今日の見方
7月の経常収支は黒字幅を拡大しましたが、貿易収支は赤字、サービス収支も赤字です。海外子会社や保有資産からの配当・利子などを含む第一次所得収支が大きな黒字となり、財貨・サービスの赤字を埋めています。
この構造は、日本企業の海外収益や海外資産からの所得が対外収支を支える姿を示します。一方で、経常黒字だから日本株が上がる、円高になると単純に読む統計ではありません。為替、海外金利、企業の海外利益還流を合わせて確認します。
7月の円相場は、東京市場のインターバンク直物中心値の月中平均で1ドル162.55円でした。前年同月の146.71円に比べて10.8%の円安です。円安は海外利益の円換算額を押し上げる面がありますが、輸入価格や海外投資の評価にも影響するため、経常黒字との関係を一方向に決めつけません。
| 収支項目 | 7月 | 前年同月比の変化 |
|---|---|---|
| 経常収支 | 2兆9,889億円の黒字 | 黒字幅4,026億円拡大 |
| 貿易収支 | 3,999億円の赤字 | 赤字幅2,122億円拡大 |
| 第一次所得収支 | 4兆2,896億円の黒字 | 黒字幅2,357億円拡大 |
注目ニュース
1. 経常収支は2兆9,889億円の黒字
財務省の9月8日公表資料によると、7月の経常収支は2兆9,889億円の黒字でした。前年同月の2兆5,863億円から4,026億円増え、黒字幅は拡大しています。前月は923億円の赤字でした。
投資家が見る点: 月次の振れが大きい指標のため、単月の黒字だけで対外収支の基調を判断しません。貿易・サービス、第一次所得、季節調整値の動きを分けて、円相場や海外資産の収益環境と照合します。
2. 第一次所得収支は4兆2,896億円の黒字
第一次所得収支は4兆2,896億円の黒字で、前年同月比2,357億円の黒字幅拡大でした。財務省は、直接投資収益が黒字幅を拡大したことなどを要因として挙げています。経常黒字の中で最大の項目です。
株価材料として見る点: 海外事業や海外資産からの所得が大きい企業には、為替や現地金利が利益還流へ影響します。ただし、国際収支は日本全体の集計で、個別企業の増益を示すものではありません。企業決算の海外利益と配当政策を確認します。
3. 輸出24.1%増、輸入25.9%増で貿易赤字
輸出は11兆2,561億円で前年同月比24.1%増、輸入は11兆6,560億円で25.9%増でした。輸入の増加額が輸出を上回り、貿易収支は3,999億円の赤字となりました。輸出は11か月連続、輸入は6か月連続で前年同月比増加です。
投資家が見る点: 輸出入の増加は外需や国内生産の強さにも、価格上昇による名目増にもなり得ます。7月の通関統計では自動車や半導体関連の増加が示されていますが、企業業績へは数量・価格・為替を分けて反映させます。
4. サービス収支は5,129億円の赤字、金融収支は1兆7,626億円の純資産増
サービス収支は5,129億円の赤字で、前年同月から赤字幅は2,581億円縮小しました。金融収支は1兆7,626億円の純資産増で、証券投資は6,753億円の純資産減、直接投資は2兆6,213億円の純資産増でした。
投資家が見る点: サービス収支と金融収支は性質が異なります。訪日消費や知的財産などのサービス取引と、証券・直接投資の資金移動を混ぜず、円相場や海外投資家の需給を読む際にはそれぞれの方向を確認します。
7月の国際収支速報は、輸出入の名目額だけでは見えにくい海外所得の厚みを示しました。ただし、海外利益の増加が国内企業の配当、設備投資、賃金へどの程度回るかは企業ごとに異なります。マクロの黒字を個別銘柄の業績へ直結させず、決算の海外売上とキャッシュフローを確認します。
確認しておきたい日程
| 日付 | 確認事項 |
|---|---|
| 2026年9月16日 8:50 | 8月分貿易統計速報(予定) |
| 2026年10月8日 8:50 | 8月分国際収支速報(予定) |
| 2026年10月8日 | 9月分対外・対内証券投資の月次統計(予定) |
関連ページ
出典
- 財務省「令和8年7月中 国際収支状況(速報)の概要」(2026年9月8日公表)
- 財務省「国際収支状況」(速報値と公表予定)
本記事は財務省・日本銀行の公式資料をもとに独自に構成しています。国際収支速報は確報までの暫定値で、時系列データは改訂される場合があります。市場の見方は統計からの推論であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株式投資には価格変動による元本割れの可能性があります。