2027年の日本半導体関連株 本命候補3社 東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコを前工程、テスト、精密加工の三工程で比較する図 SEMICONDUCTOR OUTLOOK 2027 日本半導体関連株 本命候補3社 AI需要を「工程 × 利益 × 織り込み」で選別 前工程 8035 東京エレクトロン WFE・ロジック・メモリー テスト 6857 アドバンテスト AI・HBM・高性能テスト 精密加工 6146 ディスコ 薄化・切断・先端パッケージ 次点:6525・6920・285A・7735・4063・3436・6723 確認軸:受注・利益率・メモリー価格・設備投資・株価の期待 kabutrack.com

まず結論

2027年の日本半導体株で見たいのは、AIという看板ではなく、どの設備投資がどの会社の利益へ落ちるかです。市場規模の拡大は追い風ですが、半導体株は期待を先に買うため、業績が良くても株価が上がらない場面があります。ここからが難しい。

本稿では、次の4条件で候補を絞りました。

  • AIサーバー、HBM、先端ロジック、先端パッケージとの接続が明確
  • 直近決算で売上だけでなく営業利益も伸びている
  • 特定製品だけに依存せず、複数世代の設備投資を取り込める
  • 2027年に確認できる受注、利益率、稼働率などのKPIがある

この条件では、東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコが中核候補です。KOKUSAI ELECTRICは増益率が高く次点の先頭。レーザーテックとSCREENは競争力こそ高いものの、直近の減益から回復を数字で示す段階です。キオクシアはメモリー上昇の恩恵が大きい反面、市況反転時の下振れも大きい。SUMCOはさらに明確で、2027年の回復候補ではあっても、現時点の中核には置きにくいと判断しました。

2027年の需要前提:メモリーと装置投資はまだ伸びる

WSTSの2026年春季予測では、世界半導体市場は2027年に前年比27%増の約1.9兆ドルへ拡大し、メモリーは32%増、ロジックは27%増と見込まれています。予測値は11月にも更新されるため固定的には扱えませんが、AI需要が演算チップだけでなく、HBM、汎用DRAM、NANDへ広がる構図です。

装置側も強い。SEAJが2026年7月2日に公表した予測では、日本製半導体製造装置の売上は2026年度に26%増の6.55兆円、2027年度に13%増の7.40兆円、2028年度に5%増の7.77兆円です。日本市場向けも2027年度に15%増の1.82兆円を見込み、先端DRAMとAI需要に伴うNAND投資を伸びの背景に挙げています。

WSTSは暦年、SEAJは年度です。後者の2027年度は2027年4月から2028年3月までを指します。この違いを無視すると、需要の山と企業決算の時期を読み違えます。

中核候補1:東京エレクトロン(8035

東京エレクトロン(8035)は、成膜、塗布・現像、エッチング、洗浄など前工程の複数分野を持ちます。AI向け先端ロジックだけでなく、DRAM、NAND、成熟ノードの設備投資も業績へ入るため、単一工程の当たり外れをある程度ならせる点が強みです。

2027年3月期第1四半期は、売上高7323億8800万円で前年同期比33.3%増、営業利益2114億700万円で46.1%増。営業利益率は28.9%でした。会社は上期営業利益予想を4580億円へ引き上げています。

数字は強い。問題は期待です。9月2日の大幅安が示すように、会社固有の下方修正がなくても、米金利や海外半導体株の下落で評価倍率は縮みます。2027年へ向けては台湾・韓国の投資継続、中国売上、在庫、10月30日予定の第2四半期決算で示される通期計画が焦点です。

中核候補2:アドバンテスト(6857

アドバンテスト(6857)は、AIアクセラレーターやHBMを含む高性能半導体のテスト需要を取り込みます。チップの高性能化と複雑化が進むほど、テスト時間、ピン数、品質保証の負荷が増えるため、AI投資が売上へ届きやすい事業構造です。

2027年3月期第1四半期は、売上高3674億7300万円で39.3%増、営業利益1899億9000万円で53.3%増。営業利益率は51.7%でした。10社のなかで利益成長の勢いは最上位級です。

弱点もはっきりしています。高い利益率を市場が当然視すると、少しの受注鈍化でも株価反応は大きくなります。AI顧客への集中、テスタ需要の前倒し、為替、通期営業利益8460億円の進捗を追う銘柄です。良い決算だけでは足りず、上振れの継続まで求められやすいところがあります。

中核候補3:ディスコ(6146

ディスコ(6146)は、ウエハの切断、研削、研磨を担います。先端パッケージではチップの薄化や高精度加工の難度が上がり、HBMの積層や高性能チップの実装が増えるほど加工装置・消耗品の需要へつながります。

2027年3月期第1四半期は、売上高1143億800万円で27.1%増、営業利益490億3300万円で42.2%増。営業利益率は42.9%でした。装置売上だけでなく、ブレードなど消耗品需要を持つ点も利益の見通しを支えます。

ただし、顧客の設備投資が前倒しされた後は反動が出ます。生成AI向けの高付加価値需要が汎用品の弱さを吸収できるか、出荷額と検収ベース売上の差、粗利率、消耗品売上を分けて見ます。

次点7社:強みはあるが、条件付き

銘柄2027年の接続点直近の業績温度中核に置かなかった理由
KOKUSAI ELECTRIC(6525)DRAM・NAND向け成膜、熱処理1Q売上高45.6%増、営業利益68.9%増顧客・地域集中、輸出規制、期待先行
レーザーテック(6920)EUVマスク検査、先端ロジック2026年6月期は売上高8.3%減、営業利益14.3%減案件の期ずれ、受注変動、競争と高い期待
キオクシアHD(285A)NAND、AI向けeSSD1Qは大幅増収増益NAND価格、供給増、信用需給の振れ
SCREEN HD(7735)洗浄装置、前工程1Q売上高10.3%減、営業利益41.1%減通期計画に対する低い初期進捗、回復確認待ち
信越化学工業(4063)シリコンウエハ、フォトレジスト材料1Q売上高5.4%増、営業利益4.2%増総合化学企業で半導体寄与が分散
SUMCO(3436)シリコンウエハの市況回復上期は増収でも営業赤字在庫調整、稼働率、赤字からの回復待ち
ルネサス(6723)車載・産業向けエッジAI上期は増収、営業黒字が拡大AIデータセンターより車載・産業サイクルの影響が大きい

次点は「弱い銘柄」という意味ではありません。KOKUSAIは直近の増益率だけなら中核3社を上回りますし、レーザーテックはEUV工程で高い利益率を持ちます。それでも順位を一段下げたのは、顧客集中、受注の期ずれ、メモリー市況など、一つの変数で利益が大きく動くためです。

直近決算で見える温度差

区分銘柄売上高の前年同期比営業利益の前年同期比営業利益率
中核東京エレクトロン+33.3%+46.1%28.9%
中核アドバンテスト+39.3%+53.3%51.7%
中核ディスコ+27.1%+42.2%42.9%
次点KOKUSAI ELECTRIC+45.6%+68.9%20.9%
回復確認SCREEN HD-10.3%-41.1%11.8%
回復確認レーザーテック-8.3%-14.3%45.7%
材料信越化学工業+5.4%+4.2%26.2%
回復候補SUMCO+4.7%営業赤字転落-3.0%

東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコ、KOKUSAIは、売上の伸び以上に営業利益が伸びています。対してSCREENは減収率より減益率が大きく、SUMCOは増収でも営業赤字です。2027年の市場拡大だけを根拠に横並びで評価すると、この差が消えます。

なお、キオクシアとルネサスは前年の比較基準や市況変化の影響が大きいため、上表から外しました。両社は増益率より、販売単価、出荷量、在庫、調整後利益、営業キャッシュ・フローを優先します。

工程別に見る2027年の有利・不利

前工程装置

先端ロジック、GAA、裏面電源、DRAM微細化、NAND高層化が並行すれば、東京エレクトロン、KOKUSAI、SCREENへの装置需要が広がります。もっとも、中国規制や顧客の建屋完成時期で納入がずれるため、受注と売上は同じ四半期に動きません。

テスト・先端パッケージ

AIアクセラレーターとHBMは高単価で、テストと精密加工の負荷も重い。アドバンテストとディスコはこの難度上昇を利益へ変えやすい企業です。半面、AI投資が一部の大口顧客へ集中している間は、需要の前倒しや顧客集中を割り引く必要があります。

メモリー

WSTSとSEAJの予測では、2027年もメモリーが成長の中心です。キオクシアには追い風ですが、メモリー株は価格上昇が供給増を招きます。NANDの平均販売単価、ビット出荷、在庫、設備投資規律のどれかが崩れると、利益の変化は装置株より速くなります。

ウエハ・材料

信越化学とSUMCOは、装置投資より後にウエハ需要の恩恵が表れる場合があります。先端品の長期契約が支えになる一方、汎用品の在庫調整と稼働率低下が利益を圧迫します。2027年の回復を買うなら、出荷数量だけでなく価格と工場稼働率が必要です。

市場はかなり先まで織り込んでいる

業界予測は強い。しかし、株価がそれを初めて知るわけではありません。AI関連の主力株には海外投資家と指数連動資金が入り、好決算と2027年成長を先回りしてきました。金利上昇や米国半導体株安の日には、業績修正がなくても東京エレクトロンのような大型株が大きく売られます。

逆に、キオクシアが地合いに逆行する日もあります。これは半導体セクターが一枚岩ではなく、前工程装置、テスト、NAND、ウエハの価格形成が分かれている証拠です。2027年の本命候補を選んでも、短期の株価方向まで同じにはなりません。

本稿は現時点の株価、PER、PBRを使っていないため、事業と業績の比較です。割安性を含む順位ではありません。株価が上がった後ほど、良い会社かどうかより、その良さがどこまで織り込まれたかが効いてきます。

強気シナリオ

強気側では、AIサーバー投資がGPUからHBM、汎用DRAM、eSSD、ネットワークへ広がります。新工場の建屋完成で装置搬入が進み、前工程だけでなく、テスト、薄化・切断、洗浄、成膜まで受注が増える。日本製装置の2027年度13%成長が、各社の売上と利益率に表れます。

この場合は中核3社に加え、KOKUSAI、SCREEN、レーザーテックへ業績改善が広がる展開です。SUMCOまで回復すれば、AIの局所投資ではなく、半導体サイクル全体が上向いた確認になります。

弱気シナリオ

弱気側では、AIデータセンターの投資回収が疑われ、顧客が設備投資を後ろ倒しします。メモリー価格の上昇を受けて供給能力が増え、2027年後半に価格が反転する可能性もあります。米中輸出規制の強化、円高、米長期金利上昇も日本の装置株には逆風です。

いちばん厄介なのは、業績が崩れる前に株価だけが下がるケースです。半導体株は期待を先に売買するため、受注の伸び率鈍化や会社計画の据え置きだけでも利益確定が出ます。絶対額が伸びていても、伸び率のピークアウトで評価は下がります。

2027年へ向けて見るKPI

時期確認する数字見方が強まる条件警戒する変化
2026年秋各社の通期予想、受注、上期進捗上方修正と利益率改善が同時に出る売上増でも利益率が低下
2026年末WSTS秋季予測、顧客設備投資計画2027年メモリー・ロジック予測を維持予測下方修正、設備投資延期
2027年前半装置受注、検収、テスタ需要先端ロジックとメモリーが同時に増えるAI以外の需要低迷が拡大
2027年後半NAND・DRAM価格、在庫、稼働率数量増と価格維持が両立供給増で価格と利益率が反落

まとめ

2027年の日本半導体関連株は、業界全体では追い風が続く公算が大きい。その中でも、前工程の東京エレクトロン、テストのアドバンテスト、精密加工のディスコは、AI需要との接続と直近利益を両立しているため、中核候補に置きました。

次点のKOKUSAI、レーザーテック、キオクシア、SCREENにも強い材料があります。ただし、顧客集中、案件の期ずれ、メモリー市況、直近減益という条件が付きます。信越化学は安定型、SUMCOは回復待ち、ルネサスはエッジAIと車載・産業サイクルを分けて読む位置です。

2027年を読む順番は、業界予測、受注、売上、利益率、キャッシュ・フロー。最後に株価の織り込みです。「半導体なら上がる」ではなく、どの工程で利益が増え、その増加を市場がまだ十分に評価していないか。そこまで届いて初めて、本命という言葉に意味が出ます。

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出典

※本稿の業界予測は2026年9月2日時点で確認できたWSTS・SEAJの公表値です。予測は需給、設備投資、為替、規制で改定されます。本命候補は事業と直近業績による分類で、特定銘柄の売買や将来の株価上昇を示すものではありません。