
主なリスク当初負担が重い、低金利が続くと割高金利上昇時に返済額や利息負担が増える
向く家計返済額を固定したい、上昇リスクを避けたい貯蓄余力があり、上昇時に繰上返済や家計調整ができる

固定金利でも、家計のリスクが消えるわけではない。

教育費、修繕費、固定資産税、管理費、収入減、転職、病気、物価上昇は残る。固定金利で消せるのは、あくまで「住宅ローン金利の上昇で毎月返済額が増えるリスク」である。

5,000万円借入なら総返済額はどれくらい違うか

5,000万円を35年で借りるケースで、3.21%固定と0.50%変動を比較する。

ここでは、変動金利が35年間ずっと0.50%のまま変わらないという強い仮定を置く。現実の変動金利は将来上がる可能性があるため、これは「変動金利が非常にうまくいった場合」の参考値として見るべきだ。

借入金額: 5,000万円
返済期間: 35年
返済方法: 元利均等返済
ボーナス払い: なし
手数料・保証料・団信差額・税金: 含めない
金利タイプ毎月返済額35年間の総返済額利息総額
フラット35相当(3.21%固定)約198,333円約8,330万円約3,330万円
変動金利(0.50%が35年続く仮定)約129,793円約5,451万円約451万円
差額約68,540円約2,879万円約2,879万円

数字だけ見ると、変動金利のほうがかなり軽く見える。

毎月の差は約6.85万円。35年では約2,879万円の差になる。

ただし、この差額は「変動金利が35年間、0.50%のまま上がらない」という仮定のもとで出た数字だ。変動金利が途中で上がれば、差は縮む。上昇幅やタイミングによっては、総返済額の優劣が大きく変わる。

つまり、この約2,879万円は「変動金利のほうが常に得」という証拠ではない。

固定金利を選ぶ場合に、将来の金利上昇リスクを避けるため、どれだけ高い保険料を払うことになるのか。その大きさを測る物差しである。

固定金利の見落としやすい弱点

金利上昇局面では、固定金利の安心感が注目されやすい。

ただ、5,000万円規模の借入で固定金利を選ぶと、家計にはかなり重い固定費が乗る。安心感の裏側にあるコストも見ておきたい。

毎月返済額が高く、貯蓄ペースが落ちる

今回の試算では、3.21%固定と0.50%変動の毎月差額は約6.85万円である。

この差額は、家計にとってかなり大きい。教育費、車、修繕費、引っ越し、病気、転職などに備える現金が積み上がりにくくなる。

住宅ローンの返済額は固定できても、家計全体の余裕がなくなるなら危険だ。

繰上返済の原資を作りにくい

固定金利で毎月返済額が重くなると、将来の繰上返済資金を貯めにくくなる。

金利上昇リスクを避けるために固定を選んだ結果、手元資金が薄くなり、別のリスクに弱くなることがある。

住宅ローンでは、金利だけでなく流動性も大事だ。通帳に残る現金が少なすぎる家計は、予想外の支出に弱い。

運用機会を失う可能性がある

もし変動金利との差額である月約6.85万円を、新NISAなどで長期積立に回せたなら、将来の金融資産は大きく変わる可能性がある。

もちろん、運用には元本割れリスクがある。年4%や5%で増えるとは限らない。

それでも、固定金利を選ぶということは、低い当初返済額を使って貯蓄や運用に回す選択肢を狭める面がある。ここは見落としやすい。

3.21%でも固定金利を選ぶべき人

固定金利は高い。だが、高いから不要とは限らない。

次のような家計では、3.21%でも固定金利の価値がある。

家計の状態固定金利を検討する理由
返済余力が大きくない金利上昇で毎月返済が増えると生活が崩れやすい
教育費がこれから増える住居費を固定して、将来支出を見通しやすくできる
収入の上振れが読みづらい昇給や共働き継続を前提にしすぎない設計にできる
金利ニュースで強い不安を感じる心理的負担を減らせる
長期保有前提の住宅購入35年の支出計画を組みやすい

固定金利は、金利上昇に対する保険に近い。

保険料は高い。ただ、家計が一度でも破綻すると取り返しがつきにくい人にとっては、その保険料を払う意味がある。

変動金利を選択肢に入れてもよい人

一方で、変動金利を選ぶ余地がある家計もある。

ポイントは、金利上昇が起きたときに「耐える方法」を持っているかどうかだ。

家計の状態変動金利を選びやすい理由
現預金や投資資産が十分にある金利上昇時に繰上返済や元本圧縮ができる
毎月の貯蓄余力が大きい返済額が増えても家計を調整しやすい
返済期間を短くする予定金利上昇の影響を受ける期間を短くできる
10年から15年で売却・住み替え予定35年分の金利リスクを背負わない可能性がある
世帯年収の成長余地がある返済額増加を収入増で吸収しやすい

ただし、変動金利は「安いから選ぶ」だけでは危ない。

金利が上がったら、いくらまでなら耐えられるのか。返済額が月3万円、5万円、8万円増えた場合でも、教育費や生活費を守れるのか。そこまで見てから選ぶ必要がある。

最後は返済比率で決める

2026年6月にフラット35の最低金利が3%を超えたことは、日本の住宅ローン環境が明確に変わり始めたサインである。

ただし、固定金利か変動金利かをニュースの勢いだけで決めるべきではない。

見るべきは、返済比率である。

返済比率 = 年間返済額 ÷ 年収

たとえば、3.21%固定で5,000万円を借りると、毎月返済は約19.83万円、年間では約238万円になる。

年収700万円なら返済比率は約34%。年収900万円なら約26%。年収1,200万円なら約20%だ。

同じ5,000万円でも、家計に与える重さは年収、家族構成、教育費、車の有無、貯蓄額でまったく変わる。

住宅ローン選びで大事なのは、最安金利を探すことではない。

自分の家計が、どのくらいの固定費と金利リスクを背負えるかを決めることだ。

金利が3%を超えた今こそ、住宅ローンは「借入額」ではなく「家計が耐えられる返済額」から逆算したい。

出典

本記事は、公開情報に基づいた教育的・情報提供のみを目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容の正確性については万全を期しておりますが、その内容や将来の投資成果を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願い申し上げます。